景気関連インフォメーション

2000年1月分


第157回 景気動向専門部会・議事概要( 1月11日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 「景気動向指数(99年11月速報分)について」
    経済企画庁 妹尾・景気統計調査課長
  2. 11月の景気動向指数(速報値)の先行指数は57.1%と4ヶ月連続で50%を上回った。一致指数は62.5%と5ヶ月連続で50%を上回った。遅行指数は33.3%と23ヶ月連続で50%を下回った。
    一致系列では、生産指数に持ち直しの動きが、雇用関連指標にも改善の動きが見られ、いずれもプラスになることが多くなっている。一方、消費関連の指標は依然としてマイナスになることが多くなっている。
    先行系列は、輸出需要の好調を反映しているという基調に変りはない。また、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)は好調なパソコン需要を反映しプラスとなっている。新設住宅着工床面積は、9月以降マイナスが続いている。10月から始まった住宅金融公庫の第2回募集分の効果はまだ十分出てきていないが、住宅減税の半年延期により、マンション着工が進んでおり、公庫申込みのピークは12月となるとみられることから、今後、指標の改善が期待される。消費不振を反映し、新車新規登録・届出台数は11月もマイナスとなった。
    一致系列では、好調な生産動向を反映し、生産指数、所定外労働時間指数、投資財出荷指数がプラスとなっている。一方、百貨店販売、商業販売額指数はマイナスとなっており、消費関連指標の基調は弱い。なお、中小企業売上高は2ヶ月連続でプラスとなった。
    11月の一致指数は、50%を上回ったので、方向性としては景気は改善傾向にあるといえる。しかし、内訳を見ると消費関連指標はマイナスが続いており、消費への改善の波及度は弱い。
    なお、今月24日の改訂で、一致指数には原材料消費指数、稼働率指数が新たに入ってくる。大口電力使用量も11月はマイナスになっているように、比較対象となる8月の指標の水準が高く、相当伸びないとプラスにならない(原材料消費指数が前月比2.9%増、稼働率指数が前月比4.0%増必要)ため、11月の改訂値も予断は許さない。上記2指数が万一マイナスになると、一致指数の改訂値は50%となり、4ヶ月続いた50%超が途切れることになる。これをどう判断するかについては、8月の水準についての評価が前提となる。
    遅行系列に改善の兆しが見られないが、生産活動の持ち直しの影響が11月時点で出ていないからといって、そう悲観する必要はないと見ている。
    1月11日の日経新聞に、経済企画庁の調査結果として「3つの過剰の拡大が止まった」という記事が出ているが、これは、昨年末経済企画庁が発表した「平成11年度経済の回顧と課題」(いわゆるミニ白書)の中の解説を引用したものである。過剰の規模を、定量的に把握しようとした試みの一環である。

