景気関連インフォメーション

1997年3月分


第126回景気動向専門部会・議事概要(3月5日開催)

  1. 安原 経済企画庁課長
    1. 96年12月の景気動向指数の先行指数および一致指数は、4ヶ月連続で50%を上回った。このため、景気判断としては、「景気動向指数の動きは、景気に回復の動きが続いていることを示している」とした。遅行指数は、雇用関係がよくなかったため、50%を下回った。
      景気動向指数は、今月は大きな変化はなかった。先行系列は、11月は「8.日経商品指数」「9.マネーサプライ」がマイナスであったが、12月にはこれに加えて「6.新設住宅着工床面積」が4ヶ月ぶりにマイナスになった。住宅は、消費税引き上げ前の駆け込み需要があり、レベルとしてはまだ高いレベルにあるが、4ヶ月ぶりにマイナスになった。
      一致系列は、11月にはプラスであった「7.百貨店販売額」がマイナスになった。暖冬のため冬物衣料が伸びていないことや、法人の贈答利用が減少したことにより、百貨店販売額は3ヶ月ぶりにマイナスになった。
      遅行系列は、11月にプラスであった「3.常用雇用指数」「7.完全失業率」がマイナスになった。非自発的失業は11月以降減っており、自発的失業が多くなってきていることから、就業関係は良くなっているとみられる。
      また、季調変えにより、いくつかのデータのプラスマイナスが変わった。例えば、一致系列の11月は大口電力がわずかにプラスとなったため、一致指数は90から100に変更になった。

    2. 12月の機械受注統計は、船舶・電力を除く民需が前月比 -12.8%となり、10月に前月比44.2%と大きく伸びた反動が懸念されたがマイナス幅は小さかった。製造業の船舶・電力を除く民需は11月は前期比5.3%とわずかながらプラスで続伸したが、その反動で前期比 -17.4%となった。非製造業の船舶・電力を除く民需は、前期比マイナスとなった。
      四半期ベースでは、平成8年10-12月期の船舶・電力を除く民需は前期比15.3%増加し、史上最高の伸びとなった。金額自体の水準も、これまでの最高(37,268億円)に近づいている。製造業は、4-6月、7-9月に前期比マイナスが続いたが、10-12月には前期比17.8%増と史上最高の伸びを記録した。非製造業も10-12月の21,473億円は、史上最高の水準であった。
      9月時点では、船舶・電力を除く民需の平成8年10-12月見通しは前期比19.3%増となっていたが、実績はそれに比べると4%ほど低い伸びとなった。
      暦年ベースでは、平成8年の船舶・電力を除く民需は前年比12.2%と、平成2年以来の高い伸びとなった。製造業、非製造業ともに3年連続の増加となったが、非製造業が前年比15.4%と平成7年の前年比6.4%と比べて大幅に増加したため、平成8年は非製造業を中心に伸びたと言える。製造業の中では、自動車が新車やRV等の伸びにより増加した。非製造業では携帯電話、PHS等の通信が41%伸びた。
      平成9年1-3月期の見通しは、船舶・電力を除く民需が前期比 -8.5%と大きなマイナスになったが、全体としてみると増加傾向は明瞭である。

  2. 中西 通商産業省課長
    1. 平成8年1年間の鉱工業生産活動を振り返ると、以下の点が指摘できる。
      第1に、生産は上昇傾向を強めつつあり、特に年後半の動きが顕著である。生産は7-9月と10-12月に2期連続で前期比増加している。10-12月期の出荷も前期比3.7%増と大きく伸びている。設備投資や消費動向も年前半と後半でコントラストを描いている。
      第2に、資本財、建設材の伸びが生産、出荷の増加に大きく寄与しており、設備投資を中心とした経済の自律的回復が顕著になってきている。
      第3に、輸入浸透率をみると、年の後半は浸透度が下がっている。輸出入の関係は、昨年と比べて変化を見せはじめている。

