経団連タイムス No.3074 (2012年2月16日)

ロシアのWTO加盟承認について聞く

−日本ロシア経済委員会


経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)を開催し、外務省の齋田伸一・経済局国際貿易課長はじめ外務省・経産省の関係部局から、ロシアのWTO加盟承認と今後の展望について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 18年越しの交渉がようやく終了

昨年12月16日のWTO閣僚会議で、ロシアの加盟が正式に承認された。一時ロシアと領土問題を抱えるグルジアが反対の意向を示したが、スイスが仲介し交渉が大きく前進した。その背景には、米国のオバマ大統領やロシアのプーチン首相などによる交渉妥結への強い後押しがあった。今後批准手続きを経て、今夏に正式加盟の見通しである。

■ 一層強化されるWTO体制

世界第11位のGDP、世界第9位の人口規模を誇るロシアの加盟により、WTO加盟国・地域数は157に拡大し、世界貿易の97%以上を網羅することになる。また、BRICSの一角を占めるロシアにおいて、保護主義的な貿易政策の導入防止、貿易・投資制度の透明性・予見可能性の向上が一層推進されることで、WTO体制は質、量ともに強化される。

■ 交渉の成果と期待される効果

(1)物品貿易

全品目の平均関税率は、現行の10%から7.8%に低減する。品目別では、日本の対ロ輸出の3分の2を占める自動車のうち、乗用車の関税率が半減し、加盟7年後に15%になる。また、加盟3年後にはブルドーザー、液晶・プラズマテレビの関税率がそれぞれ5%、10%に半減し、IT製品の関税は撤廃される。原油輸出税は国際価格に連動して決定される方式に変更される。冷凍魚や甲殻類の輸出税は加盟4年後に撤廃される。

(2)サービス貿易

わが国の対ロサービス貿易の主要分野である金融について、保険業のみ加盟9年後に外国企業の支店開設が認められた。電気通信では、4年以内の外資規制撤廃を約束した。ほかに、運送、流通、建設について、一部留保事項を除き制限が課されないことが約束された。

(3)ロシアの貿易・投資環境の整備

価格統制品目、輸出入許可制品目、税関で発生する手数料等のリスト化などにより、輸出入手続きの明確化、簡素化が図られる。また、付加価値税還付制度の透明性・内外無差別性も確保される。わが国企業も裨益する自動車に関する投資優遇措置について、WTO非整合的なものは2018年7月までに廃止されるものの、そのことによって、現時点でのロシア進出や優遇措置適用の有無にかかわらず、差別されないことが約束された。

【国際経済本部】
Copyright © Keidanren