景気関連インフォメーション

1999年9月分


第153回 景気動向専門部会・議事概要( 9月 1日開催)

〜最近の経済動向と今後の見通し(官庁報告)〜

  1. 最近の経済情勢等について
    大蔵省 稲垣・調査企画課政策調整室長
  2. 景気は、民間需要の回復力が弱く厳しい状況にあるが、各種の政策効果の浸透などで、このところやや改善している。需要項目としては、公共投資、住宅建設が堅調で、最近外需もアジア向け輸出に回復の兆しがある。他方、個人消費、設備投資は不振である。各需要項目別の動きは以下の通りである。

    公共投資については、年度下半期にかけて息切れが懸念されているが、支出・契約ベースともに前年度比10%以上の伸びを確保しており、巷間心配されているようなことはないと思う。しかし、景気回復に万全を期すというのが政府の立場であり、7月30日に閣議了解された99年度予算概算要求基準でも、「公共事業等予備費(5,000億円)の活用、15ヶ月予算という考え方に立った平成11年度第2次補正予算の編成も含め、機動的・弾力的な対応を行なう」とされている。宮沢蔵相も発言されているように、4〜6月期のQEが余程はかばかしいものにならない限りは、第2次補正予算を編成し、景気回復を確かなものとしていくこととなろう。

    概算要求基準では、来年度公共事業予算は前年度当初予算と同額とされており、高い水準となっている。なお、重点化を推進するため「物流合理化、環境・情報通信・街づくり等経済新生特別枠」2,500億円が総理枠として、「生活関連等公共事業重点化枠」3,000億円が与党枠として、それぞれ設立されている。公共投資の関連で懸念されるのは、国債増発によるいわゆる「悪い」長期金利上昇である。最近は、景気に対するマインドの改善もあり、むしろ景気回復に伴う「良い」金利上昇への懸念が強くなってきているが、いずれにしろ長期金利の上昇は、住宅投資や設備投資に悪影響を及ぼし、為替レートを押し上げるため、慎重に見守っていく必要がある。

    住宅投資は4〜6月期の住宅金融公庫申込件数の伸びが期待程強くなく、ここに来て一服感が出始めているようにも思える。一戸建ては1〜3月期募集の公庫融資の分が4〜6月期に一気に着工された後、着工件数は落ち着き始めている。一方、販売の好調なマンションは在庫が減少し、今後の新規着工に結びつけば好影響をもたらすことが期待される。

    輸出は、アジア向けが2ヶ月連続で前年比プラスになった。しかし、外需が伸びすぎると貿易摩擦と円高をもたらす怖れがある。なお、大蔵省としては、景気回復の足取りが底固いとは言い難い現時点で時期尚早の円高は望ましくないと考えている。

    設備投資は、いわゆる「過剰3兄弟」が解消されるまでは、顕著な回復は期待できないのではないか。明るい材料としては、アジア向け輸出増に伴い、一部業種で生産が上向き、在庫も減少してきていることが挙げられる。機械受注(船舶・電力を除く民需)も、4〜6月期の見通しが前期比11.3%減だったものが、実績は同6.9%減と超過達成された。さらに7〜9月期は半導体などを中心に6四半期ぶりに前期比プラスの見通しとなっている。

    個人消費の先行きは、雇用の動向が懸念材料である。このところの実質消費支出を見ると、勤労者世帯の方が全世帯より不振であり、雇用不安を反映した動きとなっているとも解釈できる。一方、消費者のマインドは改善してきており、平均消費性向は4ヶ月連続で70%を超え、猛暑の影響でエアコン等の販売も伸びていると聞いている。東北地方など米の作柄の良いことがマインド改善に影響しているとの見方もある。個人的には、百貨店の閉店セールに人が繰り出したり、単身者世帯の実質消費が4%の伸びを示していることに見られるように、消費手控えに疲れが見えているのではないかと考えている。

  3. 鉱工業生産指数(99年7月分)について
    通産省 杉浦・統計解析課長補佐
  4. 7月は生産、出荷、在庫、在庫率すべて前月比で低下したが、製造工業の予測調査では、8月、9月と連続して上昇を予測しており、生産、出荷には底固い動きが見られる。予測値が増加していることもあり、今月は、6月の速報時に述べていた「最終需要の先行きに不透明感があり、今後の動向を注視する必要がある。」とのコメントを削除した。

    7月の生産は、前月比0.6%減となり、7月の生産予測調査の予測値0.5%増を下回ったが、前年比は0.2%増と21ヶ月ぶりにプラスに転じた。出荷も前月比1.0%減となったが、前年比は1.0%増となった。在庫は94.9となり、91年2月の94.5以来の低い数字となった。

    業種別の生産を見ると、一般機械(前月比2.0%減)は、ボイラーが6月のアジア向け輸出や官公需の増加に対する反動で減少するなど、生産減少への寄与度が最も大きかった。化学工業(同2.3%減)も、6月の輸出増に対する反動と定期修理の影響で前月比減少した。その他工業(同2.1%減)では、自動車向け、土木向けの工業用ゴム製品が3ヶ月ぶりに減少に転じ、電子応用玩具も減少した。

    製造工業生産予測調査は8月前月比4.7%増、9月同0.2%増となっているが、7月の実現率、8月の予測修正率がともにマイナスになるなど、企業は手探りしている状態にあると考えている。8月の伸びに寄与しているのは、新車の投入を控えている自動車などの輸送機械(前月比8.1%増)と、情報通信関連を中心とした電気機械(同3.9%増)および一般機械(同10.6%増)である。

  5. 最近の雇用動向について
    労働省 山田・労働経済課長
  6. 7月の完全失業率は4.9%と6月から横ばいとなった。男子の失業率は5.1%と依然として高水準にある。また、非自発的失業者の増加が顕著である。有効求人倍率も、0.46%と史上最低の水準で推移している。

    中高年のリストラ激化が原因と言われている失業率の増加については、離職が増加しているためなのか、新しい職を見つけるまでの滞留時間が長期化しているためなのかを見極めることが必要である。そこで、企業を離職して新規に失業者層に入ってくる人数を示す雇用保険受給資格決定件数を見ると、昨年中は前年比で2桁の伸び率を示していたものが、今年に入り頭打ち傾向にある。また、労働経済動向調査によると企業による雇用調整の実施割合は、1〜3月期から4〜6月期にかけて減ってきている。以上の指標から判断すると、リストラが深刻化していると言うよりは、失業から雇用への入り口が見えない中で失業の長期化が進行しているという状況ではないか。

    雇用者数は、1998年に史上初めて減少し、その後も、雇用の減少幅は縮小していない。しかし、建設業については公共工事増加の効果で減少幅が小さくなってきており、製造業の雇用者数も昨年は前年比40〜50万人減だったものが、徐々に減少幅が小さくなってきている。逆に卸売・小売やサービスはこのところ悪化の傾向にある。新規求人数は7月は前年比1.7%増と、昨年度2桁のマイナスを続けていた頃に比べると底に近づいてきている。パート求人も98年11月頃から前年比で水面上に出てきている。経験則的に見るとパート求人は先行指標であり、今後企業の雇用需要は良くなるという感じもする。ただ、懸念材料は、来春の高卒者への求人受理数が今年度に比べて、3〜4割減となっていることである。新卒への雇用需要は冷え込んだままであり、入職抑制による雇用減少は根強く残りそうである。

    雇用指標は景気に対する遅行指標であり、通常半年から1年位遅れる。このタイムラグをできるだけ縮小すべく6月11日に新規成長分野の雇用創出策などの雇用対策を打ち出した。

(文責・経済政策グループ)


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