景気関連インフォメーション

2000年6月分


第162回 景気動向専門部会・議事概要( 6月13日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 景気動向指数、機械受注統計について
    経済企画庁 妹尾・景気統計調査課長
    1. 景気動向指数(2000年4月速報分)
    2. 4月の先行指数は28.6%と14ヶ月ぶりで50%を下回った。一致指数は62.5%と12ヶ月連続で50%を上回った。遅行指数は30ヵ月連続で50%を下回った後、50%となった。
      生産指数が緩やかな上昇傾向にあり、雇用関連指標も、きびしい状況にあるものの改善の兆しが見られることなどから、一致指数は引き続き強めに出ている。しかし、百貨店販売額、商業販売額指数(卸売業)については、傾向的には持ち直しの兆しが見られるものの、前年比では減少しており、DI上もマイナスとなっているなど、消費関連指標は総じて低調である。なお、一致指数が長期間にわたり、50%を上回っているので、来週に戦後12番目の景気循環の谷を、暫定的に設定する予定である。
      先行指数が50%を下回ったのは、建築着工床面積(商、鉱工業、サービス)、新設住宅着工床面積、新車新規登録・届出台数(乗用車)の3系列において、比較対象である1月の実績値が、特殊要因で上方に跳ね上がったためである。その結果、4月のDIが3系列ともマイナスとなった。1月の建築着工床面積(商、鉱工業、サービス)は、大規模小売店舗立地法の6月の施行を睨んだ一連の大型案件により、急増した。1月の新設住宅着工床面積は、住宅金融公庫の個人向け融資の応募が集中したため増加した。1月の新車新規登録・届出台数は、昨年10月に投入された新型車の登録増で増加した。この他、米国・アジアでの株価下落を受けた損失補填のため、一次産品業者が、銅・アルミニウム等の在庫を市場に放出したため、非鉄金属の価格が急落し、日経商品指数(17種)が、久方ぶりにマイナスとなった。
      以上のように、4月の先行指数の下落は、特殊要因によるところが大きい。しかし、実質機械受注(船舶・電力を除く民需)、建築着工床面積(商、鉱工業、サービス)、新車新規登録・届出台数等、足下あまり強い動きを示していない指標がある。先行指数が、果たして下降基調にあるのかどうかについては、これら動きの鈍い指標の5月、6月のデータを見て判断していきたい。
      遅行指数では、国内銀行貸出約定平均金利のように政策的要因の影響を受けているものがあるほか、構造的要因も絡み、遅行系列の動きは鈍くなっている。経験則によると、遅行指数は景気の谷から平均して11ヵ月後に50%を上回るが、今回は50%を下回っている期間が長いことが懸念される。

    3. 機械受注(2000年4月分)
    4. 機械受注(船舶・電力除く民需)は、4ヵ月連続で前月比減となった。これは、統計上比較可能な1987年4月までさかのぼって見ても、初めての出来事である。ただし、1月の前月比0.3%減、2月の同0.5%減、4月の同1.1%減という下げ幅は、それぞれごく小さい。機械受注統計の伸び率は大きく振れる傾向があることを考えると、このような小さい下げ幅は、ほぼ横ばいに等しいというのが実感である。また、前年比を見ると、4月は二桁の伸びを示している。機械受注(船舶・電力除く民需)は、小休止している感じもするが、実質的には横ばいで推移しているので、持ち直しの動きが続いていると判断している。
      業種別に見ると、製造業の機械受注の持ち直しは早かったが、今年に入り、非製造業が追いつき、足下は似たような動きを示している。製造業では、一般機械の機械受注が上向いているが、素材型製造業は、依然として横ばいで推移している。電気機械の回復だけが全体を引っ張っているという状況に変りはない。一方、非製造業では、通信業が総じて強く、金融・保険も上向きつつある。また、大きく下方に引っ張る業種もない。

