景気関連インフォメーション

1998年7月分


第141回 景気動向専門部会・議事概要(7月3日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 「景気動向指数(98年4月分)について」
    経済企画庁 淺見・景気統計調査課長
  2. まず景気の現状を示す一致系列については、10年4月は10.0であり、昨年8月から9ヶ月連続50%を下回っている。景気の厳しい現状を反映しているものと思われる。指標では百貨店販売額だけがプラスであるが、これは前年同月比の値であるから、必ずしも百貨店販売額がいいと考えているわけではない。
    次に先行系列については、昨年10月から7ヶ月連続50%を下回っている。もっとも、4月の指標は、4月24日の総合経済対策を折り込んでいないことに注意する必要がある。今後の動きについては、在庫率が低下していることを考えると、先行指数の水準は徐々に改善していくものと期待している。

  3. 「最近の経済情勢等について」
    大蔵省 松田・調査企画課企画官
  4. まず、法人企業統計調査1〜3月期について説明する。売上高については、全産業は3期連続減収であり、過去最大の前年比減収率となっている。製造業については2期連続の減収である。非製造業については、4期連続の減収であり、これもまた過去最大の減収率となっている。資本金階層別では、資本金10億円以上の大企業についてはマイナス2.2%であるのに対し、資本金1億円未満の中小企業についてはマイナス11.4%であり、大企業と中小企業間の格差が拡大している。
    経常利益についてみると、全産業では2期連続の減益であり、10年1〜3月期のマイナス25.4%という減益率は、平成4年10〜12期以来の大幅な減益率である。
    設備投資の動向についてみると、全産業では10年1〜3月期はマイナスであり、12期ぶりの減少となっている。ただ、製造業については、13期連続のプラスである。一方で、非製造業がマイナス10.8%と大幅な減少である。この背景には、これまで牽引役であった通信業が投資の一巡によりマイナスになっていること等がある。売上高と同様に、大企業と中小企業間の格差が拡大している。資本金10億円以上の階層が0.9%であるのに対し、資本金1億円未満の階層についてはマイナス21.4%となっている。
    資金関連項目の推移(全産業)については、短期借入金と長期借入金の動きが注目に値する。短期借入金10年1〜3月期は前年同期比プラスであるのに対し、長期借入金のそれはマイナスとなっている。長期借入金前年比増加率がマイナスになっている背景には、

    1. 設備投資資金に対する需要が伸び悩んでいることと、
    2. 銀行が長期貸出しに慎重になっていること、
    があると思われる。一方、貸し渋りと言われる中で短期貸出しが伸びている背景には、銀行側も企業側もリスクを取ろうとしないことにより、短期での貸しつなぎ・借りつなぎが起きていることだ。
    次に大蔵省景気予測調査(平成10年5月)について説明する。10年4〜6月期の現況判断は、非製造業・大企業を除いて全て、過去最悪のマイナスになっている。大企業、中堅企業、中小企業のいずれについても5期連続で「下降」超となっている。中小企業については平成3年10〜12月期から27期連続、「下降」超となっている。特徴としては、第一に、前回調査(1〜3月期)よりも悪くなっていることであり、第二に、10年4〜6月期の現状判断について、前回調査時見通しと比べて見方が悪くなっていることであり、第三に、先行きについては経済対策や減税の効果を見込んで改善との見通しになっていることである。
    売上高、経常損益については、上期は減収、減益であるが、下期は増収、増益の見通しとなっている。但し、中小企業については、下期についても減収、減益となっている。
    雇用の従業員数判断BSIについては、製造業を中心に雇用過剰感が強まりを見せている。この中で常に人手不足気味であるはずの中小企業が、昭和58年度の調査開始以来、初めて「過剰気味」超に転じたことが注目される。
    企業金融の動向に関しては、大企業、中堅企業については「きびしい」超が改善しているのに対し、中小企業については「きびしい」超幅が悪化している。中小企業の資金繰りの厳しさを反映しているものと思われる。
    以上2つの調査とも、極めて厳しい景気の現状と、その中でも特に大企業と中小企業の格差が拡大していることを示している。
    7月2日に、ブリッジバンク制度の導入を含む金融再生トータルプラン第2次とりまとめが行なわれた。政府としては、現下の経済情勢に大きな影響を与えている金融システムの安定性に対する不安を取り除いていくべく、金融システムへの信頼回復に最大限努力していく。

