経団連タイムス No.3077 (2012年3月8日)

21世紀政策研究所が第87回シンポジウム開催

−社会保障の新たな制度設計のあり方、大塚前厚労副大臣迎え論議


経団連の21世紀政策研究所(米倉弘昌会長、森田富治郎理事長)は2月23日、東京・大手町の経団連会館で第87回シンポジウム「社会保障の新たな制度設計に向けて」を開催した。シンポジウムでは、同研究所がこの1年取り組んできた研究プロジェクト「社会保障制度の制度設計−抜本改革の具体的方向性」の成果を発表するとともに、制度改革に向けての諸課題についてパネルディスカッションを行った。

まず、来賓の大塚耕平参議院議員(前厚生労働副大臣)が、「一体改革の意義とNIMBYシンドローム」と題して基調講演。わが国は今後半世紀で人口が4分の1に激減することが見込まれており、社会保障制度の見直しを迫られているとの認識を示した。そのうえで、一体改革は現行制度内の調整によって制度の持続可能性を高めようとするものであるが、それで十分なのか、新制度の必要性についても並行的に議論していく必要があるのではないかと提起した。

また、わが国経済の長期低迷は大幅な財政支出が効果的に機能しなかったことが主因であり、2つの背景として社会資本のつくり過ぎと高度成長期に始まった社会保障の大盤振る舞いがあるとした。さらに公共の利益より自分の利益を優先するNIMBY(Not In My Back Yard)シンドロームを克服し、社会保険の意味を問い直すとともに、社会保障以外の分野の改革にも目を向ける必要があると指摘した。

続いて、同研究所研究主幹の岩本康志東京大学大学院経済学研究所教授が、「社会保障の新たな制度設計に向けて」と題して今回の研究目的や研究成果について報告した。岩本教授は、一体改革の方向性については一定の評価ができるが、高齢化のピークは2070年ごろであり、財政の健全化も達成するためには、2050年時点で消費税率換算27%程度の財源が必要であるとの試算を示し、長期的な視点に立った検討が必要であり、給付の充実を図る余裕はないとした。

パネルディスカッションでは岩本教授をモデレーターに、研究会の各委員に大塚議員も加わり、活発な議論が展開された。

大石亜希子千葉大学法経学部教授からは子ども・子育て支援について、福井唯嗣京都産業大学経済学部准教授からは医療・介護について、白石浩介三菱総合研究所主席研究員からは年金改革について、林正義東京大学大学院経済学研究科准教授からは貧困・格差対策について、それぞれ改革の方向性について説明があった。これを受けて、大塚議員からは、(1)真に必要な人に行き渡るようにする(2)就労を前提にした制度にする(3)他の分野(財政等)にも目を配る――という3点が重要であるとの所感が示された。

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シンポジウムでの議論の詳細については、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】
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