景気関連インフォメーション

1998年1月分


第135回 景気動向専門部会・議事概要(1月9日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 「景気動向指数(97年10月分)について」
    淺見・経済企画庁景気統計調査課長
  2. 昨年7-9月期のGDPは一昨年10-12月期のレベルに戻っており、経済活動は期待通りの回復を示していない。10-12月期についても、景気は足踏み状態と判断している。
    10月の景気動向指数一致系列は、中小企業売上高を除いて全てマイナスとなった。中小の売上げがプラスになったことに意外感を持たれるかもしれないが、これは中小のなかでも相対的に業況の良い製造業の売上げを採用しているためとみられる。
    先行系列は9、10月と2ヶ月連続で50%を上回ったが、新規求人数など最近横ばい傾向にある指標が、3ヶ月前に比べればプラスだったということが影響しており、慎重に見ておく必要がある。
    今月末には11月の数字が発表になるが、かなり厳しい数字になりそうである。ただし、既に発表された経済対策、金融システム安定化策などの効果を念頭に置きながら、今後の統計の動きを見守っていきたい。

  3. 「最近の経済情勢について」
    小口・大蔵省大臣官房調査企画課企画官
  4. 97年7-9月期の法人企業統計調査では、製造業と非製造業の跛行性が引き続き見られる結果となった。売上高は全産業ベースで15期振りの前年同期比減収。製造業では若干の増加ながら非製造業では前年割れとなった。経常利益も製造業では前年比10.8%の増加ながら、非製造業では1.4%の減少となっている。設備投資は、製造・非製造ともに引き続き増加した。他方、在庫の積み上がりも見られる。
    景気予測調査(11月調査)によると、経済の先行き不透明感から景況判断は厳しさを増している。調査時点(11月1日)以降、金融機関の経営破綻が顕在化したことを考えると、足元のマインドはさらに厳しくなっているものと思われる。
    景気が足踏み状態にあり、また金融システムに対する信頼が揺らぎかねない状況にあることから、政府としては、

    1. 金融システム安定化策(預金保険機構の資金充実策、貸し渋り対策など)、
    2. 予算・税制面での措置(所得税および個人住民税の特別減税、法人課税・金融関連税制・土地住宅税制の減税、補正予算など総額で5兆円を超える措置)、
    の2本柱で対応する。こうした対策の効果により、景気が一刻も早く回復軌道に復帰することを期待している。

  5. 「鉱工業生産指数(97年11月分)について」
    中西・通産省統計解析課長
  6. 11月の鉱工業生産について、ポイントは以下の4点。

    1. 11月の生産は1年半振りに前年割れとなり、生産活動の弱含み傾向がはっきりしてきた。11月は稼働日が例年に比べて2日少ないという影響もあるが、実現率はマイナスであり、生産は前月見込み比で下振れしている。自動車などの減産が、鉄鋼や化学など素材産業に波及してきている。
      予測調査結果によれば、12月、1月とプラスになる見込みである。しかし、11月の落ち込み幅を考えると12月の戻りは弱い。また1月は大幅上昇の見込みではあるが、稼働日が2日程度多いという要因や、一部品目で生産前倒しの影響もある。1月は年間でもっとも生産レベルが低く、季節的に数字が振れやすいということもある。在庫水準が依然高いことを踏まえると、これらを「良い数字」とは判断しがたい。
    2. 内需が弱いことはもとより、輸出も以前ほどの勢いが無くなってきている。
    3. 在庫が3ヶ月ぶりにプラスとなり、在庫率も跳ね上がっている。昨年4月以降、当初は、在庫の積み上がりはエアコンや自動車など特定の品目に限られていたが、現在では、幅広い品目で在庫が積み上がってきている。
    4. 11月の生産・出荷は、全業種(14業種)で前月比マイナス。財別には、従来は比較的堅調であった資本財にも弱い動きが見られる。

  7. 「最近の雇用動向について」
    村木・労働省労働経済課長
  8. 雇用情勢については、基本的に芳しくない動きが続いている。もう真っ暗闇であるとは思っていないが、ジリジリと悪くなっている。
    雇用動向についてのポイントは以下の4点。

    1. 非自発的失業(倒産や解雇による失業)が増加している。
    2. 有効求人倍率がジリジリ下がっている。求人が落ちていることが影響している(ただし11月については、休日が多かったことも関係しているとみられる)。
    3. 雇用者の伸びが、特に男性を中心に落ちている。また、これまでプラスを続けていた建設業の雇用も、11月はマイナスに転じた。建設業は、バブル崩壊以降、雇用量を稼いでいた業種だけに、今後全体に及ぼす影響が気になるところ。
    4. 企業の雇用過剰感がやや増加している。ただし、業況の急激な落ち込み方に比べれば、雇用過剰感の高まりは相対的に軽微であるという印象。

    賃金については、以下の2点が指摘できる。
    1. 11月は現金給与総額が前年比マイナスとなった。ただし、中身を見ると、特別給与の減少が全体の下押し要因となっている。これは、昨年は11月に賞与を支給していた会社が今年は12月に支給を遅らせたなど、何らかの特殊要因によるものではないかとみられる。また、平日が例年に比べ少なかったことが、日払いの建設業などの業種に影響した可能性もある。いずれにしても、今後もマイナスが続くとは思えない。
    2. 大企業の年末賞与は前年比2.8%増と、昨年と同程度の伸びを確保している。最近の業況の悪化度合いから考えれば意外と高い伸びであるが、この背景には、賞与を年間要求で決定する企業が増えてきていることがある(昨年の春闘で既に年末賞与が決まっていた企業が多かった)。秋に年末賞与の妥結をした企業では、もっと伸びは低い。業種別には、製造業の賞与はそこそこながら、非製造業は悪い(特に金融、建設)。また大企業の結果しか出ていないが、夏と同様、中小企業の状況が悪い恐れがある。

  9. 「最近の経済金融情勢について」
    早川・日本銀行経済調査課長
  10. 昨年来の景気を振り返ると、消費税率引き上げ後の落ち込みが予想以上に長期化するなかで、金融システム不安、企業倒産などがマインド面に影響し、秋口あたりから、一部の消費関連指標は再び落ち込みを見せている。生産活動も在庫調整局面に入り、雇用もジリジリと悪化するなど、全体として景気の停滞色が強まっている。
    先行きについて考えると、しばらくは停滞色が残る可能性が高いとみている。ただし、設備投資や輸出などは基本的に底堅い動きが続くと思われるし、個人消費についても、昨年末の不振にはやや一過性の要因も影響していると思われる。所得税減税などの効果が期待されることも踏まえれば、今後、累積的に景気が落ち込んでゆくという状況は避けられるのではないかと考えている。
    もっとも、大きな不確定要因が存在することも事実。一つはアジア情勢であり、もう一つは貸し渋りの動向。アジアについては、しばらくは警戒的に見ておく必要があると思う。貸し渋りについて、金融機関にヒアリングしてみたところ、確かに融資態度が厳しくなっていることは事実である。ただし、マクロの計数を見ると、貸出やマネーサプライなど、むしろ伸びを高める気配もあり、ミクロで言われている状況とはやや異なっている。どうも、企業サイド、金融機関サイドともに、必要以上に態度がシュリンクしているように思われる。

(文責・経済政策グループ)


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