景気関連インフォメーション

1996年11月分


第122回景気動向専門部会・議事概要(11月1日開催)

  1. 高橋・通商産業省統計解析課長
    〜最近の生産動向〜
  2.  9月の鉱工業生産指数(季調済)は、8月時点の予測値(前月比0.9%増)から上方修正され前月比1.0%増、前年比3.4%増となった。製品在庫は前月比1.0%減と減少し、前年比は0.3%増と18ヵ月連続で上昇となっているものの1%未満の伸びに止まった。製品在庫率は前月比0.9%減、前年比1.2%減と改善した。四半期の生産動向は、4〜6月期に弱含んだものの7〜9月期は前期比1.5%増、前年比3.4%増とプラスに転じている。製品在庫、製品在庫率ともに、前期比の伸びは2期連続で減少しており、製品在庫率は前年比も5期ぶりに減少となるなど、在庫調整の進展を示している。在庫循環図上の調整局面から積み増し局面となり、改善を示している。
     生産に対するプラス寄与は、第1に輸送機械工業(前月比5.7%増)、第2に窯業・土石製品工業(同2.0%増)、第3に一般機械工業(同0.9%増)となっている。輸送機械工業では、普通乗用車(前月比16.9%増)、小型乗用車が堅調な伸びを示しており、9月の新車登録台数が良かったこと、輸出が持ち直しつつあることなどから、2ヵ月連続で生産全体を牽引するような形になっている。窯業・土石製品工業では、セメント、板ガラスなど、一般機械工業では、印刷機械などが好調である。
     10月の生産予測調査は、前月比4.0%増に上方修正されている(前月調査の予測値は3.2%増)。情報通信関連が好調な電気機械工業(前月比8.0%増)、自動車関連が好調な輸送機械工業(同8.4%増)と生産全体を引っ張っている。鉄鋼業も在庫調整の進展に伴い10、11月ともに前月比プラスの予想となっている。11月は、2ヵ月連続のプラスの反動から製造工業全体で前月比1.9%減(電気機械工業が同4.7%減、輸送機械工業が同6.0%減)と予想されている。
     以上から、鉱工業生産指数の評価としては、8月までは在庫水準が高いという懸念を示してきたが、今回は「総じてみれば、生産は緩やかながら上昇傾向で推移している」としている。ただ、過去の力強い回復局面と比べると、9、10月と足元ではプラスの伸びとなっているものの11月にはマイナスが予想されるなど、緩やかながらの回復の域を出ない状況が続いており、先行きは依然として慎重にみる必要があると考えている。
     なお、半導体集積回路については、鉱工業出荷指数の上昇寄与の2番目の品目であるが、出荷は前月比で9ヵ月ぶり、生産は前月比で8ヵ月ぶりにプラスに転じており、一部品目の市況下げ止まりを反映した結果となっている。