  3. 「2000年度予算について」
    大蔵省 稲垣・調査企画課政策調整室長
    1. 2000年度予算のポイント
      2000年度予算は、回復の兆しの見え始めた日本経済を成長軌道に戻していくため、民需へのバトンタッチまでは、公需が引き続き精一杯がんばるという性格のものになっている。
      予算のポイントの第1点は、経済・金融情勢に万全の対応を図っている点にある。公共事業関係費は前年度当初予算と同額の9.4兆円計上しているが、これに加え、99年度の第2次補正予算で計上された3.5兆円(事業規模で6.8兆円)についても、実際の支出のかなりの部分は2000年度になる。また、今年度同様、公共事業予備費を0.5兆円確保している。金融面においても、金融システム安定化・預金者保護を図るため、預金保険機構の保有する交付国債の償還財源として、4.5兆円を国債整理基金特別会計に繰り入れる等万全の対応を図っている。ペイオフ解禁は、昨年末に2001年4月から2002年4月に延期されたが、それまでの間に、ペイオフ解禁後の環境に耐え得る体制を作ることが課題である。すでに60兆円の公的資金枠があり、内7兆円が交付国債であったが、全体の枠を70兆円に広げるに当り、6兆円の交付国債を追加することとした。この交付国債6兆円の償還財源として、4.5兆円を国債整理基金特別会計に繰り入れ、残り1.5兆円は、政府保有のNTT株売却で賄う予定である。蔵相からは「十分であろう、むしろ全部使い切る必要もないのではないか」とのコメントも頂いているが、既に国有化されたメジャーバンクの処理も済んでいないので、それらを念頭に6兆円の追加という万全の対策を取った。
      第2のポイントは、重点的・効率的な予算配分である。地方交付税と国債費等を除いた政策的経費である一般歳出は前年度当初予算比2.6%増と比較的高い伸びを確保している。内訳でも、めりはりを効かせて、科学技術振興費については6.8%という高い伸びを確保した。中小企業対策費についても特別保証を拡充、延長したことなどもあり、新しい中小企業対策の理念の下、同1.0%の伸びを確保した。他方、ODAについては、円高の追い風もあり同0.2%減とし、エネルギー対策費も十分な見直しを行ない同2.8%減となっている。さらに、いわゆる総理枠、党枠として、非公共事業ではミレニアム・プロジェクト3分野を中心に2,500億円、公共事業では5,500億円を重点的に配分した。
      第3のポイントは、民需へのバトンタッチまで公需を維持することとした結果、32兆6,100億円(公債依存度38.4%)の公債を発行することとなったことである。蔵相の言を借りれば、「最後の一押しとして、思い切った予算」とするため、公債依存度は38.4%と当初予算ベースでは、1979年の39.6%に次ぐ高さになった。ちなみに、99年度第2次補正後予算の公債依存度は43.4%となっており、これは実績で過去最高の98年度の40.3%を上回っている。2000年度当初予算はかろうじて40%を切っているが、当初予算としては格段に高い水準にあると言える。ちなみに、1979年の実績は34.7%におさまった。

    2. 2000年度予算フレーム
      歳入面では、税収は、48兆6,590億円で、前年度当初予算比1兆5,400億円増となっている。99年度第2次補正後予算比では、約3兆円増の見込みである。ただし、この税収増は特別要因による。郵貯の定額貯金が2000、2001年度に集中的に満期を迎えるが、利子に対する課税分が約3兆円に達する(郵貯の定額貯金は、課税繰り延べ型商品で、満期・引き出し時に利子課税される)見込みである。したがって、この要因を除くと、ほとんど前年度比横ばいである。昨年の減税の平年度化分等の細かな減収もあり、これに見合う程度の若干の自然増収は見込んでいるが、いずれにせよ物価安定が続く中、2000年度もあまり大きな税収増は期待できない。
      その他収入は、3兆7,181億円となっているが、いろいろとかき集めて工面したものであり、正直言って、無理をした数字となっている。
      歳出面では、国債費が初めて20兆円を上回った。このうち、交付国債の償還財源としての4兆5,000億円は一時的な要因といっていい。国債費は99年度当初予算から2000年度当初予算にかけて、2兆1,334億円増えているが、99年度当初予算に含まれていた交付国債の償還財源は、2兆5,000億円だったので、交付国債の償還財源の増加分に相当する。毎年、国債残高の60分の1ずつ償還財源の繰入れを行なうことになっているので、国債の残高が増えている分国債費が増えるはずだが、小幅に留まっているのは、低金利により利払い費が減少しているからである。一般歳出は、前年度当初予算比2.6%増となっている。99年度当初予算の5.3%増に比し、伸びが低いが、99年度当初予算には公共事業等予備費5,000億円と、厚生保険特別会計に対する繰入れ特例を行わないことによる増分7,000億円が含まれており、これを除けば99年度予算の一般歳出の前年度比も2.6%の伸びである。

    3. 2000年度一般歳出概算
      社会保障関係費は対前年度当初予算比4.1%増、文教および科学振興費は科学振技術振興費の同6.8%増を含め、同0.9%増となっている。一方、エネルギー関係費、主要食糧関係費は減額となっている。その他事項経費が同11.3%増と大きく伸びているが、この中にはサミット関係費、総選挙関係費等の特殊要因が含まれている。

