軍事公債利払問題に関する声明

昭和23年5月31日
経済団体連合会
金融団体協議会
商工協同組合中央会
日本産業協議会
日本商工会議所
日本貿易会

政府は、懸案の軍事公債利払問題につき、利子支払一カ年延期の採択するに至った。これに対しては吾人は断乎反対しないわけにはいかない。

惟うに本案の実行は財産権の保障感に対して重大なる疑惑を生ぜしめ、国家の信用を失墜させその結果、内外人に与える不安は測り知れないものがある。特にそれが外国資本に及ぼす影響は極めて大きく現に訪日投資家の多くは、このような政策を実行するような国に対して資本を投下することに躊躇するであろう、と警告している。かくては、わが経済再建上絶対的に必要な外資殊に民間外資導入は極めて困難となるであろう。国内に及ぼす悪影響も亦、外資の例に優るとも劣らす深刻であって、このように資本が蔑視される状態では、経済再建上何より必要な資本の蓄積も、企業心の振作も到底期待することができないであろう。

翻って、軍事公債利子支払の停止ないし延期はの政府補償打切りの革命的措置においてさえその及ぼす影響が甚だ大であることを慮って、政府はこの問題に触れることなくして緊急事態を終熄させたのである。しかるに今や各企業再建整備の計画がほぼ完了し、外資の救援と相俟って愈々本格的経済再建の地固めを鋭意進めなければならない時に至って、突如政府自らこのような経済界に不安動揺を誘発する政策を敢えてしようとすることは既に定まったわが経済再建の基本方向を混迷に陥らしめるものといって過言でないであろう。

よって政府は熟慮もって、此の問題に善処し、速かに経済界の安定と内外信用の挽回に邁進されんことを吾人は切望する。

ここに経済各界を連ねる当会の名を以て声明する次第である。

以上