景気関連インフォメーション

1996年7月分


  1. 民間研究機関の経済見通し
  2. 96年1〜3月期のGDP統計速報が発表された後、民間研究機関は経済見通しを相次いで発表しておりますので、ポイントを紹介致します。

    (年度)
    実質GDP個人消費設備投資円相場
    9697969796979697
    長銀総研  (6月26日)2.82.43.42.45.76.5105.9102.0
    住生総研  (6月26日)2.6
    3.1
    6.3
    106.8106.8
    日興リサーチ(6月28日)2.41.52.81.85.42.1109.0107.0
    三菱総研  (6月25日)2.11.42.11.35.62.7104.497.7
    野村総研  (6月26日)1.80.72.71.95.23.4108.0110.0
    日経センター(6月25日)1.40.72.51.85.95.8106.9106.9
    *日経センターの97は暦年。

  3. 第119回景気動向専門部会の概要(7月1日開催)
    1. 安原経済企画庁課長
      〜景気動向指数(4月分速報)〜
    2. 一致指数は3月に36.4%と半年ぶりに50%を割ったが、4月も25.0%と引き続き50%割れとなり、やや弱い動きとなっている。3月、4月の50%割れの要因は、生産指数(鉱工業)、原材料消費指数(製造業)、大口電力使用量、稼働率指数(製造業)といった生産に対する連動性の高い指数が3月に大幅な落ち込みとなり、4月も比較月である1月に比べてやや低くなったことである。ただ、4、5月の生産関連の指標は前月比でみれば増加しており、これまでの回復傾向が逆転したというわけではない。

      先行指数は、3月に8ヵ月ぶりに50%割れとなったが、4月は実質機械受注(船舶・電力を除く民需)がプラスとなったことなどから再び50%を上回った。

      以上のことから、一致系列の50%割れはそれほど懸念するものではなく、景気動向指数の基調的な動きは、景気に回復の動きが続いていることを示していると考えている。

    3. 高橋通産省課長
      〜鉱工業生産速報(5月分)〜
    4. 5月の生産指数は97.8まで回復している。前月比は2.0%増と2ヵ月連続のプラスとなった。前月比2.0%の伸びは、4月の3.2%を除くと平成6年11月以来の大幅な上昇幅である。また、2%以上の上昇が2ヵ月連続したのは、昭和44年9、10月以来である。しかしながら、生産が加速度的に回復しているわけではない。3月の6.0%減の大幅減の反動とみている。生産増に寄与した業種は、第一に輸送機械工業、第二に金属製品工業、第三に化学工業(除く医薬品)であった。

      出荷指数は99.0まで回復し、前月比、前年同月比ともにプラスとなった。

      在庫指数は109.9、在庫率指数は116.2と引き続き高い水準で推移している。

      6月の生産は前月比1.8%減と予想されている。前月における6月予測は4.2%減であり上方修正されているようにみえるが、これは5月が下方修正されたことによるものである。7月の予測は前月比1.9%増とプラスとなっている。

      6月のマイナスの主な原因は、輸送機械工業の落ち込みである。これは6月の稼働日が少ない(2営業日)ことが影響である。但し、新製品の発売に伴い休日出勤するとの情報もあり、上方修正されるのではないかと期待している。7月は輸送機械工業がプラスとなることなどから大幅プラスを予測している。

      実現率は3ヵ月連続のマイナスであり、電気機械関連で一部の部品が下方修正となったことの影響が大きい。予測修正率はプラスが続いており、6月は0.1%減とほぼ横ばいであり、総じて緩やかな上昇が続いている。

      全体の総括的評価としては、生産は7月も4ヵ月連続で緩やかながら上昇傾向との表現になっている。経済企画庁が公表したQEでも大幅プラスであり、平成8年度の設備投資計画は通産省の調査結果でも良い数字が出ている。生産にも明るい数字を期待していたが、緩やかな回復という表現にとどまる結果であった。

      生産指数は、平成5年10月の98.2を底に、平成8年2月の98.8がピークをつけたが、5月はこの水準を超えなかった。先行きについても、6月に落ち込んだ後、7月に回復するとの見通しであるが、7月も5月と同程度の水準にとどまるだろう。公共工事の下支え効果があるものの、力強い回復には至っていないと認識している。

    5. 藤井大蔵省企画官
      〜平成8年1〜3月期 法人企業統計〜
    6. 平成8年1〜3月期の売上高、経常利益は増収、増益傾向にある。設備投資についても前年同期比7.5%増と4〜6月期以降伸びを高めており、緩やかな回復傾向を示している。

      平成8年1〜3月期の売上高では、全産業において平成6年1〜3月期以来9期連続、製造業は8期連続、非製造業は9期連続のプラスとなった。業種別にみると輸送用機械を除く全産業でプラスとなった。中でも、非製造業の建設業の売上高が公共投資、住宅関連投資の増加を背景に2ケタの伸びを示している。不動産業、サービス業でも10%を超える伸びとなっている。

      経常利益については、売上増、人件費抑制などの合理化要因、金融収支の改善等を背景に全産業で25.4%増と7期連続のプラスとなった。業種別では、食料品、石油・石炭等がマイナスとなったものの、鉄鋼等は増益への転換がはっきりしてきた。非製造業では、平成7年4〜6月期以降3期連続の増益であり、建設、不動産業に改善がみられる。また規模別にみて、資本金1千万〜1億の企業でも3期連続の改善となっている。売上高経常利益率の推移にも改善傾向が現れている。

