月刊・経済Trend 2011年12月号別冊 特別寄稿

地域を後押しする復興施策を総動員する

平野大臣 平野達男
(ひらの たつお)

東日本大震災復興対策担当大臣/内閣府特命担当大臣(防災)

東日本大震災からの復興は、野田政権の最優先課題である。仮設住宅の建設、ガレキの一次処理、被災した公共施設の応急復旧など、一定のめどが立った。これから本格的な復興への取り組みが始まる。

生活再建、雇用確保が喫緊の課題

喫緊の課題の一つは、被災地域における雇用の確保である。まず、できるだけ早期に被災・流失した水産業、製造業、商店街などを復活させることが基本だ。港湾、漁港、道路等のインフラの復旧・復興、水揚げ港での冷凍・製氷関連施設の整備、中小企業の再建を強力に進めたい。このため、国では、先例にとらわれない支援制度も用意した。

新たな視点で地震・津波に強いまちづくりを

現在、市町村において復興計画を策定中であるが、最も重要なのは、将来起こり得る次の津波災害に対応した土地利用計画である。新たな地域づくり、まちづくりを考えるうえでは、津波被害を受けた土地では建物を元に戻せばよいというわけにはいかない。特に住居については、場合によっては高台移転も検討しなければならない。長年その土地に住んでいた方々には大きな決断を迫ることになり、本来であれば充分に時間をかけ、徹底した議論を行うことが必要だ。しかし、議論に時間がかかりすぎれば、復興が大きく遅れる。このため、被災自治体は、限られた時間のなかで復興計画をつくり、実行に移していかなければならないという悩みを抱えている。国として、市町村の復興計画の策定への支援に力を入れていきたい。

そうした新たな地域づくり、まちづくりを進めるためには、区画整理やインフラ整備を含めて、相応の費用がかかる。今回の被災の規模はあまりに大きく、被災自治体は財政力が弱いところが多いために、特別交付税を充当することにより、実質的な自治体負担をなくしたかたちで進めていきたい。そのときに必要となるのは自治体側の徹底したコスト意識である。復興増税を国民にお願いする以上、このことについては深く考慮しなければならない。

復興庁と特区で復興計画実現を後押し

復興庁設置法案と復興特別区域法案については、臨時国会で成立させるべく全力を尽くす。復興庁については、これが復興推進の司令塔の役割を果たすことができるような制度設計を行っており、国会でしっかりと議論していただきたい。また復興特区については、規制緩和や税制の特例を含めて、被災自治体が策定した復興計画を円滑・迅速に実行するための重要な役割が期待されているため、早期に成立させなければならない。

ここで重要なのは、復興の主役となるべきは地域であるということである。自分たちの地域・街をどのようにつくり直すかは、地域が自ら決めるのが原則である。国はその過程で、地域の取り組みが円滑に進むよう、さまざまな支援を行う。

また、民間の活力なくして復興はあり得ない。復興に向けて、農林漁業に携わる方々、商店など三次産業の方々、企業を経営する方々の活力を遺憾なく発揮していただきたい。被災した工場・商店が再開することほど、勇気づけられることはない。そのために必要な環境整備、例えば道路や港湾の復旧といったインフラ整備については、国が前面に立って取り組んでいく。

復興とは地域の自立を実現すること

復興とは、もう一度、地域の自立を実現することである。その一環として、再生可能エネルギーやスマートグリッドなどの新技術の導入についても、国はしっかりと支援していく。アイデアやノウハウは、民間からさまざまに提供していただきたい。学識経験者の知見も融合させつつ、地域に合った施策を展開していきたい。

被災自治体は高齢化が進展しているところが大半であり、高齢者にやさしい地域づくり、まちづくりという視点も重要となろう。一次産業を基本としながら、官民協調により、高齢化対応や先端的な環境技術を融合させた地域づくり、まちづくりに取り組んでいきたい。

観光が重要な柱

また、東北の復興に観光振興は欠かせない。現状では、津波被害に遭っていない地域や地震の影響が比較的軽微で済んだ地域、福島原発事故による放射線の量が低い地域まで、大幅に観光客が減っている。放射性物質で汚染された地域では除染を進めつつ、放射線量のデータをしっかりと公開して、安全性をアピールすることにより、国内外からの観光客が再び東北を訪れるようにしていきたい。

経団連会員企業におかれては、さまざまな会議を東北の各都市で開催することも復興に向けた民間の支援であるとお考えいただき、計画していただければ幸いである。

(10月11日記)

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