月刊
経済Trend
2002年7月 創刊号

総合経済団体の発足に深い感慨

今井 敬 日本経団連名誉会長
日本経団連名誉会長

今井 敬 いまい たかし

 幾多の困難を乗り越え、このたび日本経済団体連合会が発足したことは、誠に感慨深い。経済・産業分野から社会労働分野まで、企業活動に関わる広範な問題に取り組む新たな総合経済団体として、今後の活動に大いに期待したい。
 経団連はこれまで、経済界が直面する内外の重要課題の解決と、自由主義経済の維持・活性化を通じ、わが国ならびに世界経済の発展に寄与してきた。また、日経連は労働問題を専門的に扱う経営者団体として、一貫して「人間」の問題に軸足を置き、安定した労使関係の構築に貢献してきた。
 両団体は、相互に連携を取りつつ、それぞれの役割を果たしてきたが、戦後半世紀以上の星霜を経た今日、労働問題と経済問題は密接不可分の課題となっている。また、少子高齢化、国民の意識・価値観の多様化の進展に伴って、社会保障制度改革、雇用・労働問題、教育改革等は、企業経営にとってこれまで以上に重要な政策課題となり、経済界を挙げた取組みが強く求められている。
 新たな時代に必要とされる経済団体の組織・活動理念・行動原理もまた、見直しを迫られるに至っている。かかる問題意識のもと、経団連と日経連の統合に向けて新団体設立検討委員会(座長:藤井義弘日立造船会長/当時、現相談役)が設置され、二〇〇〇年十二月には統合の基本構想を示した報告がまとめられた。そして今般、時代状況に適応した真の政策提言能力と実行力を有する総合経済団体として、日本経済団体連合会が発足することとなったのである。

 わが国経済は本来、優れた潜在力を有しているにもかかわらず、長期にわたる停滞を余儀なくされ、国民や企業の間には将来に対する不安感や閉塞感が蔓延している。これは日本の経済・社会システムが、グローバル化や少子高齢化といった内外の大きな環境変化に的確に対応できていないことに起因している。官民挙げて思いきった構造改革を進め、個人や企業が主役となる経済社会を確立することが急務である。
 こうした中、新団体の使命は何よりもまず、二十一世紀における「民主導の活力ある経済社会」の実現に向けて、わが国の進むべき道を示し、リーダーシップを発揮することにある。とりわけ、自己責任原則と人間尊重の精神のもと、自由・公正・透明な市場経済体制を確立し、世界経済の健全な発展に寄与することが重要である。そのためには、各界との対話の促進、企業倫理の高揚、地域経済との連携とサービス活動、民間経済外交の推進などを、これまで以上に積極的に図らなければならない。
 併せて、経団連と日経連が過去半世紀にわたり培ってきたリソースとネットワークを効果的に融合し、政策実現能力を高めて、会員の期待に応えることが求められている。こうした認識に立って、日本経団連には、個人や企業が自由に創造性を発揮できる、魅力と活力あふれる豊かな日本の創造に向け、果敢に取り組んでいただきたい。
 奥田新会長のリーダーシップのもと、日本経済団体連合会が十二分に世の中に貢献できるよう、私もできる限り力添えしてまいる所存である。

 最後に、奥田会長をはじめ新執行部の皆様方の今後のご活躍と、会員の皆様のますますのご発展をお祈り申しあげるとともに、過去四年間に亘り私を支えてくださった副会長、委員長、理事、評議員の方々、会員の皆様に心より御礼申しあげ、新団体発足へのはなむけとしたい。


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