景気関連インフォメーション

1997年6月分


第129回 景気動向専門部会・議事概要(6月6日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通しについて(官庁報告)〜

  1. 経済企画庁 安原 景気統計課長
  2. 9年3月分DI(速報値)については、先行指数30.0%、一致指数80.0%、遅行指数50.0%となった。先行指数は3ヶ月連続で50%を下回り、一致指数は7ヶ月連続で50%を上回り、遅行指標は2ヶ月連続で50%を下回った後、50%となった。先行指標にやや弱い動きがみられるが、先行系列はちょっとした動きで50%を割ることがあるので、景気後退のサインであるとは思っていない。先行系列の中身を見ると、消費税の影響が出ているように思われる。中小企業業況判断来期見通しがマイナスになっていることは消費税引き上げに伴う懸念であろうし、新設住宅着工面積が12月以降マイナスであることは駆け込みの反動だろう。消費税のことがなければ60%くらいにはなっていたのではないか。経済企画庁としては、景気回復の動きが続いているという判断に変わりはない。
    ただ、設備投資に関する見通し額について見てみると、8年10〜12月期実績の対前期比に比べると4〜6月期見通し対前期実績比の伸びがかなり低いレベルとなっている。実際にはもう少し上向くとは思うものの、出だしとしては弱いという感じがする。「民需主導の経済成長」にならない可能性もあるのではないか。

  3. 通商産業省 中西 統計解析課長
  4. 9年1月〜3月期の鉱工業生産活動は、生産・出荷とも上昇し、更に在庫も低下した。その主な要因は、足元の生産・出荷の上昇が8年7〜9月期以降好調な国内向け出荷の伸びに牽引される形でもたらされたこと、乗用車関連品目など一部の品目に消費税引き上げ前の駆け込み需要が見られたほか、パソコンなどの底堅い需要の伸びなどがあったためである。出荷を輸出向け・国内向けに分けて推移を見ると、内需主導で出荷が上昇していることがわかる。個人消費関連指標の前回消費税導入時期との比較では、(1)需要全体としては前回同様の傾向であった(2)耐久消費財については、物品税廃止による買い控えが見られた前回と比べ、大きな駆け込み需要が見られた(3)非耐久消費財については前回と同じ傾向であった。4〜6月期の生産動向を展望すると、3月に大幅に減少した消費財関連の在庫を適正水準に戻す在庫復元の動き、海外景気拡大による海外需要の増加、民間設備投資の堅調な推移が予想されることなどから、基調として、当期に引き続き上昇傾向で推移するものと考えている。
    次に、鉱工業生産指数(IIP)4月分についてであるが、今回は、生産は消費税引き上げという足元の一時的要因の影響から低下とはなったものの、総じて見れば「緩やかな」上昇傾向で推移している。「緩やかな」をつけたのは、生産指数の前月比マイナスが3ヶ月続いているなどの理由からであり、今までと同じ上昇角度で生産が順調に伸びていくと想定するのは、やや難があると考えたからである。とはいえ、トレンドとして大きく修正するほどではないと考えている。5月の製造工業生産予測調査結果を見ると、4月の実現率はマイナス0.9%で少し下がっているが、5月見込みは2.7%と強い。6月見込みがマイナス1.9%となっており、これをどう見るかということはあるが、いずれにせよ指数全体の基調は悪くないと判断している。

  5. 日本銀行 早川 経済調査課長
  6. まず、為替レートについてであるが、円高に振れたのは、きっかけはともかく、昨年来からの行過ぎた日本悲観論の修正の現われと見るべきであろう。
    消費税引き上げ後2ヶ月が過ぎ、景気の指標もいくつか出てきたが、今後失速はしないだろうという確信を益々強めた。関心は景気回復の勢いがどの程度のものになるのかというところに既に移っていると思う。しかしながら率直にいってまだよくわからない。鍵となるのは設備投資である。ポイントは大きく3つあると思う。第一は、今年度の設備投資計画の修正がどのようになるかである。従来の認識は、足元の景気はいいが、消費税などの影響から先行き悪くなるのではという心理があった。つまりリスクプレミアムが拡大している状況にあった。今後は、消費税引き上げ後も景気が悪くならないという認識となり、先行きの不透明感が少なくなる。ただ修正のマグニチュードについて現段階で判断するのは難しい。第二は、中小企業非製造業がどうなるかである。同分野は、収益面、設備投資面等、弱い。シェアとして比較的大きな分野であるので、その動向が景気全体に及ぼす影響は大きい。第三は、情報化投資がどうなるかである。情報化投資には、半導体メーカーによる工場設立などのメーカーサイドの情報化投資の側面と、個人によるパソコン購入などのユーザーサイドの情報化投資の側面がある。米国の経済成長過程を見ると後者が牽引しているが、日本の情報化投資は前者による投資である。今後の日本における情報化投資が、従来通り前者に依存するならさして伸びるとは思えないが、これが後者によるものであれば相当な伸びが期待される。

(文責・経済政策グループ)


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