    4. 2000年度税制改正案のポイント
      経済の足取りを確かなものとするために、思い切った対策が取られている。住宅ローン減税は、本年末までに入居という要件を、半年延長した。パソコン減税、中小企業投資促進税制、中小企業技術基盤強化税制等についても、期限を延長した。中小企業、ベンチャー企業関係の租税特別措置についても手当てする。確定拠出型年金に関しても税制上の手当てを行なう。法人関係税制では、産業活力再生特別措置法の規定に関る登録免許税の特例を拡充した。たとえば、大手銀行3行の統合のケースでは、相当な減税メリットがあると聞いている。
      2000年度の減収見込み額は、1,470億円であり、見かけ上は小さいが、前年度に引き続き、国、地方合わせて、6兆円を相当上回る恒久的な減税が継続されている。また、年少扶養控除の削減分による増収見込みの2,030億円を差し引けば、減税規模は約3,500億円にのぼり、政策減税としてはそれなりのものが確保されている。

  4. 鉱工業生産指数(99年11月分)について
    通産省 池谷・統計解析課長
  5. 99年11月生産は、全ての業種で伸び、前月比3.8%増となった。品目別では、電機機械では、アクティブ型液晶素子、モス型半導体集積回路等の生産財が、金属製品では飲料用アルミニウム缶や木造住宅用アルミニウムサッシ、その他工業では電子応用玩具、輸送機械では、普通乗用車や小型乗用車が増加に寄与している。普通乗用車は北米向けが好調な上、国内向け新型車が好調であり、小型車については11月に新型車の投入があった。アクティブ型液晶素子の伸びはパソコン市場の好調等が背景にある。
    出荷は生産と同様な動きを示した。在庫は若干積みあがった。
    生産は、8月に大きく伸びた後、9、10月と低下し、11月は反動もあり大幅に上昇と、比較的振れ幅の大きい増減を繰り返している。これには、稼動日要因が無視できない。10月は平日日数が昨年に比べて2日少なく、11月はその反動で高い数字が出た面は否めない。
    予測調査によると、12月は同1.7%減となるが、1月は同3.1%増と高い伸びが見込まれている。12月の低下は、輸送機械工業の乗用車が11月に増加した反動で減少し、また、パソコンなどに一服感が見られる。1月は、携帯電話、パソコンを始めとした電子機器が牽引し、電気機械が再び同9.2%増と高い伸びを示している。一般機械、輸送機械も1月は増加を見込んでいる。
    生産を四半期別に見ると、7〜9月期が前期比3.9%増と高い伸びを示したが、10〜12月期は、予測調査を勘案すると、それほど高い伸びは見込めず、前期比ゼロ近傍と見込まれる。生産に持ち直しの動きにはあるが、上昇度合いが強まったとはいえない。生産財のかなりの部分が在庫積み増し局面に入っており、最終需要と若干の色合いの違いが出てきている。また、鉱工業生産指数は実質値であり、名目値の動向とは違いがあろう。最終需要との関係では7〜9月期については外需に依存しており、当月も外需に依存している品目が散見されるのが、足元の特徴である。国内向け消費財の出荷は、99年1〜3月期から前期比でわずかながら減少を続けている。このように最終需要の回復は依然として不確実な面があるもものの、1月の予測値が高い伸びを示しており、年明けの調査結果については期待したい。

  6. 最近の雇用動向について
    労働省 山田・労働経済課長
  7. 完全失業率は11月4.5%と、過去最高水準にあった6、7月の4.9%から徐々に落ちてきている。有効求人倍率は、11月0.49倍と0.46倍で底を這っていた状況から改善して来ている。基本的な数値に関しては、良い方向に動いている。
    ただし、11月の雇用者数の前年差は19万人減となっている。内訳は常用雇用者が44万人減、臨時雇用者は24万人増となり、常用雇用者の前年差で見た減少幅は拡大傾向にある。また、女子の失業率の低下が全体の低下に寄与しているが、男子の失業率は4.7%と深刻な状況に変りがない。雇用情勢は引き続き厳しいと認識している。
    学卒の労働市場は非常に厳しく、2000年春の雇用情勢が懸念される。企業のリストラの動きはまだまだ緩んでおらず、入職抑制的な動きは根強く残っている。ある普通高校の先生から聞いた話では、高卒から大卒への需要のシフトもあると思うが金融機関や一般事務の求人がここ1〜2年激減しているとのことである。特に女子は一般事務の就職希望が強く、ブルーカラー系の求人があっても就職せず、結果的に無業という形に傾いていくという話があった。今後、このような動きが労働市場の数字にどう出てくるかが懸念される。