  2. 法人企業統計季報、大蔵省景気予測調査について
    大蔵省 稲垣・調査企画課政策調整室長
    1. 法人企業統計調査(2000年1〜3月)
      1. 概観
        2000年1〜3月期は、2期連続の増収増益となった。設備投資も前年比3.3%増となり、9期ぶりに増加した。今後、回復の持続性と業種間の広がりに、注目していく必要がある。

      2. 売上
        売上高は、全産業で前年比2.6%増となり、2期連続で増収となった。製造業は同7.4%増、非製造業は同0.7%増となった。製造業は3期連続、非製造業は2期連続の増収となった。
        製造業では、電気機械が同13.2%増、一般機械が同9.0%増と堅調である。
        非製造業では、卸・小売業が、同1.3%増となった。伸び率こそ低いが、全体の伸びに対する寄与度は大きい。一部の専門店、自動車ディーラーが好調に推移した。移動体通信の伸長と、景気回復に伴う陸運の増収が寄与し、運輸・通信業も、前年比9.8%の増収となった。一方、建設業は、官公需の減少や過去の受注減が影響し、同4.4%減となった。サービス業は、リースが増収となったが、映画・娯楽は減収となり、同2.7%減となった。
        資本金別では、大企業、中小企業が増収となったが中堅企業は減収となった。

      3. 経常利益
        経常利益は、全産業で前年比38.7%増となり、5期連続の増益となった。売上の増加と、合理化・リストラ効果によるコスト削減が寄与した。
        製造業は同46.5%増となった。化学は減益となったが、電気機械は売上増が寄与し、同59.4%増となった。鉄鋼は、前年が赤字だったが、売上増とコスト削減が寄与し黒字に転じた。
        非製造業は、34.5%増の増益となった。運輸・通信は、特殊要因から、同38.7%減となった。サービス、建設は、コスト削減が寄与し減収ながら増益となった。
        資本金別では、大企業、中堅企業が5期連続増益、中小企業が4期連続増益となった。

      4. 設備投資
        設備投資は、全産業で前年比3.3%増と、9期ぶりに増加した。
        製造業は、同6.1%減となった。堅調な液晶・半導体関連の設備投資を受け、電気機械が同18.9%増と3期連続で増加した。
        非製造業は、同7.7%増となった。運輸・通信は、携帯電話関係の大型案件が一巡し、好調な陸運も投資は抑制基調にあったため同16.5%減となった。電気業は投資抑制基調にあり、同7.1%減となった。一方、サービス業は、旅館サービス、パチンコなどの娯楽サービスでの増加等が寄与し、同32.2%の大幅増となった。卸・小売業は、本年6月の大規模小売店舗立地法施行を控えた小売の出店の前倒し等により、同31.2%の大幅増となった。
        資本金別では、大企業は8期ぶりに、中小企業は2期連続で増加したが、中堅企業は9期連続で減少した。

    2. 大蔵省景気予測調査(2000年5月分)について
      1. 景気の現状判断と、売上・収益の見通し
        2000年4〜6月期の景気の現状判断は、大企業で「上昇超」幅が縮小したものの、「上昇超」は3期連続で続いている。中堅企業、中小企業は前回に続き「下降超」となったが「下降超幅」は縮小した。売上高は、2000年度上期、下期を通じて着実な増収計画となっている。経常損益は、2000年度上期、下期を通じて2桁の増益見込みとなっている。従業員判断指数の現状判断は、「過剰気味」超となっているが、前回調査比では「過剰気味」超幅が小さくなっている。

      2. 中小企業の2000年度設備投資計画
        土地購入費を含む設備投資額が、製造業は前回、減少の計画であったのが、今回計画では2桁増と、大幅な上方修正となった。設備判断指数も、2000年3月末には「過大」超であったが、6月末時点では「不足」超に転じている。
        ただし、在庫判断、販売価格判断等は強くないので、足元の設備投資の強さも、先行きの需要が強いと見込んだというよりも、設備投資抑制が続いた後の設備の不足感からきたものに過ぎないのかもしれない。

