景気関連インフォメーション

1997年4月分


第127回景気動向専門部会・議事概要(4月2日開催)

  1. 安原経済企画庁課長
  2. 1月の景気動向指数は、先行指数が44.4%と平成8年9月以来、5ヶ月ぶりに50%を下回った。一致指数は引き続き90%と高い水準となった。
    平成5年10月を景気の谷とする今回の回復局面において、先行指数が50%を下回ったのは、まず平成7年5月から7月にかけてである。これは、急激な円高を背景にデフレスパイラルの懸念が高まり、実体としても悪い状況が出つつあった時期である。平成8年3月、8月にも50%を下回っており、今回は4回目である。ただ、先行指数は、昭和40〜45年のいざなぎ景気においては6回、昭和61〜平成3年の平成景気においても5回、50%を下回っており、採用系列にトレンドがなく循環変動するだけの指標が多いことから、不規則的な変動により一時的に50%を下回る傾向が強い。今回の結果も不規則的な変動によるものであり、現時点では景気の転換点を意味するものではないと考えている。したがって、全体の評価としては先月同様「景気動向指数の動きは、景気に回復の動きが続いていることを示している」としている。
    1月の先行指数が50%を下回った理由は、実質機械受注(船舶、電力を除く民需)、建築着工床面積(商工業・サービス)の設備投資関連がプラスからマイナスとなったことである。ただ、実質機械受注については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要のずれ込みなどにより、10月の水準がバブル期を含めて最高水準であったこと等から、1月は3ヶ月前との比較ではマイナスとなったものの、前月比では12%増と2桁の伸びを示しており、基調的には増加傾向が続いている。設備投資の増加傾向を否定するものではないと考えている。
    一致指数は、12月から1月への変化はない。百貨店販売額のみ暖冬の影響などにより前月に続いてマイナスとなっている。
    新聞報道等で岩戸景気との比較が行われているが、今回の景気回復は長く続いているものの、そのテンポは緩やかであり、性格が異なる。

  3. 中西通産省課長
  4. 2月の鉱工業生産は前月比▲3.4%減(季調済)となった。製造工業生産予測調査は、3月の見込みが同▲2%減、4月が同1%増となっている。基調判断は前月、前々月同様「総じてみれば、生産は上昇傾向で推移」としている。
    四半期ベースでは、1〜3月期の生産指数は102.7(前期比1.2%増)と見込まれ、平成2年基準(現行)指数の過去最高の平成2年1〜3月期と同水準である。このように引き続き高い水準が維持されていることから、基調判断は変えていない。
    2月、3月と前月比マイナスとなっているが、これは1月の指数が105.8、前月比が5.6%増と高かったためである。指数の水準は5ヶ月連続で100を上回っており、3月100.2、4月101.2の予測が達成されれば、7ヶ月連続の100超えとなる。以上のことを踏まえ、生産動向は堅調といえる。
    在庫についても改善傾向にある。在庫率は前月比0.5%増となったが、前年比では引き続き低下しており(▲3.5%減)、大きな流れとして基調判断を変えていない。
    製造工業予測調査で2月の実現率は、鉄鋼業が下方にふれたため下方修正されている(▲1.3%)。3月の見込みは前月比2.0%増と0.7%ポイントの上方修正となっている。電気機械工業は昨年来の高い生産の反動から下げ幅が大きいが、輸送機械工業は自動車販売の好調からプラスとなっている。3月の予測修正率は、電気機械工業、化学工業、鉄鋼業などがプラスとなったことから、0.3%ポイントとなった。4月については、業種間のばらつきはあるものの、総じてしっかりした生産活動が見込まれると思われる。

  5. 早川日本銀行課長
  6. 業況判断DIは、製造業については前回の予想よりも改善した(主要企業:▲1→2、中小企業:▲12→▲8)が、これは円安による輸出効果、自動車の好調の波及効果等が主な要因である。一方、非製造業については前回よりも悪化した(主要企業:▲1→▲6、中小企業:▲8→▲9)。これは公共投資の減少に伴う建設業の悪化が背景にある。主要企業非製造業のDIの悪化は、実勢というよりも一時的要因あるいはマインド先行の面が強いと考えている。先行きについては、消費税率引き上げの影響等から慎重な見方となっている。
    製品需給・在庫・価格判断DIは全体にかなりの改善を示した。例えば、製品需給DIは▲17と依然供給超となっているが、過去の経験に照らし合わせると好況期の水準に近いと思われる。在庫、価格判断ともに総じて好転している。
    次に、売上収益は、主要企業、中小企業とも、また製造業、非製造業ともに96年度は増収・増益で着地した見込みである。売上高は総じて上方修正されているが、経常利益は、製造業の加工業種では円安の影響等から上方修正されている一方で、素材業種では円安による交易条件の悪化から若干の下方修正となっている。97年度(計画)についても増収・増益が予想されているが、中小企業の非製造業については、売上高は0.9%増に過ぎず、経常利益の6%増も決して強い数字ではない。それ以外のグループは売上、収益ともしっかりした計画となっている。その結果、主要企業製造業の売上高経常利益率は、97年度4.44%とかなり高い水準が見込まれている。
    設備投資計画は、97年度は主要企業では製造業、非製造業とも2.7%増となっている。ただ、今回調査時点を2月から3月に変更しており、昨年の2月調査と5月調査の間程度の数字であり、大体昨年並みの出足と考えている。中小企業については、製造業が▲10%、非製造業が▲21.4%という計画となっているが、通常、マイナスの数字を打ち出す傾向があり、昨年のパターンを踏まえれば今後上方修正されようが、97年度の伸び率が96年度を上回るほどの伸びとなるかどうかは現時点でははっきりとは言えない。中小企業製造業の▲10%は昨年の5月短観と同じレベル、非製造業の▲21.4%は昨年の2月短観と同じレベルであり、製造業はやや強め、非製造業はやや弱めと思われる。製造業の生産設備判断DIでは、中小企業でかなりの過剰感の縮小がみられる。
    雇用については、主要企業では過剰感が着実に縮小しており、全体に改善傾向が現れている。

    以上が今回の短観の結果であるが、全体を概括すると次の2点となる。
    第1に製造業と非製造業との間でコントラストがはっきりとしつつあることである。これは、

    1. 円安の影響が製造業にはプラスに働く一方、非製造業にはそれほどプラスとならないこと、
    2. 最終需要としては、生産誘発効果の高い輸出、設備投資(とりわけ機械投資)、自動車等の個人消費などが好調である一方で、公共投資の落ち込み、住宅投資のピークアウトなどから建設業中心に非製造業のマイナス面が大きいこと、
    などが背景にあるといえよう。
    第2に、全体として非製造業の業況判断DIのみが出遅れているようである。これは、一つには指標としてはいい結果が出ているもののマインド面で弱いことがある。また、DIの先行きの悪化は、中小企業非製造業以外は「良い」と回答した企業数が減る一方で、「悪い」とする企業も増えておらず、先行きを慎重にみたいというマインド面が現れた結果といえる。
    なお、為替レートの前提は97年度113.56円としている。

(文責・経済政策グループ)


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