景気関連インフォメーション

1998年5月分


第139回 景気動向専門部会・議事概要(5月7日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 「景気動向指数(1998年2月分)について」
    淺見・経済企画庁景気統計調査課長
  2. 3月の消費動向調査によると、消費者態度指数は前回12月調査比で若干の改善となり、厳しいなかにも明るい兆しが見える結果となった。前回調査では、山一證券等、一部上場企業の経営破綻の影響などにより雇用環境に対する見通しが大幅に悪化したが、今回は多少ながら上向きに転じており、これらの影響は概ね収まったとみることもできる。ただし、失業率が過去最悪を更新するなど、足元の雇用情勢は大変厳しいことから、改善したとはいいながら戻りは弱い。
    景気動向指数については、2月の一致系列も25.0%と50%ラインを下回った。2月の数字は、各種指標が大幅に悪化した昨年11月との比較であることを考えると、かなり厳しい結果である。ちなみに、一致系列の50%割れは5ヶ月連続であり、これは95年の超円高時以来のこと。但し、4月24日に閣議決定された総合経済対策の効果が、今後、どのように経済指標に表れてくるかに注目している。

  3. 「最近の雇用動向について」
    村木・労働省労働経済課長
  4. ご承知の通り、雇用環境は急速に悪化している。昨年の暮れ頃までは、雇用情勢が厳しいとはいえ、それほど悲観視することもないと言い続けてきた。それは、

    1. 失業率は高水準ながら悪化しているわけではない、
    2. 雇用も弱いとはいえ、95年の円高時に(製造業等で)大規模なリストラがすでに実施されたことを考えれば、これ以上大幅なリストラは考えにくい、
    3. 失業率の中身を見ると、若年層や高齢層は高いが、中核である30〜50代(特に世帯主)ではほとんど上がっていない、
    などの理由があったからだ。しかし今年に入ってから、この3つの前提が大きく崩れている。失業率は過去最悪を更新したし、製造業の雇用は95年並みの落ち込み幅である。また、世帯主の失業率も急上昇している。失業のプールには新しい失業者(非自発的失業)が入ってきている。
    今月の雇用指標のポイントは以下の3点。
    失業率:
    3月は3.9%と、前月比0.3ポイントの上昇。一月でこれほど大幅に上がったのは高度成長期の一時期を除けば初めて。男女とも過去最悪水準である。若年層、高齢層に加え、中堅層でも大幅に跳ね上がっており、総崩れの状況。
    雇用者:
    2月、3月とも前年割れ。男性の常用雇用が落ち込んでいることに加え、女性の常雇も落ちており、女性パートだけが増えている状況。業種別には、製造業(特に機械、金属)の雇用が95年に匹敵する落ち込み幅。建設業もマイナスが続いている。
    求人倍率:
    新規求人倍率、有効求人倍率ともに低下。雇用の先行指標である新規求人倍率が落ちていることを考えると、雇用情勢が急速に改善するとは期待しがたい。

  5. 「鉱工業生産指数(1998年3月分)について」
    中西・通商産業省統計解析課長
  6. 生産の総括判断は、従来の「弱含み」から「低下傾向」へと下方修正した。
    3月の生産は、特に自動車やパソコンの落ち込みが大きかった。予測調査結果によれば、生産は4月に2.5%低下のあと、5月は+1.2%と、久方振りの上昇見通しではあるが、これまで大きく落ちてきた反動という側面もあり、高い在庫水準とあわせて考えると手放しでは喜べない。
    3月の在庫指数は久し振りに低下したが、マイナス幅は小幅である。品目別に、マイナスに大きく寄与したのはエアコンだが、製造段階の在庫は減ったものの流通段階では減っていないと聞いており、トータルで見ると引き続き厳しい。一方、プラスに寄与したのは乗用車だが、販売好調な車種の前向きな在庫積み増しや、輸出用の船積み待ちで増えたと聞いている。
    予測調査については、実現率、予測修正率が約半年振りにプラスとなった。やや明るい材料ともいえるが、主因は電気機械の上方修正(これまでかなり慎重な計画だったコンピューター関連が上方修正した様子)であり、その他の業種には大きな変化はない。化学工業は5月に大幅生産増の見通しであるが、3月、4月の定期修理の反動が出ていると承知している。

  7. 「最近の経済金融情勢について」
    早川・日本銀行経済調査課長
  8. 最近の経済指標では、消費指標がやや上向いてきた感じながら、他の指標には悪いものが目立つ。今後の展開として、次の3つの期間に分けて考えることができる。
    まず第一のフェーズ(今年の夏場あたりまで)では、数字はまだまだ悪化するとみて間違いない。現在の景気の悪化は、昨年度初来の財政ショックではなく、昨年末にかけての金融不安やアジア景気の混乱などが影響しているのだから、この悪影響はまだしばらく続くと考えた方がよい。経済対策の効果もすぐに出てくるわけではない。
    第二のフェーズ(秋口から来年春頃まで)では、経済対策の効果が出てきて、数字は上がってくると考えられる。株式市場など、マーケットはかなり悲観視しているようだが、構造問題を棚上げして循環的な側面だけ見れば、雇用や設備の調整はそれほど深刻なものになるとは思えず、対策の効果はそれなりに期待できるはず。
    難しいのは、その後の第三のフェーズ(99年度以降)がどうなるかである。雇用・設備の大幅な調整を心配する必要はないと言ったが、さりとて、調整局面をすぐにでも脱して、数字が上向きに転じるとも言えない。この頃には対策という薬の効果も切れてくる。家計のコンフィデンスが1年後にどうなっているか、アジアの景気がどうなっているか、不確実な要素が多い。
    結局、薬が効いているこの1年ほどの間に、どれだけ構造問題(規制緩和、税制など)を解決できるかにかかっていると思う。特にバブルの後遺症をいかに払拭できるか。その意味で、今回の対策に盛り込まれた不動産流動化策は重要である。

(文責・経済政策グループ)


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