景気関連インフォメーション

1997年7月分


第130回 景気動向専門部会・議事概要(7月3日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通しについて(官庁報告)〜

  1. 景気動向指数について
    淺見・経済企画庁景気統計課長
  2. 4月分は、先行・一致・遅行とも50%割れとなった。ただ、これは比較月の1月の消費税引き上げ前の駆け込みによる一時的なものであると考えている。5月の鉱工業生産指数(IIP)などを元に計算すると、おそらく5月分の一致系列は50%を越えるだろうと思っている。先行系列は4ヶ月連続で50%割れとなっているが、5月も50%を超えるのは難しいのではないかと考えている。これは、例えば新設住宅着工床面積、新車新規登録・届出台数といった駆け込み需要の反動が反映する系列や、新規求人数で最近特に建設業で求人が落ちているというような、やや構造的な要因が影響しているのだろう。遅行系列についても、常用雇用指数や完全失業率など構造的な影響を受けている系列があり、5月も50%を超えることは難しいのではないかと考えている。

  3. 鉱工業生産指数(IIP)について
    中西・通商産業省統計解析課長
  4. 「生産・出荷・在庫統計速報(IIP掲載)」と「商業販売統計速報」は基本的に同日公表となったので、需要面と供給面をあわせて紹介する。
    まず、IIPについてだが、在庫が4月に続いて上昇、6月7月の予測の数字がそれほど伸びていない、4〜6月の数字が1〜3月に比べて、微減ではあるがマイナスであったことから、マーケットでは悪い面が強調されて評価されたように感じている。
    数字的には、生産については、5月は前月比3.8%で、先月の予測の2.7%を大きく上回って伸びた。これは5月の実現率が0.9%上方にぶれた、つまり当初の生産計画が大きく上方に修正されたものであり、生産は好調と判断される。同様に、6月の予測も0.2%上方修正されており、こういう状況が継続するのはいいサインである。そのような中で、たまたま6月の前月比の伸びがマイナス2.6%と大きくなったが、これは5月が大きく伸びたせいであり、単に6月見込みの前月比の数字だけを見て、弱いと判断するのはいかがなものか。4〜6月は、0.3%の微減とはなったが、3期連続で生産が2%を超える伸びを続けてきたので、生産の水準自体が高いし、消費税率引き上げを考慮すれば、予想の範囲内であると思われる。加えて7月も0.9という予測がまとまった。時系列で見ても、生産が弱含みであるとか、下方トレンドであるとかいう状況にはない。
    在庫状況については、単月で見ると、4月に続き5月もプラスであるが、生産に対して黄色信号が点るような状況ではない。そもそも4月は、2月に大きく出荷が伸び、在庫が減少したことを受けて、その反動、加えて生産の積み増しなどで大きくプラスになったが、これは予想された動きであった。5月はその生産の積み増しが広い品目、特に自動車や白物家電や一部化粧品について、将来の需要見込みから生産積極化の動きが見られた。エアコンなど一部品目については積み上がりも散見されるものの、懸念というのは早計だろう。加えて月末在庫の前年同月比や在庫率などを見てもマイナスであり、昨年来の改善基調にあると考えるべきだろう。
    生産が5月に伸びた要因は、消費税の影響が小さくなってきたこと、輸出が広範囲で出てきているということであろう。
    次に、「商業販売統計速報(5月分)」についてだが、高額商品に駆け込み需要の反動減があるものの、小売業全体としてはその影響は縮小傾向にある。小売業前年同月比増減率のトレンドを見ると、3月に伸びた反動が4月に出ているが、5月にはマイナス1.8%で回復していることがわかる。大型小売店については、店舗調整前の数字で前月比0.1%となっていることは、良い状況と解釈すべきであろう。なお、卸売業は、輸出も入っているので特に好調で前月比2.8%である。