      設備投資は全産業で前年同期比7.5%増の伸びを示しており、回復に広がりがみられる。製造業では電機を中心に10%程度伸びている。非製造業ではサービス業(自動車サービス中心に増加)の増加が顕著である。製造業と非製造業をあわせた設備投資の増加が広がってきている。

    7. 門間日銀調査役
    8. 経済指標全般を踏まえて最近の経済情勢について述べたい。日銀では情勢判断のない月は金融経済概観を発表しているが、今回は「設備投資は徐々に回復の広がりがみられる」との一文を入れた。景気全般の判断については、引き続き緩やかな回復との見方であるが、設備投資については、一歩踏み込んだ表現となっている。

      日銀短観では、主要企業の平成8年度の設備投資計画は前年比6.0%増と高い伸び(平成7年度は1.2%増)となっている。製造業、大企業では、平成8年度は6.7%増と伸びがやや鈍化(平成7年度7.8%増)するが、非製造業では、5.7%増とプラスに転じている(平成7年度1.6%減)。大企業、製造業中心の回復から非製造業へと広がりがみられている。中小企業は全産業で10.8%減と、昨年5月の短観の18.1%減と比較してマイナス幅が縮小しており、回復の兆しが見えはじめている。設備投資の回復については、法人企業、GDP統計などに表れている。1〜3月期のGDPは、うるう年要因や公共投資が1〜3月に集中したことなどから高い伸びとなったが、設備投資が着実に増加していることは景気の先行きを判断する一つの好材料であると思う。設備投資回復の要因は次の5点である。

      1. 第1に各種ストック調整の進展である。特に先行指標として機械受注だけでなく、建設着工床面積が今年に入って増加傾向が明らかになっている。
      2. 第2にリストラ一辺倒であった大企業の経営が終局しつつあり、リストラによって捻出した利益を、例えば販売管理費を増やすなど、前向きの経営に変わりつつある。こうした事が非製造業の需要喚起、中小企業の販売環境の好転につながり、景気全般の明るさに結びついているのではないかと思う。
      3. 第3に情報通信関連など成長産業での設備投資が高く伸びている。郵政省の調査では移動体通信等を中心に情報関連の設備投資が平成8年度も伸びる見通しとなっている。
      4. 第4に、財政金融政策の効果があげられる。非製造業、中小企業の金利負担の軽減を通じて金融政策の効果が現れている。また、公共投資の増加に伴い、建設関連が下支えられている。
      5. 第5に、規制緩和の効果として通信業、小売業界の設備投資が増加している。

      今後は設備投資が今年度後半の公共投資の減少、消費税引き上げといった逆風を乗り越えて景気を自律的な回復につなげていく力があるかどうかが重要なポイントである。ただし、これは不確実である。生産、雇用等の指標は今一つ強さに欠け、個人消費についても、昨年に比べると好転しているが、1〜3月期にかなり伸びた後、4〜6月期は増加テンポが鈍化している。個人消費は雇用環境が改善しないと持続的回復にはつながらないだろう。来年度の新卒採用がプラスとなる、今年度のボーナスの伸びがいいなど、明るい材料もあるが、個人消費の動向は中小企業も含めた雇用状況に左右され、中小企業を含めた賃金の伸び、あるいは雇用環境の改善が今年度下期から来年度にかけてどうかが重要なポイントとなろう。生産については、設備投資などの最終需要項目に比べてあまり良くないが、これは在庫調整を進めていることが背景にある。業界ヒアリングの結果、例えば鉄鋼、紙パ、電機業界のIC分野などでは在庫が積み上がっており、この在庫調整が一巡し、生産の伸びが最終需要に追いついてくれば自律回復への展望がはっきりしてこよう。

      総括すると、設備投資を中心に自律回復の芽が出てきているが、生産、所得面の指標は依然弱く、今後の最終需要及び生産、所得面での回復の強さが注目される。

    9. 鳥生労働省課長
    10. 労働統計調査によると、5月の就業者数は4万人増となった。5月の雇用者は45万人増と増加幅が縮小している。完全失業率は3.5%と過去最高の水準を記録した。

      雇用の内訳については、製造業では2、3月にややプラス、4月に減少した後、5月は12万人増となった。卸売・小売業、飲食店は25万人の減少、建設業もやや減少した。

      企業規模別にみると、大企業(1000人以上)では14万人増であるが、中小企業では増加していない。

      完全失業率については、15〜24歳の若年層で前年差1.4%増加の7.1%と依然として高水準が続いている。

      求職者数については、新たに求職活動を開始した人が13万人程度増加している。最近の傾向であるが、非自発的離職者が5月は9万人増と増加幅が拡大しており、自発的離職者、学卒未就職者に加えて失業者が増加する原因となった。35〜54歳で非自発的離職者が4万人増となっており、一時的な動きかどうか今後の動向に注視する必要がある。

      有効求人倍率は5月は0.69倍と4月(0.67倍)に比べて上昇した。新規求人は殆どの主要産業で増加していることが背景にある。

      雇用保険の受給資格決定件数は離職、求職者をみる指標であるが、増加幅は減少している。給付制限なしは非自発的離職の指標であるが、前年と比較して減少している。電機や輸送機械では事業主都合の離職者が増加している。

      全体として、景気回復の中で労働市場への参入増、雇用者増、求人の増加など明るい面もみられるが、完全失業率は高水準にあり、雇用情勢は依然として厳しい。非自発的離職者の増加などについては今後、注意を要する。

    〔文責 経済本部経済政策G 小川〕

(8月はお休みとさせて頂きます。次回は9月上旬の予定です。)
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