  3. 門間・日本銀行経済調査課調査役
    〜最近の経済金融情勢〜
  4.  個人消費に基調的にぎくしゃくした動きとなっている。8月の家計調査では7月の大幅マイナスの反動もあり、前月比5.1%増と上昇した。9月の百貨店売上高は秋物衣料の好調から、全国で前年比2.0%増、都内で同4.0%増となった。9月の乗用車新車登録台数は前年比8.8%増と大きな伸びを示し、10月も依然好調のようである。個人消費は一進一退の状況にあるが、緩やかな上昇トレンドにあるといえよう。
     9月の新設住宅着工戸数は 169万戸(年率、季調済)、前月比9.3%増と大幅な伸びとなった。これには、消費税引き上げ前のかけこみ需要という要因だけでなく、住宅金融公庫の金利引き下げなど低金利が下支えとなっている。9月以降かけこみ需要の反動が懸念されていたが、年度内は堅調な動きとなろう。
    公共工事請負金額は、95年9月の経済対策によって96年1〜3月期に前年比46%増と大幅な伸びとなった後、4〜6月期が同2.0%減、7〜9月期が同1.9%減と2期連続でマイナスとなっている。今年後半から来年にかけて、公共工事は頭打ちから減少に転じると予想される。ただ、先週の日銀支店長会議では、北海道のように公共工事への依存度の高いところは、下期の景気を懸念するとのことであったが、他の地域では概ね公共工事の減少が直ちに景気の足を引っ張る状況にはないという意見が多かった。
     輸出入に関しては、実質輸出は96年1〜3月期に前期比3.4%減となった後、4〜6月期が同0.4%増、7〜9月期が同1.6%増と2期連続のプラスとなり、ぎくしゃくした動きの中で、やや上向きの兆しがみられている。実質輸入は95年に比べて伸び率が鈍化しつつある。ただ、8月の短観では、企業の海外設備投資の増加、海外生産比率の高まり(95年度の20.7%から96年度は22.2%)などから、96年度は海外生産シフトが続き、これに伴う逆輸入の動きが当面続く可能性がある。輸入が増加するというトレンドに変化はないが、伸びは鈍化しつつあり、純輸出の国内経済へのネガティブなインパクトはおさまりつつあるといえる。
     機械受注は、7〜9月期の見通しは前期比8.2%減、前年比11.0%増となっている。製造業が同9.4%減、非製造業が同7.3%減であるが、非製造業については、4〜6月期に前期比23.0%増と大きく伸びた後も7、8月ならしてプラスとなっており、通信関連の受注が伸びていることから見通しよりも改善する可能性が高いと思う。製造業は、4〜6月期に続いて7〜9月期もマイナスが予想され、半導体関連の減額修正から回復のテンポが鈍っている。9月の建築着工床面積は、民間、非居住用が前月比1.6%減であるが、前年比は10.8%増とプラスであり、持ち直しつつあると判断している。
     先行きに関しては、公共投資は今後減少し、住宅投資は減少しないもののこれ以上増加する状況にはない。こうした中で純輸出は、輸出がやや上向く、輸入の伸びが鈍化するという形で、景気の足を引っ張る度合いは低下しよう。政策的な需要、低金利に敏感なセクター、外性的な需要を全体でみると、概ね景気にニュートラルであろう。設備投資は堅調であるが、個人消費は月毎のふれが大きく判断が難しい。雇用環境はやや改善しつつある。特に、一人当たり名目賃金のうち、特別給与は6、7月と低迷していたが8月は前年比21.5%増と大幅な伸びを示し、7〜9月期では、前年比1.2%増と4年ぶりの高い伸びとなった。
     今後は、生産への波及効果も含めて自動車の販売動向が注目される。これが好調なようであれば、消費者、経営者のマインド面での影響も含めて、下期は楽観できると思う。こうした指標を注視していく必要があると考えている。

  5. 鳥生・労働省労働経済課長
  6.  7〜9月期の就業者は前年差45万人増、雇用者は同62万人増と労働需要は堅調に推移している。製造業の雇用者はこれまで減少傾向が続いていたが、ここにきて減少幅が縮小している。
     7〜9月期の失業者は11万人増と増加幅が縮小してきているが、9月の完全失業率は3.3%と2ヵ月低下した後横ばいとなっている。また、9月の非自発的離職者は依然として5万人増であり、懸念材料である。特に55〜64歳の男子の失業者が多い。
     新規求人は7〜9月期が前年比16.0%増、前期比4.9%増と増加基調にあり、産業別でみても各産業で増加している。新規求職も7〜9月期は前期比4.0%増であるが、在職者の求職が増えていることなどから求人倍率の改善は緩やかなものとなっている。
     雇用保険需給資格決定件数は落ちついた動きとなっており、雇用調整が一段落してきたと思われる。大企業を中心とした雇用過剰感は高いことから、依然厳しい状況にあるが、雇用状況の改善基調に変わりはないと考えている。

〔文責 経済本部経済政策G 小川〕


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