    2. 平成9年1月の速報をみると、生産は前月比5.3%増と大きな伸びとなった。生産指数も季調値で一番高い水準になった。出荷も同じように、記録的な数字が得られた。生産動向は、全業種プラスとなり、力強いものがあると見ている。
      予測調査結果をみると、1月の実現率は0.6%となっており、上方修正であったことが判明した。2月はその反動を受けて、前月予想の▲2.9%から今月予想は▲3.3%となり、マイナス幅が大きくなった。これは、1月の反動によるマイナスであり、2月の生産自身が悪くなったわけではない。2月の予測の内訳をみると、鉄鋼業は1.3%のプラスであったが、輸送機械工業は火災事故などにより、マイナスとなった。3月予測の▲2.7%の内訳をみると、電機のマイナスが大きい。企業の情報化投資にからむものなど昨年以来高水準に生産が推移した品目は、これまでの水準が高かったため、3月はマイナスになった。予測調査結果をもとに四半期の数字を作ると、97年1-3月の指数は102.6となり、前期比1.9%、前年同期比6.5%となる。こうした数字から、生産はしっかりしていると言える。
      季調値は平成3年から5年分をベースにしている。不況期をベースにしていると、下方修正の度合いが大きくなる。
      通商産業省では、商業動態統計調査と大型小売店販売統計は、消費動向を需要面から分析するために重要と考えている。平成9年5月末から、4月分をまとめて発表し、発表日も鉱工業生産動向と同じにする予定である。これにより、生産と需要を合わせてみれるようになる。

  3. 早川 日本銀行課長
    1. 先月は、景気は皆が思っているほど悪くはないことを説明した。その理由として、
      1. 公共投資は今年度下期に既に落ちている、
      2. 消費税駆け込みの影響が過大評価されている、
      3. 4-6月は輸出が伸びて落ち込みを抑えると思われる、
      ことを話した。

    2. 今回は、資産価格について話したい。実態経済の指標が良いにもかかわらず、資産価格の弱さが心理面に影響を与えている。特に株と不動産のマーケットで同じような動きが起きている。
      日経平均株価は2万2000円台をつけた後、かなり下がったレベルで安定している。加工型製造業の現在の株価は、去年と比べると少し下がったが、ほとんどの時期より高い。重厚長大産業はそこそこ下がっており、金融関係が大きく下がっている。PERを計算すると、ハイテク関係は一貫してPERが低いが、重厚長大産業は高く、金融株は非常に高い。これは、今まではキャッシュフローではなく、資産価値に注目して、収入より土地を持っているかどうかで株価が決まっていたためである。ハイテク産業は工場しか持っておらず、含み資産はなく、収入のみである。市場は、含み資産をもう信じなくなってしまった。このため、収益で説明できる株価は影響を受けなかった。なぜ今このようなことが起こったのかはわからない。
      不動産市場について、話を聞いたところ、結果は同じである。不動産市場では住宅地は下げ止まっているが、商業地はずっと下がっていると言われている。しかし、それならば必ず裁定が起こるはずである。先日、汐留の入札があったが、予想より高い価格がついた。不動産会社の人によると、あれくらい広い土地であればビルを建て、レントをもらうことで利回りが5%程度とれるとのことであった。1000m2より大きい土地は、4〜5%の利回りは出せるので、地価は下がっていない。ところが、地価の統計をとっているのは、平均100m2程度の土地である。そのような広さの土地では、せいぜいコンビニ位しか作れない。これまでは大きな単位の土地も、小さな単位の土地も同じように評価されていた。経済価値は同じではないのに、転売価格で評価されていた。キャピタル・ゲインで儲けられなくなると、同じ地域にあっても場所と広さでインカム・ゲインは異なることが注目されてくる。
      現在の資産価格は、平均では下がっているが、単純に株、土地が下がっているということは適切ではない。何がきっかけかはわからないが、キャッシュ・フロー・ベースで評価が行われるようになった。
      オフィス・ビルは建ちはじめたが、金融機関の不良債権問題の解決は厳しいかもしれない。なぜなら、1000m2以上の土地は、不良資産になっていないからである。

    3. 自分は、鉱工業生産統計は、信頼できる良い統計だと思っている。よその国の統計は信頼できない。鉱工業生産統計は、5年ごとの工業センサスをもとに作り直されているため、今が一番精度が落ちている時期ではある。
      鉱工業生産統計よりも、個人消費と公共投資の統計をまともなものにすることが大切である。日本の生産、労働統計は、世界に冠たるものである。

(文責・経済政策グループ)


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