経団連タイムス No.3079 (2012年3月22日)

高齢社会に対応した流通サービスの取り組みについて説明を聞く

−高齢社会対応部会


経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で、都市・地域政策委員会、住宅政策委員会共管の高齢社会対応部会(渡邊大樹部会長)を開催した。今回はキーノートスピーカーとして、経済産業省とヤマト運輸から、高齢社会に対応した流通サービスについて説明を聞いた。

■ 経済産業省の取り組み

流通業と生活インフラの関係を議論する研究会を開催し、2010年に報告書をまとめた。この検討のなかで買い物難民・買い物弱者が話題となり、高齢者の孤独死の問題とともに地域コミュニティーの希薄化の問題が浮上した。2050年には徒歩圏内に生鮮食料品店が存在しない高齢者単独世帯が114万件と、05年の2.5倍に増える推計がある。流通業全体では停滞気味の状況が続いており、商圏の変化に応じた店舗立地、ターゲット層、事業形態の見直しが必要になっている。現状で日常の買い物に不便を感じる人の割合は17.1%となっており、全国で600万人の買い物弱者がいる。流通サービスは集客型から接客型への移行が必要であり、イノベーションによる課題克服と地方自治体等による支援の活用、地域コミュニティーとの連携が求められている。

経産省では、ベストプラクティスを集めた買い物弱者応援マニュアルの策定とその普及・促進に加え、予算等による支援を行ってきた。各省でも同時に事業支援の取り組みを行っており、地方自治体にも商工、まちづくり、福祉、農業、交通の各観点から同様の動きが広がっている。今後も関係者の動きや実情を報告するので、地域や事業者による対策の参考にしてもらいたい。

■ ヤマト運輸の取り組み

地域密着型サービスとして、地域の特性に応じた高齢者向け生活支援、買い物弱者支援、後継者不足問題を抱える取扱店の活性化に取り組んでいる。高齢者向けの「まごころ宅急便」は全国約40カ所で実施しており、買い物支援と見守りを並列して進めている。

発端は、岩手県で独居老人の孤独死に直面した社員の思いに共鳴した県立大学との取り組みであった。その後、補助金の終了とともに事業が終わってしまったので、厚生労働省の安心生活創造事業推進検討会への参加をきっかけに、岩手県西和賀町の社会福祉協議会と連携してあらためて取り組んでいる。その仕組みは、高齢者が社協に電話で注文を入れると社協の係員がスーパーに買い物に行き、当社がそれをピックアップして当日のうちに配達・集金・決済まで行うものである。社員が高齢者の安否情報を伝えることに加え、電話注文時にもコミュニケーションが取れるという面で社協のメリットもある。会社としては社会貢献的に協力しているが、買い物以外に雪かきの人手不足、髪を切りに行く足がないといったニーズがあるので、コールセンターで要望をいったん受けて、当社で対応できない要望は地元の商工会で対応してもらうことを検討している。

被災地の岩手県大槌町でも同様の取り組みを進めており、地元の社協自体が被災したこともあって北上市からもバックアップを受けている。

【産業政策本部】
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