景気関連インフォメーション

1997年12月分


第134回 景気動向専門部会・議事概要(12月4日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 「景気動向指数について」
    田邊・経済企画庁景気統計調査課課長補佐
  2. 9月のDIは、先行・一致指数が50%を超えた。先行指数では、(1)最終需要財在庫率指数、(2)新規求人数、(3)建設着工床面積がプラスとなった。一致指数では、(1)生産指数、(2)原材料消費指数、(3)大口電力使用量、(4)稼働率指数の四つがプラスとなった。しかし、先行指数の(2)(3)が一時的要因と思われること、10月の鉱工業生産動向の速報を見ると、10月の一致指数は厳しいと予想されること等から、今後について必ずしも楽観できない。
    QEは、実質GDP成長率は0.8%増となり、前期の落込みをやや戻した格好である。内訳を寄与度で見ると、内需が0.9(うち0.7が民需)、外需はマイナス0.1であった。需要項目別に見ると、民間住宅投資が引続き大幅にマイナスになっていることが全体を引下げている。

  3. 「鉱工業生産指数について」
    中西・通商産業省統計解析課長
  4. 10月のIIPは、プラス要因とマイナス要因が併存している様相である。全体的に企業マインドが慎重になっているし、最終需要の見通しも厳しいため、概況の表現は、「今後の動向を注視する必要がある」とした。
    プラス要因は、2ヶ月連続で在庫が低下していることと、先行きの予測で12月がプラスに出ていることであるが、マイナス要因は、10月の実現率、11月の予測修正率がマイナスになっていることである。
    予測調査について、少し内容に立入ると、電気機械工業の実現率等の下方修正については、特にコンピュータ関係がマイナスに寄与している。鉄鋼業も、ここのところずっとマイナスであり、素材への影響が出ているといえる。化学は、エチレンが好調とはいえ、先行きには慎重になってきているときいている。輸送機械は、9、10月は持ち直し、11月は稼働日の関係で下がったが、12月にはプラスとなり、均してみると、そこそこで推移していると見ていいのではないか。

  5. 「最近の雇用動向について」
    村木・労働省労働経済課長
  6. 先月席上で、黄色信号が灯りはじめたと発言したが、今も厳しい状況にあると見ている。理由は、雇用者の伸びが止まったことにある。
    もうひとつ気になっているのは、完全失業者の内容である。数字自体には特筆すべきものはないが、非自発的離職がプラスに転換した意味は大きい。これがマイナスであったことが、解雇・倒産は少ないのだという根拠になっていたが、そうでなくなってきているようだ。つまり、雇用保険受給資格者決定件数のうち給付制限なしという指標は、解雇等の事情で失業手当を請求した場合のことを指しており(自発的失業は給付まで3ヶ月待つという規程がある)、非自発的失業の先行指標であるが、これを見ると、6月から前年比でプラスになっている。このようなことから、今後非自発的失業について、注意して推移を見ていく必要があると考えている。
    ただし、マスコミの論調は急激に振れすぎている。今年の前半は、「雇用・所得環境だけが頼みの綱」という書き方だったが、ここに来て「雇用が一番悪い」という書き方になった。先般、「完全失業率3.5%」と発表されたところ、マスコミが飛びつき、「戦後最悪」と書きたてた。しかし、失業率の状況は少し前からほとんど同じで、真相は9月、1O月は小数第二位の数字の四捨五入で3.4に止まったところが、今回3.5に切上がったという程度の差である。
    雇用は、92〜93年に相当なリストラを断行してバブル期の過剰雇用分を絞り込んだ。現在はその当時と比較すると雇用過剰感は小さい。生産性や労働分配率の状況もかなり改善している。従って、当時のような大リストラにはならないだろう。もちろんこの見方が甘いという向きもあるとは思う。
    しかし、それにしても極端に真っ暗だと考える必要はないのではないか。

  7. 「最近の経済金融情勢について」
    早川・日本銀行経済調査課長
  8. 1ヶ月の間に金融面でいろいろなことが相次いだ。こういう時には、実体経済と金融とを一度概念的に分離し、それから金融がどのように実体経済に影響するのかという観点で考えてみるべきだろう(もちろん金融と実体経済が独立ということはない)。金融から実体経済への波及ルートを考えていくと、概念的には二つの波及ルートが考えられる。
    第一のルートは、心理面を含め、家計消費や企業の支出への影響である。所得環境はさほど悪化していないが、将来の不確実性が増したことによる影響が考えられる。このような場合、企業の設備投資でいえば「先送り」、家計でいえば耐久財に大きなマイナスの力が働くことになる。この意味で、今後、設備投資の先行指標である機械受注統計、家電、車、住宅等の指標に注目したい。
    第二のルートは、金融機関の貸し出し態度である。昨今「貸し渋り」の議論がある。銀行は、現在早期是正措置に基づき、不良債権処理に努めているため、ない話ではないのだろう。しかし、都銀が貸し出しをやめ、かつ優良な案件であれば、地銀等が代替的に貸出しするのだろう。いずれにせよ大規模な貸し渋りが現在起こっているとは思えない。現段階でこれを実証できる統計もない。今後都銀等の動向に注目していきたいとは思っている。
    加えて懸念材料としては、アジア情勢がある。特に気になるのは韓国であり、今後深刻化するリスクがあるので、今後注視していきたい。
    1年前に予想していた日本経済の姿とは必ずしも一致しなかった。その理由は大きくいって二つある。
    第一は、財政面のショックに対する認識である。同ショックは、あらかじめわかっていたことではあったが、乗り越えられるものと考えていた。実際、95〜96年度には、設備投資の大幅上方修正があった等、実体経済は勢いづいてきたと認識していた。しかし、これは、例えば携帯電話等による、あくまで一時的な押上げであり、経済全体としての実力ではなかった。こうした実力の過大評価が、97年度予測に響いてしまった。
    第二は、金融面の問題である。金融機関については、基本的に大幅に改善していると考えていたし、事実マクロ的には間違っていないと思う。しかし、企業倒産が景気回復初期に発生するという、一般の事業会社での出来事が金融機関においても同じようにあてはまるのだということについて十分思い致すことはできなかった。90年代に入ってからの日本経済は、金融システムが傷ついていることにより景気循環が許されない状況になっている。

(文責・経済政策グループ)


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