  5. 最近の経済金融情勢について
    早川・日本銀行経済調査課長
  6. 「短観」が決定的に重要な指標であるとは考えていない。特に今回のDIについては、解釈が難しいというか解釈不能な状況である。まずは売上収益・設備投資といったところから話したい。
    「売上・収益計画」の特徴的なことは、第一に、96年度の実績が大きく上方修正されたということである。これは、年度末にかけての売上・収益がいかに強かったかを示すものと考えている。それを踏まえての97年度については、本来駆け込み需要があった後なので、少しへこんでもよいと思われるものの、売上計画は実際は上方修正されている。これは、景況判断が上向いてきている証左だろう。第二に、そうはいっても、中小企業・非製造業については、全般に数字が弱い。ここにはバランスシート調整問題、規制緩和などに伴う構造要因、公共投資減少など需要自体の影響などが現れているのだろう。同様のことが設備投資計画においてより明瞭に現れている。大企業・製造業は従前より強かったが、またも高い伸びでありかつ大きな上方修正が見込まれており、95、96、97年と着実に増加しており、テンポも衰える感じはない。非製造業については、伸び率が若干低い感もあるが、96年度通信が伸びていた分は今年は伸びない、全般に電力などでは金額ベースでかなり大きなマイナスをつけているなどの理由があるのではと思っている。
    他方、コントラストが激しいのは中小企業であり、製造業の設備投資はこの6月時点のマイナス2.2%、修正率2桁の10.5%というのは結構強い数字であると思う。96年度あたりから収益環境がよくなってきたことが、設備投資でも明瞭に見えてきたというところだろう。しかし、非製造業については、上方修正こそそこそこの数字だが、発射台が発射台であったので、現時点でマイナス17.1%、これから上方修正されるだろうが、目立ったプラスになることは期待できない。
    また、海外生産・設備投資動向の特徴は、第一に、海外生産・設備投資は、96年度非常に高い伸びを示した後に、97年度も増加するというのが特徴である。第二に、設備投資では、96年度の顕著な増加に比べれば97年度の伸びはややペースダウンしている。海外生産拠点拡充という大きな流れは継続しているが、ここのところの円安を踏まえると、勢い自体は鈍化してきているということだろう。
    DIについては、解釈が難しい局面である。6月調査でぐっとあがり、3月調査ではあまり上がらなかったが、本当に良かったのは3月だったのではないかと想像している。元来DIは遅行する傾向にあるともいえ、3月によかったのが遅れて出たと考えることもできるが、消費税引き上げを前にして、3月調査ではいいとは答えられなかったが、それを越えてみると、思ったよりよかったという反応が6月調査で出ているのかもしれない。
    全体的な感じとしては、大企業・製造業がよかった割には他がよくなかったというのが印象であろう。中小企業・製造業については、売上・収益計画などでは良好と見ることができるが、DIではあまり良くない数値が出ており、意外感がある。これは、DIは業種によるウェイト付けがないため、木材・木製品や窯業土石などの公共事業・住宅投資関係の弱さをそのまま反映しているものと思われる。
    経済全般としては、最終需要、とりわけ個人消費についてはやはりかなりの反動が出ているが、輸出の動き、在庫復元の動きなどから、生産活動は引き続き高水準横這いであり、景気については一旦ここでブレーキがかかりはするものの、これ以降悪化する感じではない。7〜9月については、増勢にはなるとは思うが、あまり強い増加にはならないだろう。常識的には反動一巡により伸びるはずであるが、次の三点からあまり伸びないと考えている。一つめは、住宅・自動車などの高額品の反動が、やや長めに出ると考えていること、二つめは、輸出が、4〜5月によすぎたことを考えると、それほどの伸びにはならないと考えられること、三つ目は在庫復元力についても相当程度4〜6月に使い果たしてしまったと思われることである。

  7. 最近の雇用動向について
    村木・労働省労働経済課長
  8. 5月の完全失業率は3.5%と上昇したが、雇用改善の流れの基調にあるとの判断は変わらない。3.5という数字は、平成8年4〜6月の時にあったが、内容が異なっている。前回は、全体として数字が弱い中での3.5%であったが、今回は労働需要も伸び、労働力人口も増えた中での一時的な跳ね上がりの3.5%であろう。失業者の中身も異なる。前回は非自発的失業が4万人増加していたが、今回は自発的失業は12万人増加しているものの、非自発的失業は14万人減少している。よってこの3.5%という数字は、懸念する必要はないと判断している。女性失業率が今年に入ってから上昇傾向にあることについても、同様の文脈であろう。
    その他、新規の求人は最近はやや弱含みだが、一般の求人と比べ建設業系のウェイトが高いためであり、日本全体を反映しているわけではいない。有効求人倍率については横這い圏内と見てよかろう。労働時間については、所定内労働時間の若干のマイナスが継続しているのは、週40時労働が適用された影響であろう。賃金については、所定内・所定外とも2%弱程度が続いているが、春闘賃上げ率の推移を鑑みても、今後もこの程度で推移するものと思われる。

(文責・経済政策グループ)


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