月刊・経済Trend 2011年12月号別冊 寄稿〜震災後、企業はどう取り組んだか

花王

代表取締役専務執行役員
後藤卓雄
(ごとう たくお)

東日本大震災で被災された皆さまに心からお見舞い申しあげたい。被災地においては未だ生活における不便や不自由を強いられている方々も多いと拝察しており、この大震災からの一日も早い復旧、復興を願い、今後も花王グループとして全力で支援をしていきたい。

何が何でも復旧させる総力戦


花王 鹿島工場

花王グループの東北・関東地域の事業拠点では、鹿島や栃木の工場・研究所、川崎工場、仙台と仙台南ロジスティクスセンター、販売拠点などが、建屋や設備の損傷、敷地内の液状化による地盤沈下、津波による冠水、数万から数十万梱に及ぶ製品の落下や流出などの被害を受けた。

特に鹿島工場は、さまざまな産業界でご利用頂いているケミカル製品や弊社の家庭用製品向け中間原料などをグローバルに供給している重要拠点であるため、一刻も早い復旧と操業再開が必要であった。そこで、地震発生翌日には、熟練の技術者たちを中心とした支援チームを派遣し、彼ら目利きの判断を頼りに、復旧工事の優先順位付けや手順、工事業者の早期確保などの段取りを開始した。その後、30名を超える応援エンジニアと約400名の工事業者の方々が、昼夜を厭わず不眠不休で、工場・研究所と一丸となって復旧作業に挑んでくれた。

その結果、当社の事業継続計画(BCP)での想定規模を遥かに超える被害を受け、鹿島地区のなかでも被害の大きかった工場の一つとも評されていたにもかかわらず、震災後24日目の4月4日から、順次生産を再開することができた。

さらに、他の被災拠点の復旧や、7000品目を超える原材料に及んだ調達課題の解消、寸断された商品配送機能の再構築など、広範なサプライチェーン障害の正常化については、海外拠点からの支援も含めてグループ全体で取り組み、6月にはほぼ事業活動に支障のない状態にまで回復させている。

今回、迅速にサプライチェーンを再開できた理由は、何が何でも復旧させるという現場の熱い思いと、可能な限りのマンパワーを全て注ぎ込む総力戦で臨むという決断を即座に下したがゆえに成し遂げられた結果であると考えている。

花王らしい被災地緊急支援を展開

一方、震災発生直後からの被災地緊急支援についても、経団連、NGO、NPOを通じた義援金のほか、各県の対策本部を通して生活必需品(紙おむつ、生理用品、石鹸・洗剤、ハミガキなど)をお届けするなど、きめ細やかな支援を行ってきた。今後も、復旧、復興への道のりにおいて、季節や生活場面の移り変わりに伴い、被災者の皆さまのニーズが変化することを踏まえたうえでの、花王らしい支援活動を展開していきたいと考えている。一例であるが、被災者の皆さまが仮設住宅に入居される時期には、「花王 生活用品セット(10品目)」5万戸分の配布を実施した。


花王 生活用品セット

さらに、子供たちの運動会を手伝う「運動会サポートキャラバン」への参加や、女性のための健康相談プログラムの支援、また、「心に寄り添う文化プロジェクト24」の活動を行う団体への助成など、被災された方々のお気持ちが少しでも前に進む一助になれるよう、微力ではあるが、精神面における支援にも取り組んでいる。

また、被災地支援ボランティアや日本ユニセフ協会の「ちっちゃな図書館プロジェクト」などの社会貢献活動へ参加する社員も増えてきており、ボランティア休暇制度の利用率向上、WEB上でのボランティア情報サイトのオープンなど、社員のさらなる積極的な支援活動参加を促す体制の充実も図っている。

生活に密着した企業としての社会的使命

勿論、花王グループが果たすべき最大の社会的使命は、生活に密着した必需品メーカーとして、消費者の皆さまの日々の暮らしにお役立ていただける製品を安定的に、そして、需要を満たすに十分な量をお届けすることである。

そのためにも、今回の危機管理対応のなかで明確になった課題や反省点を踏まえて、これまで以上にサプライチェーンの危機対応力を高め、消費者や顧客の皆さまの豊かな生活文化の実現と産業界の発展に継続的に貢献していきたい。

(9月22日記)

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