経団連タイムス No.3072 (2012年2月2日)

連合との懇談会を開催

−今次春季労使交渉の諸問題で意見交換


経団連(米倉弘昌会長)は1月25日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、古賀伸明会長)との懇談会を開催した。経団連からは米倉会長はじめ、副会長、評議員会副議長、関係委員長ら15名、連合からは古賀会長、会長代行、副会長ら18名が参加、「今年の春季労使交渉をめぐる諸問題」をテーマに意見交換した。

発言する米倉会長(右)と古賀連合会長

■ 両会長あいさつ

開会のあいさつで米倉会長は、長引くデフレや行き過ぎた円高、欧米諸国の景気低迷など、わが国企業を取り巻く事業環境が極めて厳しい状況にあると指摘したうえで、今年の春季労使交渉では、企業が置かれている状況や諸課題などについて、労使で共有しながら、自社の存続と発展、国内雇用の維持・創出のために、労使での徹底した議論が求められていると語った。

連合の古賀会長は、厳しい日本経済の現状に言及するとともに、「人への投資」は困難を乗り越え未来をつくる投資であり、何よりも優先すべきであると強調。そのうえで、適正な配分によって、いわゆる分厚い中間層を復活させ個人消費や内需拡大につなげていくことが、持続可能な成長とデフレからの脱却につながるとの考えを示した。

■ 春季労使交渉に向けての基本的考え方

両会長あいさつの後、双方が今年の春季労使交渉にあたっての基本的な考え方を説明。連合は、配分の是正によって低下した賃金水準の復元や底上げ、格差是正が必要としたうえで、具体的には「賃金カーブ維持分」に加え、すべての労働者のために1%を目安とした配分を要求していると述べた。また、定期昇給については、その果たしている役割と意義を共有すべきであり、国際競争を勝ち抜いていくための人事・処遇制度の基盤として認識すべきであるとした。

経団連は、賃金決定にあたっては、自社の支払能力に即して判断することが重要であり、一時的な業績変動は賞与・一時金に反映させることが基本との従来からの考えを主張。そのうえで、今年は雇用を優先した交渉の結果、賃金改善の実施には至らない企業が大多数を占めることに加え、東日本大震災で甚大な被害を受けた企業や、円高などにより付加価値の下落が著しく定期昇給の負担がとりわけ重い企業等では、定期昇給の延期・凍結も含めた厳しい交渉となる可能性があるとの見通しを示した。

■ 意見交換

続いて行われた意見交換では、連合から、(1)定期昇給は労使の長きにわたる信頼関係の上に成り立っており、社員のモチベーション等の向上のためにも確実な実施が必要である(2)パートや契約社員、派遣労働者を含め、均等・均衡処遇によって雇用の質を高めていくことが労使に求められている(3)格差は拡大する一方であり、その是正は日本の経済社会にとって抜き差しならない問題である――などの発言があった。

一方、経団連から、(1)すべての企業で定期昇給を凍結・延期すべきと主張しているものではなく、個別労使が自社の実態に沿って十分に議論を深め、解決していくことが重要である(2)人材が大事との意見に異論はないが、人材がグローバル競争に適しており、自立していることが重要である(3)「人への投資」は賃金への配分に限定されるものではなく、教育研修や労働環境の改善、福祉水準の維持・改善など各企業で取り組んでいる(4)高度経済成長時につくった制度や慣行が、経済の国際化や情報化、高齢化などの変化のなかで制度疲労を起こしていることから、制度を変えていくための継続的な協議が必要である――などの意見が出された。

■ 閉会あいさつ

閉会あいさつで古賀会長は、厳しい事業環境については共通認識にあるものの、配分については、労使それぞれの見方があるとしたうえで、「対立すべきことは対立し、さまざまな議論のなかでお互いの接点を見いだしていくのが交渉である」と労使で協議することの重要性を強調。続いてあいさつした米倉会長は、企業が存続して、発展し続けてこそ、将来の展望が開け、処遇も改善されることを前提として、労使で徹底的に話し合いを行い、自社にとって最良の選択肢を見いだしていくことが労使交渉であると総括した。

【労働政策本部】
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