景気関連インフォメーション

2000年4月分


第160回 景気動向専門部会・議事概要( 4月 4日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 鉱工業生産指数(2000年2月分)について
    通産省 陣山・統計解析課長
  2. 生産は前月比3.0%増と2ヵ月連続で増加した。業種別では、輸送機械工業、一般機械工業、化学工業等の生産増が寄与した。品目別には、外需が好調な半導体製造装置、国内電力会社の需要増に対応した蒸気タービン部品、新製品投入効果のあったPHS・携帯電話の生産増が寄与した。出荷は同0.5%増と2ヵ月連続で増加した。電気機械工業では、PHS・携帯電話、ミッドレンジコンピュータが増加した他、石油・石炭製品工業、医薬品を除いた化学工業の出荷増が寄与した。在庫は同0.2%増と2ヵ月連続で増加した。小型・普通乗用車の船積み待ち在庫が増加した輸送機械工業、外需向けに油圧機器が在庫増となった一般機械工業、パルプ・紙・紙加工品での在庫増が寄与した。在庫率は同0.3%減と3ヵ月ぶりに減少した。
    生産予測調査によると、生産は3月前月比2.3%減、4月同0.0%の横ばいの見通しとなっている。3月の減少は一般機械工業、化学工業、鉄鋼業の減少による。なお、2月の実現率は0.3%の上方修正、3月の予測修正率は1.2%の上方修正となっている。
    生産は2月まで2ヵ月連続で増加した後、3月は減少し、4月は横ばいとなっているが、生産は緩やかな上昇傾向にあると見ている。ただし、2月の生産増には、閏年要因が含まれている点に注意が必要である。

  3. 最近の雇用動向について
    労働省 山田・労働経済課長
  4. 2月の失業率は4.9%となった。昨年の6、7月に失業率は4.9%を記録したが、季節調整指数変えにより、4.8%に下方修正されたので、2月の値が過去最高となる。男女別では、男性が5.1%、女性が4.5%となった。失業理由別では、失業者総数が前年比14万人増であるのに対し、非自発的離職者数が同19万人増となっている。男性失業者と非自発的離職者が増えるなど、中身的にも良くない数字となっている。
    一方、求人意欲は99年後半から改善しつつある。2月の雇用者数は前年比6万人減となり、下げ幅が縮小した。特に、昨年12月以降、卸・小売業、サービス業で改善が顕著である。また、2月の有効求人倍率は0.52倍と前月比横ばいだったが、新規求人数は前年比13.4%増と堅調に推移している。特に、電気機械業の求人増により、製造業が同16.7%増、情報サービスおよび介護保険の導入を控えた福祉サービス業の求人増により、サービス業が同22.2%増と、改善が顕著である。この他、2月の労働経済動向調査では、希望退職等の雇用調整を実施している事業所比率が99年1〜3月期をピークに減少してきているし、3月短観でも雇用の過剰感が着実に減少している。また、非自発的離職者は、四半期で見ると、98年10〜12月期前年比34万人増だったものが、99年10〜12月期には前年比増分がゼロと趨勢としては改善してきている。
    このように、他の様々な材料を見る限り、ここへきて急に雇用調整が活発化するとは考えにくい。したがって、単月の数値をもとに、雇用環境の基調が変わったと判断するのは早計であると考えている。今後については、新規学卒の動向が3月の労働力調査の結果をさらに悪化させる惧れがあるものの、雇用調整自体は改善基調にあるので、4月以降の雇用動向は、景気の回復に連動したものになると見ている。

