月刊・経済Trend 2011年12月号別冊 寄稿〜産業界の取り組み

被災地のニーズに応じた被災者・被災地支援の取り組み

佐藤正敏
(さとう まさとし)

経団連社会貢献推進委員会共同委員長/1%(ワンパーセント)クラブ会長
損害保険ジャパン会長

経団連は、震災発生直後から1%(ワンパーセント)クラブと連携し、会員企業・団体等から多大な協力を得て、資金面・物資面・人材面にわたるさまざまな被災者・被災地支援に取り組んできた。

震災発生当初の3〜4月は主に資金面や物資面の支援に注力した。具体的には、既刊(経済Trend5・6月号)で紹介した通り、会員企業等に義援金・支援金の協力を呼びかけるとともに、被災した県知事等とホットラインを結び、被災県から要請があった救援物資を陸・海・空のルートで被災地にお届けした。また、災害ボランティアセンターの立ち上げや運営に必要な資機材等の提供に協力した。さらに、学用品や日用品等を被災地外で小分けにして袋詰めしたものを被災地に届ける「うるうるパック」を提供した。

本稿では、その後の被災者・被災地支援の取組みを中心に紹介したい。

企業人ボランティアの派遣

1%クラブでは、災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)と連携し、現地の受入体制が整うのを待って、4月下旬から、岩手県、宮城県、福島県向けの4〜5日単位の「東日本大震災の被災地の人々を応援する企業人ボランティアプログラム」を編成し、社会貢献活動に関心の高い企業に社員の参加を呼びかけた。このプログラムは、ゴールデンウィークと梅雨時期を除き、8月まで規模を拡大して実施し、畑のがれき撤去、個人宅や側溝の泥かき、思い出の写真の洗浄、仮設住宅への支援物資の配布等の作業を行った。最終的に、派遣回数は20回、49社・グループからのべ2,101名の企業人等が参加した。

現地からは、ゴールデンウィーク明けから夏休みまでの間は学生等のボランティアの確保が難しく、一定規模の企業人がこの時期にボランティア活動を行ったことに対して大変感謝された。また、企業人のマナーや統率力の良さも評価され、歓迎を受けた。

他方、企業のなかには、社員から多数の参加希望が寄せられ社内で選考会を行ったところもあったという。今回のプログラムでは、ボランティア活動の経験のない参加者が全体の9割を占め、また、時間的な制約からボランティアに参加しづらい30代〜40代の参加者が6割に達するなど、これまでのボランティアにはない関心の高さが伺えた(図表参照)。また、これを契機に、ボランティア休暇や経費補助等の制度を創設した企業もあった。

プログラム終了後も、参加者はメーリングリスト等を通じて交流を続け、被災地支援の情報交換を活発に行ったり、自社・グループ独自のボランティアプログラムを企画・実施したりするなど、支援の輪が広がっていった。ボランティアに関心を持っていた人々同士が繋がり、現地のために活動するボランティアの芽が大きく育っており、プログラムを実施した意味が大きかったことを実感している。

企業人ボランティアプログラム 参加者の構成
<年齢構成>
<災害ボランティア活動経験の有無>

企業マルシェ・社員食堂での現地産品の利用

4月から各社に呼びかけている企業マルシェ(産直市)や社員食堂の取り組みについても、農水産物や加工食品の消費活動を通じて現地を応援するというコンセプトに共感していただき、輪が広がっていった。9月上旬までに経団連に報告があっただけでも、社員食堂での応援メニューを提供した企業が18社、被災地応援企業マルシェを行った企業が24社ある。企業単体の取り組みにとどまらず、複数の企業が連携してマルシェを企画している例や、地方の事業所や工場等で展開している例も見られる。

経済界における被災者・被災地支援に係る報告書のとりまとめ

経済界では、多くの会員が、経団連呼びかけとは別に、多岐にわたる被災者・被災地支援の活動を独自に展開している。このような経済界の取り組みの全体像を記録に残し、広く国民の理解を得るとともに、他社の例を参考にして今後の災害対応に備えることは意義がある。そこで経団連では、全会員企業・団体を対象に支援活動に係るアンケートを実施するとともに、ヒアリング等を行い、震災発生から約1年が経過する3月を目途に、経済界における被災者・被災地支援報告書をとりまとめる予定である。

被災者・被災地支援は、刻々と変化する地元のニーズを把握し、ニーズに合致した活動を展開することが重要である。復興までの道のりは長いことから、経団連では、引き続き関係組織と連携を取りながら現地の状況等を踏まえて活動を行っていく。企業・団体の皆様には引き続きご支援・ご協力をお願いしたい。

(注)災害ボランティア活動支援プロジェクト会議(支援P)は、新潟中越地震の教訓を受けて設置された、災害発生時のボランティア活動が円滑に推進されるよう支援する組織で、社会福祉協議会や共同募金会、NPO等で構成され、1%クラブも参加している。災害ボランティアセンターの立ち上げや運営を、人材の派遣、被災地のニーズにあった資機材や救援物資の提供などを通じて支えている。


日本語のホームページへ