経団連タイムス No.3073 (2012年2月9日)

WTO閣僚会議などに関して貿易投資委員会企画部会開催

−ドーハ・ラウンドの現状、ロシア加盟、政府調達協定改正などについて聞く


経団連は1月25日、東京・大手町の経団連会館で貿易投資委員会企画部会(笹川隆部会長)を開催した。外務省の齋田伸一・経済局国際貿易課長、経済産業省の黒田淳一郎・通商政策局通商機構部参事官から、昨年12月15〜17日に開催された第8回WTO定期閣僚会議等について説明を聞いた。
概要は次のとおり。

■ 外務省・齋田国際貿易課長説明

ドーハ・ラウンド

「近い将来、交渉が一括妥結する見込みは少ない」との見方で一致したが、ラウンド自体を断念するわけではない。途上国の開発を掲げて進められてきたラウンドに対する途上国の期待は依然として大きい。また、ラウンドを放棄すれば、WTO体制自体が機能停止するとの危機感も背景となって、部分合意、先行合意など新たなアプローチを追求することで合意した。サービス分野の複数国間協定、ITA(情報技術協定)の改訂・対象国の拡大等の可能性が議論されている。

ロシア加盟

18年に及ぶ困難な交渉を経て加盟が正式に決定された。自動車等わが国の関心品目の関税率の引き下げ、ITAへの加盟による関税撤廃、金融分野の外資規制の緩和など、主要分野において一定の成果がある。

政府調達協定改正

国際調達の対象機関の拡大、対象基準額(下限額)の引き下げ等に合意し、世界で約800億ドルの新規市場が同協定加盟国に開放されることとなった。中国も加盟を申請中である。改正交渉では、EUとわが国との間の鉄道調達に関する折衝が最後まで残ったが、焦点であったJR本州3社の適用除外、輸送の安全に関する調達の適用除外、相互の市場アクセスの改善に関しては、日EU間のEPAをめぐる協議に持ち越すことで決着した。

■ 経済産業省・黒田参事官説明

保護主義の抑止

わが国から枝野幸男経済産業大臣ほかが出席し、保護主義の圧力が高まるなかで自由貿易の価値を共有すべきことを主張した。閣僚会議の議長総括には、すべての形態の保護主義的措置を断固として抑止するとの約束が盛り込まれたが、G20やAPEC首脳会議の首脳宣言のように、新たな保護主義的措置を控えるとともに、すでに導入された貿易歪曲的な措置を是正することには合意できなかった。このため、わが国を含む23カ国・地域で共同記者会見を行い、G20、APEC首脳会議並みの反保護主義の声明を発出した。

【国際経済本部】
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