  5. 「鉱工業生産指数(98年5月分)について」
    通産省 池谷・統計解析課長
  6. 生産は低下傾向という概況である。生産は前月比マイナス2%であり、4ヶ月連続のマイナスである。生産の減少に寄与した業種としては、一般機械工業、輸送機械工業、鉄鋼業等が挙げられる。
    出荷は前月比0.2%増であり、4ヶ月ぶりの上昇になった。出荷の上昇に寄与した業種としては、電気機械工業、石油・石炭製品工業、化学工業等が挙げられる。
    在庫は前月比マイナス1.7%であり、2ヶ月ぶりの減少である。マイナスに寄与した業種としては、輸送機械工業等が挙げられる。在庫率については、前月比マイナス2.2%であり、2ヶ月ぶりの低下である。
    10年6月の製造工業生産予測調査の結果については、製造工業の6月見込みが前月比1.8%増、7月見込みが先月比0.3%増となっている。但し、実現率でみると、5月の実現率はマイナス1.8%であり、2ヶ月連続の下方修正となっている。また、在庫及び在庫率は、引き続き高水準にあり、在庫調整圧力は依然として高いものとみている。

  7. 「最近の経済金融情勢について」
    日本銀行 早川・経済調査課課長
  8. 雇用指標の悪化の速さと、設備投資の悪さ、特に中小企業の設備投資の弱さの2つが気になることであり、今回の短観を見る際の視点を提供するものと思われる。今回の短観の結果を一言で言ってしまうと、大企業と中小企業の格差の拡大を印象づけるものとなっている。
    業況判断については、主要企業では、製造業は7ポイントの悪化、非製造業については2ポイントの改善となっている。主要企業については9月までは、幾分改善するものと思われる。これに対して、中小企業については、製造業は11ポイントの悪化、非製造業は5ポイントの悪化となっており、今後についても悪化を見込んでいる。業況判断DIの推移をグラフでみると、主要企業については、確かに悪化はしているが、「並みの不況」とでもいうレベルである。それに対し、中小企業については、レベルでみた場合、第一次オイルショック時と同程度であり、決して「並みの不況」ではない。
    製品需給関係の指標については、足元のところは全て悪くなっているが、先行きについては悪くはない。価格判断については、下落の幅が拡大している訳ではない。
    主要企業の売上・収益計画については、製造業、非製造業ともに、10年度は減収、減益の見込みだ。一方、中小企業については、製造業は減収、減益なのに対し、非製造業は減収、増益を見込んでいる。但し、非製造業の増益見込みについては、やや危惧される面もある。特に収益のところで注目して頂きたいのは、いずれについても、上期に大幅な減益のあと、下期にかなり取り返すという計画を立てていることであり、これの実現可能性が大いに注目される。
    設備投資計画については、主要企業の数字はそれほど大きなマイナスではない。問題は中小企業であり、製造業も非製造業も2割程度のマイナスだ。ここで奇妙なのは、普通、過去に投資を多く行なった企業は投資を減らし、逆は逆なのだが、現実は、過去に設備投資をたくさん行なった主要企業はそれほど大幅に投資を減らしていないのに対し、過去にそれほど投資をしていない中小企業が投資を大幅に減らしている。
    雇用について。個人人員判断DIの推移をみると、主要企業の雇用過剰感が中小企業のそれを上回りつつ推移してきているが、中小企業の雇用過剰感は、主要企業のそれと異なり、過去と比べて最も高い過剰感になってしまっている。
    最後に、企業金融について。主要企業については改善しているが、中小企業については、資金繰りは悪化、金融機関の貸出態度は横ばいである。中小と大企業の間でかなりの格差がある。

(文責・経済政策グループ)


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