  5. 3月短観について
    日本銀行 吉田・経済調査課シニアエコノミスト
  6. 本調査は約1万社を対象に実施、今回の回答率は95.3%と史上最高を記録した。事業計画の前提となる円ドルレートは、99年度下期が107.15円、2000年度通期が104.36円、2000年度下期が104.11円と、若干の円高進展が見込まれている。なお、回答の約70%が、GDP速報値発表後の3月中下旬に寄せられた。
    業況判断については、大企業は製造業、非製造業とも前回調査比で改善し、改善幅も前回予測並みとなった。先行きも緩やかな改善が見込まれている。中小企業は、建設業・卸売の悪化により、非製造業で前回調査比横ばいとなった。業況判断は、大企業の製造業・非製造業、中小企業の製造業・非製造業の全てにおいて4期連続で改善していたが、これが途切れた。ただし、先行きについては、中小企業の製造業、非製造業とも緩やかな改善が見込まれている。
    製商品需給判断は概ね改善している。製商品在庫判断はやや足踏みしているが基調としては改善傾向にある。製商品価格判断は、原油価格の上昇が影響し、前回調査比上昇したが、先行きはこの影響が一段落するとの見方から、下落している。
    売上計画については、大企業の製造業・非製造業、中小企業の製造業・非製造業、いずれも99年度は減収見込みとなっている。特に大企業の製造業は、円高の影響により輸出が前回調査比1.1%ポイント下方修正されたことが影響した。一方、99年度の収益計画については、大企業の製造業・非製造業、中小企業の製造業・非製造業のいずれの分野も、前回見通し比でやや下方修正されたものの、増益見込みとなっている。この結果99年度は全体としては減収増益となる。2000年度は大企業、中小企業とも増収増益となっている。大企業製造業では輸出も1.7%増が見込まれている。売上高経常利益率は、大企業製造業で2000年度3.95%となっているが、過去の経験則では、この数値が4%に接近すると、業況判断がプラスに転じ、設備投資が加速される傾向がある。
    99年度設備投資計画は、大企業が約1割の減少、中小企業が1〜2割程度の減少となっている。2000年度の大企業の計画は、製造業が4.9%増、非製造業が3.8%減、全産業で0.6%の微減となっている。製造業は90年度の6.3%増に次ぐ高い伸びとなっている。中小企業全産業の2000年度設備投資計画は6.8%減となっているが、これは市場関係者の事前予想(平均17%減)を大きく上回っている。中小企業は、年初の時点では確たる年間投資計画を持たず、実際に実施した投資を6月以降の短観調査で順次積み増して回答する傾向にある。そのため、中小企業の設備投資計画は調査のたびに上方修正されるが、逆に年初の調査結果は通常低目に出る傾向がある(この時点における中小企業の過去の設備投資計画の平均値は製造業で25.8%減、非製造業で21.1%減、全産業で21.7%減)。以上を考慮すると、中小企業の計画値は発射台としては高水準であり、過去のパターンがあてはまれば2000年度設備投資額の着地点がプラス圏内に落ち着くことが展望できる。
    製造設備判断は、過剰感が大きいが、大企業、中小企業とも改善傾向が続く。
    雇用人員判断は過剰感がなお高水準にあるが、改善傾向にある。雇用者数はリストラの影響もあり、大企業、中小企業とも減少傾向にある。
    企業金融面では、資金繰り判断、金融機関の貸出態度判断とも足元改善が続いている。先行きについては、常に悲観バイアスがかかるのでマイナスとなっている。中小企業の手元流動性が高まっている。剰余金から負債を返済し、設備投資を実施しても、なお、キャッシュが余っているという状況である。
    金融機関の設備投資計画は、大手都市銀行の合併を控えたシステム関連投資増等を背景に、2000年度34%増の高い伸びとなっている。なお、今回の調査は有形固定資産の増分をとったものであるので、ソフトも含めた投資増については6、12月調査の機械化投資額調査でその状況が明らかになると期待している。
    総括すると、企業マインドは緩やかに改善しているが、中小企業の改善はやや遅れ気味である。おそらく、構造調整が不可避な中で企業の二極化が進んでいることが影響しているものと思う。こうした中で、

    1. 中小企業の設備投資の立ち上がりが比較的早い点をどう考えるか、
    2. 今後の設備投資の持続性や裾野の広がりをどの程度期待できるか、
    といった点ついて、今後考えてみたいと思っている。


(文責・経団連 経済本部)


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