景気関連インフォメーション

1999年4月分


第149回 景気動向専門部会・議事概要( 4月 2日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 「最近の経済情勢等について」
    大蔵省 松田・調査企画課企画官
  2. 大蔵省が3月に発表した法人企業統計季報(98年10〜12月)と大蔵省景気予測調査結果(99年2月時点調査)の2つを見比べてみると、昨年10〜12月期と本年1〜3月期とでは、局面が少し変わってきていることが分かる。昨年10〜12月期は経済がさらに悪化していた時期だったのに対し、本年1〜3月期は悪化がストップしていることが裏付けられた。

    まず、法人企業統計季報による昨年10〜12月期の状況を説明する。売上高は、全産業で6期連続で前年同期比減収となる中、製造業売上高は1986年10〜12月期以来最大の下げ幅の▲7.2%、非製造業売上高も7期連続のマイナスで、7期連続は1950年に本調査開始以来初めての記録。経常利益は、全産業で5期連続減益となる中、製造業の経常利益は▲42.5%とオイルショック時の1975年4〜6月期(▲70.8%)以来の記録となった。設備投資は、全産業で▲18.7%となり、1962年10〜12月期(▲23.0%)以来の最大のマイナス幅となった。製造業の設備投資は昨年4〜6月期まではプラスの伸び率を維持していたが、7〜9月期に一桁のマイナスとなり、10〜12月期には設備の過剰感の高まりを反映して▲15.9%まで落ちた。非製造業の設備投資は▲20.0%と1953年1〜3月期に▲22.0%となって以来最大のマイナス幅。設備投資を業種別に見ると、特に卸・小売、リース業が不振。全産業ベースの企業規模別設備投資は、大企業は▲8.7%、中堅企業は▲20.7%、中小企業は▲38.1%(調査開始以来の大幅減)と企業規模が小さいほど悪い。資金事情については、金融不安の影響で、支払手形・買掛金は減少、現金・預金は増加という状況が依然として続いているが、借入金を見ると、短期借入金は減少するも、長期借入金は増加しており、短期から長期へのシフトの傾向が見受けられる。また、借入金合計で、前年比は減少しているものの、これはストックベースであり、フローベースでは12月末残高を9月末と比較して借入金全体では3兆7000億円増えている。これらは、中小企業信用保証特別枠等の施策の効果が発現していることを示している。

    次に2月の大蔵省景気予測調査結果について説明する。昨年10〜12月期まで続いた悪化は本年1〜3月期にはストップし、明るい要素も少し見え出した。日本経済の先行きの明るさを指摘する海外の論調でも本調査結果が取り上げられた。本調査の景況判断BSIは「上昇」マイナス「下降」であり、変化の方向を示すもの。この点、日銀短観の業況判断DIが「良い」マイナス「悪い」と、状態を示すものである点で、少し異なる。1〜3月期の現状に係る大企業の景況判断BSIは、10〜12月期の▲30.8ポイントから▲18.3ポイントに「下降」超幅が縮小。但し、これは前期より景況が上昇したと回答した企業が増えたわけでなく、前期から変わらないと回答した企業が増えたことによると推定される。その意味で、方向感としては1〜3月期に悪化がもうストップしているといえる。
    明るさの見える点として、以下の3点が挙げられる。

    1. このところ本調査の発表のたびに「過去最悪」、「過去2番目の悪さ」というコメントが繰り返されてきたが、今回の発表の際にはそうした言葉が一切なかったこと。
    2. 1〜3月期の▲18.3ポイントという数字は、山一、北拓の破綻から始まった金融システム不安の直前時点での調査である97年11月調査の数値に近くそこまで戻しているということ。また、先行き見通しBSIも大企業の製造業が、翌々期の本年7〜9月期をプラスと見通しており、見通しがプラスなのは、これも97年11月調査以来なかったこと。今回の景気後退は、山一、北拓ショックを契機とする金融システム不安を最大の原因とするものと考えているが、今回の調査は、このように現在の景況感がその直前の時点の程度まで戻ってきていることを示している。
    3. グラフにあるように、本調査BSIの水準の底は、景気全体の谷と過去一致してきており、このことから判断する限り、今回の景気の谷は昨年10〜12月期であったということになる可能性もある。

