景気関連インフォメーション

1996年12月分


第123回景気動向専門部会・議事概要(12月3日開催)

  1. 安原経済企画庁景気統計課長
    1.  8月の景気動向指数は先行系列が5ヵ月ぶり、一致系列が3ヵ月ぶりに50%割れとなったが、9月はいずれも再び50%を上回り、景気回復が続いていることを示した。9月の新車投入に向けたライン切替えによる自動車販売の落ち込み、新製品投入に伴うパソコンの売上低迷等の一時的要因及び半導体の生産調整などから、8月の鉱工業生産指数は前月比2.3%減となった。これを受けて生産関連の指標(原材料消費指数(製造業)、大口電力使用量、稼働率指数(製造業))がマイナスとなり、8月の一致系列が50%を下回ることとなった。ただ、9月は自動車販売の好調などから鉱工業生産指数が前月比1.5%増とプラスとなり、大口電力使用量を除いて生産関連指標がプラスに転じたことから50%を越える結果となった。
       先行系列では、8月は在庫関連の指標である最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、原材料在庫率指数(製造業、逆サイクル)及び新規求人数(除学卒)、新設住宅着工床面積が一時的にマイナスとなったが、9月はいずれもプラスに転じた。
       10月の景気動向指数は既に公表されている指標だけで先行、一致ともに50%を上回ることは確実であり、11月の月例経済報告で景気判断を半歩進めたが、こうした景気回復の動きが景気動向指数にも表れている。

    2.  9月の機械受注総額は前月比6.5%増(季調済)となった。外需が、8月の24.1%減の反動もあって9月に28.9%増と大幅に上昇したことが第1の要因である。官公需は16.3%増であり、下期に息切れが懸念されていたが、機械受注統計上は増加となっている。
       設備投資の先行指標である民需(船舶・電力を除く)は、9月は前月比10.2%減と2ヵ月連続の減少となったが、前年同月比では3.6%増と12ヵ月連続のプラスとなっている。製造業、非製造業別とも前月比マイナスであるが、特に製造業で14.0%減と大幅な減少となった。
       7〜9月期の受注総額は前期比2.8%増と5期連続の増加となった。内訳をみると外需が30.4%増と大幅な増加となっている。一方、民需(船舶・電力を除く)は4〜6月期が10.8%増と高い伸びを示したこともあり、6.7%減と減少している。製造業は2期連続の減少とやや頭打ち、非製造業は4〜6月期に高い伸びを示した反動で若干のマイナスとなった。民需総額(船舶・電力を除く)、製造業、非製造業のいずれも前年同期比ではプラスとなっている。
       民需の業種別機械受注は自動車工業が非常に堅調である一方、電気機械は半導体製造装置の減少から7〜9月期はマイナスとなっている。非製造業では、通信業が4〜6月期に高い伸びを示した後、7〜9月期もプラスであるが、金融・保険業、卸・小売業は7〜9月期にマイナスとなり、やや頭打ちの懸念が生じている。
       10〜12月期の見通しでは、受注総額は引き続き前期比6.7%増とプラスが見込まれている。民需(船舶・電力除く)は7〜9月期は6.7%減であったが、10〜12月期は19.3%増、非製造業も17.7%増と高い伸びが見込まれる。官公需は9.7%増と依然としてプラスとなっており、外需も2.7%増と7〜9月期に大幅に増加したにもかかわらず、プラスの伸びが見込まれている。

  2. 鳥生労働省労働経済課長
    1.  10月の完全失業率は3.4%と9月の3.3%から0.1%悪化した。5、6月に3.5%となった後低下傾向にあったが、若干上昇する結果となった。10月の有効求人倍率は 0.73と8、9月の 0.71から改善した。
       10月の雇用者数は製造業で前年差2万人減となったことなどから、前年に比べ33万人増と増加幅がやや縮小した。就業者は49万人増であった。失業者は13万人増であり、特に15〜24歳の女子労働者の失業者が、自発的離職者が6万人増となったことなどから前年比1.6%増と増加した。
       求人状況は堅調に推移している。10月の新規求人は前年比22.6%増と増加しており、全産業でかなりの増加を示している。一方、新規求職も10月は4.4%増とプラスになったことから、求人倍率の上昇は緩やかなものにとどまっている。
       10月の雇用保険需給資格決定件数は前年比5.9%増となり、自発的離職者が増加していることを示した。そのうち給付制限なしは非自発的離職者を示すが、10月は0.5%増と落ちついた動きとなっている。

    2.  11月の労働経済動向調査について、常用労働者の過不足事業所割合の推移をみると、過剰とする事業所の割合が不足とする割合をこれまで上回っていたが、製造業では「不足−過剰」が0となった。大企業の製造業中心に過剰感は依然高いものの、日銀短観と同様に過剰感は改善しつつある。雇用調整実施事業所の割合については、回復期に入って足踏みをした時期もあったが、その後低下してきている。製造業では円高不況期を下回る水準まで低下している。
       最近の雇用情勢は新たな求職者、自発的離職者の増加などから完全失業率は3.4%と依然高く、厳しい状況が続いているが、景気の動向を反映して求人の増加、求人倍率の上昇、雇用調整が一段落しつつあるなど、明るい材料もあり、改善に向かうことが期待される。

  3. 高橋通産省統計解析課長
    1.  10月の鉱工業生産指数は101.1と4年11ヵ月ぶりに100を上回った。前月比伸び率3.5%増であり、10月の予測(4.0%増)から下方修正されたようにみえるが、これは9月の確報が0.5%上方修正されたためである。
       10月の生産者製品在庫は前月比0.6%増と2ヵ月ぶりにプラスに転じた。在庫は減少方向にあったが、品目別にみると調整を続けているものと耐久消費財を中心に積極的に積み増しているものとがありプラスの伸びとなった。前年比は0.2%減と19ヵ月ぶりにマイナスに転じた。生産者製品在庫率は前月比、前年比とも2ヵ月連続のマイナスとなり、111.5 まで低下した。在庫の動向については、11、12月の状況を踏まえて評価したい。
       生産の伸びの第1寄与は電気機械工業である。固定局通信装置、車両用通信装置、符号転換装置など通信関連の好調な設備投資を反映した結果となっている。第2寄与は輸送機械工業である。乗用車関連(軽自動車を除く)が内・外需ともに好調である。第3寄与は一般機械工業である。10月の伸びは通信関連が3割強、乗用車関連(部品等を含む)が2割強の寄与であった。半導体集積回路の生産は2ヵ月連続で前月比プラスとなっている。

    2.  予測調査では、11月は前月比1.7%減に上方修正、12月は同0.2%減とほぼ横ばいを見込んでいる。業種別では、電気機械工業、輸送機械工業が水準自体は低くないものの、9、10月の反動から11月は前月比で大幅なマイナスとなっている。12月は各業種が横ばいの中で鉄鋼業が2.1%減と低下に大きく寄与している。鉄鋼業では9月に在庫調整終了のめどがたったと聞いており、10月には15ヵ月ぶりに生産の前年同月比がプラスに転じたところであるが、需要に見合った生産ということから12月は前月比マイナスとなっている。
       全体の評価は「生産は緩やかな上昇傾向」としており、前月までの「緩やかながら上昇」から若干前向きの表現としている。

〔文責 経済本部経済政策G 小川〕


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