経団連タイムス No.3078 (2012年3月15日)

情報通信分野の標準化政策で説明聞く

−総務省の布施田課長に/知的財産委員会国際標準化戦略部会


経団連の知的財産委員会国際標準化戦略部会(小豆畑茂部会長)は2月28日、総務省情報通信国際戦略局通信規格課の布施田英生課長から「情報通信分野における標準化政策の動向」と題し、説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.わが国の現状

わが国における情報通信(ICT)産業の市場規模は全産業の約10%を占めるとともに、GDP成長率への寄与度も高い。ブロードバンドの速度や品質等は世界最高水準にありながら、利活用の遅れ、特に政府における利活用が進展していないことなどが指摘されている。ICT分野の総合的な国際競争力に関する指標を見ると、軒並み低迷している。例えば世界経済フォーラムのICT競争ランキングにおいては、シンガポール、台湾、韓国といったアジア勢が躍進するなか、わが国は低下傾向にあり、2011年は19位に甘んじている。

2.総務省の標準化政策

そうしたなか、近年、わが国においては国際標準化政策の強化がうたわれている。総務省では、総合的な標準化政策のあり方の検討を進めており、国際電気通信連合(ITU)における国際標準化活動等を軸に、民間主導の標準化活動に対する支援強化にも取り組むなど、ICT分野における標準化活動の推進に力を入れている。

(1)スマートグリッド

スマートグリッドは、ICTの活用により、電力の需要と供給を常時最適化する次世代の電力網である。総務省では関係省庁との連携のもと、新技術の開発や標準化、地域実証等を推進しており、その成果をITU等へ積極的に提案している。

(2)「モノのインターネット」

機械同士が人間を介在せずに相互にネットワークを通じて情報交換する、M2M(Machine to Machine)に用いられる通信規格の研究開発が世界的に進展している。総務省でも、機械同士が自動最適制御するための安全性・信頼性の高い通信規格の開発・実証と国際標準獲得に取り組む。

(3)デジタルサイネージ

屋外、店頭、公共空間、電車内等のさまざまな場所でネットワークに接続したディスプレイ等の電子的な表示機器を使って情報発信するシステムをデジタルサイネージと呼んでいる。近年、その市場は世界的に拡大傾向にある。総務省では、ITUと共同でデジタルサイネージの標準化に関する世界初の国際ワークショップをわが国で開催した。その結果、ITUにおける国際標準として、デジタルサイネージに関するフレームワークの勧告案の完成を今年5月までに目指すこととなった。

(4)スマートテレビ

世界市場におけるインターネット対応のスマートテレビについては、米国の調査会社によると、2015年にはインターネット対応テレビの出荷比率が薄型テレビ全体の約50%を占め、出荷台数は約1億3800万台に拡大すると予想されている。総務省では、わが国発の取り組みとして、インターネット上で広く利用されているブラウザでテレビ放送を扱う技術の標準化を目指しており、ウェブの標準化団体であるW3C(World Wide Web Consortium)の国際標準化活動において主導権を獲得するため、各種施策を実施している。

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国際標準化戦略部会では、今後も国際競争力強化へ向けた標準化への取り組み方策について検討を深めていく予定である。

【産業技術本部】
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