    かと言って、景気がこのまま上昇していくという状況ではない。政策対応としては、以下の6点が挙げられる。

    1. 10〜12月期もGDPの伸びはマイナスだったが、内訳をみると、昨年の公共事業前倒しや4月対策の効果が発現し、公共投資の寄与度は+0.7%と、経済を下支えしていた。
    2. その間、信用保証特別枠拡充措置の効果が発現し始めて、倒産件数も減少し始めた。
    3. 本年1〜3月期に入ってからは、2月に日銀が一段の金融緩和を実施。
    4. 11〜12月に一服感の見られた公共事業も、本年に入ってから再び伸び始め、これに昨年11月の対策の効果も加わり始めた。
    5. 金融システム不安も、3月に資本注入が決まって、一応の目処がついた。不良債権処理は本年3月期で基本的に終了の予定。
    6. さらに今後1〜3月期から4〜6月期にかけては昨年11月の対策、現在の15ヶ月予算の効果が、いよいよ本格的に発現する。

    11年度予算成立直後に次のような総理指示が行われた。

    1. 公共事業について施工の促進を図ること。公共投資の前倒しにより99年上半期の契約済額を、98年上半期の13.6兆円(過去最高値)からさらに10%上回る15兆円となることを目指して、積極的な施行を図る。それも4〜6月期にできるだけ多くの契約を行う。
    2. 中小企業の資金調達について、信用保証枠の追加。
    3. 新年度住宅公庫の基準金利上げ幅について、現在の財投金利では、通常であれば2.2%から2.85%に引き上げられるところ、新年度の第一回目の募集に関しては、その引き上げ幅を0.2%に押さえ、2.4%とすること。

    政府の景気判断についても、2月の月例経済報告では「変化の胎動も感じられる」との総括判断だったが、3月報告では「各種の政策効果に支えられて、このところ下げ止まりつつある」に変化している。仮に、1〜3月期のGDPがあまり良い数字とならなくても、4〜6月のGDPは公共投資が大きく伸びるので、期待できるのではないか。しかしながら、「下げ止まりつつある」と言っても、「各種の政策効果に支えられて」ということがポイントであり、自律的回復というより各種政策効果による下支えが前提という状況。政策対応が民間需要にバトンタッチできるかどうかが課題。そこは産業界の世界であり、産業競争力会議も設置されたが、わが国経済の過剰債務問題に、産業界として相当な決意で取り組まなければならないのではないか。

  3. 「最近の経済金融情勢について」
    日本銀行 早川経済調査課課長
  4. 景気の現状は全体として下げ止まりが感じられる。下げ止まり感を指し示す点は以下の通り。

    1. 実態経済面では、設備投資は減少し続けているが、家計支出は所得環境が悪い中、何とか踏みとどまっている状態。これに公的需要の下支えが加わり、在庫調整が進展、生産が下げ止まってきている。
    2. 金融環境面での変化に対して、2月12日にほぼゼロ金利を実施、政府の信用保証、金融機関への公的資本注入により不安感は和らいだ。その結果、政策的下支えの面は大きいものの、一応小康状態になった。

    経済指標は、細かい点を見ると2月の指標の一部には懸念材料を見せているものもある。

    1. 2月の鉱工業生産指数が下落。消費財出荷指数が家計支出の息切れで弱かったことに起因。所得環境が悪い影響がやはり出た。
    2. 公共投資は、昨年秋に大型集中発注後、一休みの段階にあり、建設財出荷と公共投資関連財出荷の減少をもたらした。
    3. 一方、設備投資関係指標は、資本財出荷・機械受注・建設着工の下落幅が小さくなりつつある。特に中小企業中心に、1〜3月期は落ち方は緩んできているのではないか。ただし、基調の変化があったわけではない。

    以下のプラス材料もある。

    1. 4月の公共工事受注は、2月請負ベースで急増したが、ヒアリングベースでは3月も年度末で高水準で発注継続し、4〜6月もかなり伸びてくる模様。
    2. 昨年末の住宅公庫申込分の着工が2月初めから始まり、3〜4月にはかなりアップすると見ている。3月26日締切りの98年度の第4回申込みでは、全体で60数%増、すぐ着工に結びつく個人住宅分の着工では75%増と高水準。5月末〜6月の着工に動きが出てくるだろう。

    通常は収益や設備投資がDIよりも重要な指標だと考えているが、今回はDIも重要。株価が上昇し、リストラは進むが、失業者が増える。失業者以外の残りの95%の人がシュリンクするか日本経済立直りを期待してプラス方向に動くかという、「気」の部分が重要なため。さらにDI自体が、逆に「気」を動かしてしまう可能性もある。

    金融面では株価は16,000円をキープしている。企業のリストラの進展に対するマーケットの期待を反映している。リストラは二つの側面を持つ。一つは設備投資の減少と賃金・雇用調整の抑制による需要面でのマイナス面。もう一つは、企業の収益改善による日本経済の回復。この二つの力がどう働いてくるか、またこれを資本市場がどう受け止め、企業がどう動くかが重要。

(文責・経済政策グループ)


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