  8. 最近の設備投資の動向について
    日本銀行 鵜飼・経済調査課調査役
  9. 昨年末の金融経済月報では、設備投資が下げ止まりの気配をみせているという表現となった。これに対して、少し早いのではとの指摘もあった。そこで、本日は設備投資について自分なりの見方を説明したい。
    設備投資は企業の収益環境が1つの鍵となる。法人企業統計季報によると、昨年7〜9月に人件費削減のテンポが拡大しており、これと12月の短観を照らし合わせて考えると、99年度下期は何とか増益が確保されそうである。
    一方、12月の短観では、製造業大企業の99年度設備投資計画が下方修正され、前年度比10%を超える下げ幅を示した。しかし、法人企業統計季報が示すように、設備投資は99年度上半期にすでに大きく減少しており、その下げ幅は、もし、下半期も設備投資が横這いで推移すると通年で同2割近い減少になるような厳しい実績になっている。短観でも、99年度設備投資計画は、上期は下方修正、下期は上方修正という形になっている。このように、大企業の製造業の設備投資計画の下方修正は上半期の実績悪化による下方修正によるもので、年度下期も設備投資が減少を続けるということを示しているわけではない。
    ただ、大企業でも非製造業は資本効率が低く、収益率向上、債務返済のインセンティブは根強いものがあるので、判断しづらい点がある。
    また、中小企業の動向も把握しづらい。12月短観では中小企業の設備投資計画は、上方修正されはしたものの、前年度比で見た下げ幅の水準自体は依然として大きい。しかし、そもそも98年度には、アンケートで拾いにくい零細企業を含めた中小企業が資金不足から投資を絞り、日本全体の設備投資額を落ち込ませたという側面もあった。足元についても、資金繰り不安が緩和されてきている零細企業の動向も合わせて見なければならない。これらを捕捉している統計はなかなかないが、中小企業金融公庫のアンケートを見ると、前年度比はマイナスに違いはないが、かなり上方修正されてきていることがみてとれる。また、法人企業統計季報によると中小企業の設備投資水準は上期中に減価償却費の水準まで落ち込んでいる。今後さらに投資を減価償却費以下にまで絞り込み、業容を縮小させていくということが起こるのかどうか、また、キャッシュフローが改善している中、引き続き設備投資を落していくのかと考えると、なお慎重にみておく必要はあるにせよ、全体的には下げ止まりの気配をみせているのではないかとみている。
    今後は、毎月の資本財出荷や、リースに加え、機械受注や建築着工床面積などの先行指標を幅広く見て、設備投資動向を判断していく必要がある。また、資本効率を重視したリストラの推進、債務返済の圧力が重くのしかかる環境下、一方で合理化投資や更新投資がどの程度でてくるかがポイントとなるとみている。
    さらに、今後のポイントの1つとして、IT投資を挙げられるが、IT投資は、言葉ではブームとなっているが、統計として把握しきれていないのが実情である。米国では、投資の伸びの7〜8割はITが牽引している姿となっている。日本でも、個別企業を見ると、頑張っている所もあるが、全体像はなかなかつかめない。確かに企業内、企業間の情報化のニーズは高いようだが、経営効率化のためにやっているとすると、たとえば企業統合が進む中で、他の投資の効率化を図っていく動きも出てくる。そうしたことも踏まえたうえで、IT投資がどのような推移を辿っていくのかを注視していきたい。

(文責・経済政策グループ)


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