  3. 鉱工業生産指数(2000年4月速報分)について
    通産省 陣山・統計解析課長
  4. 生産は前月比0.4%減、出荷は同0.3%減、在庫は同0.0%の横ばいとなった。在庫率は同0.2%増となった。
    生産の減少には、電気機械工業、化学工業、その他鉱業の生産減が寄与した。品目別では、PHS・携帯電話、パソコン、電子応用玩具の生産の減少が寄与した。ただ、減少といっても、あくまで高い水準においてのものであり、減少の原因も、今年初めに生産が急増したことに対する反動減、新製品投入前の端境期における生産減にあり、懸念すべきものではない。
    一方、生産が増加した業種は、一般機械工業、輸送機械工業、鉄鋼業である。一般機械工業のうち、半導体製造装置は依然として堅調で、国内向け及び台湾・韓国向けを中心とした輸出が好調である。
    出荷の減少には、その他工業の出荷減が寄与した。特に、電子応用玩具の出荷が減少した。一方、輸送機械工業の出荷は増加した。北米向けに船積み待ちになっていた普通乗用車の出荷が増加したためである。
    製造工業予測調査によると、5月の生産は前月比0.4%増、6月は同0.5%増となっている。5月は、情報通信関係の新製品を中心に、電気機械工業の生産が増加する見込みである。6月は、一般機械工業、乗用車を中心とした輸送機械工業が増加する見込みである。4月の実現率は0.1%ポイント下方修正され、5月の予測修正率は0.1%ポイント上方修正された。
    4月の生産は、前月比で減少したが、2000年1〜3月期の水準を上回っており、5月、6月の予測も増加の見通しとなっているので、前月に引き続き、判断としては、緩やかな上昇傾向にあるとしている。

  5. 最近の雇用動向について
    労働省 山田・労働経済課長
    1. 最近の動向
    2. 4月の失業率は4.8%と、3月の4.9%から下落した。4月の有効求人倍率も0.56倍と、3月の0.53倍から上昇した。基本的な指標は良い方向に向かって動いている。
      失業の中身を見ると、非自発的離職者は、2月にかなり増加したが、3月、4月は、前年に比べて減少した。非自発的離職者の増加が今回の不況の特徴であったが、この動きも沈静化しつつある。
      有効求人倍率の上昇には、新規求人の増加が寄与している。新規求人数は、3四半期連続で増加しており、しかも上昇幅が拡大している。特に、情報、福祉サービス等のサービス業において増加が顕著であるほか、製造業でもかなりの増加を示している。
      所定外労働時間は前年比で2桁の増加が続いている。
      悪い指標としては、雇用者数が前年に比べて減少している点がある。特に、製造業では、4月が前年差31万人減と、下げ幅が大きい。求人意欲は強くなってきているが、雇用は足踏み状態にある。

    3. 今後の見通し
    4. 今年の3月、4月に、学卒と定年退職者の失業者が大量に増えるのではないかと心配していたが、結果的には、失業率はさほど上昇しなかった。危機を乗り切り、やっと峠を越えたというのが実感である。ただし、2月の失業率が4.9%になったように、労働力調査は予測のつかない動き方をする。したがって、今後の動きについても予断は許さない。
      労働経済動向調査によると、雇用調整実施事業所の割合が減少の方向にある。また、来春、学卒採用を増やす予定の企業は、減らす予定の事業所数を上回っており、雇用需要が学卒まで広がってきている。このように、明るい動きも見受けられ、雇用の動きにも、景気の回復が反映されてきた。
      労務行政研究所の今年夏のボーナスの調査によると、一人当たりの支給額は前年比0.1%減という予測結果になっている。増益にも関わらず、ボーナスは増加するまでに至っていないが、昨年までの大幅なボーナスの減少も下げ止まりの方向に向かいつつある。


(文責・経団連 経済本部)


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