物価体系の根本的再建に関する要望

− 物価審議会(仮称)の設置に関する提唱 −

昭和23年12月25日建議発表
経済団体連合会

おもうに、過日米国政府より呈示せられた経済安定九原則は、さきに政府が決定せる賃金三原則とともに、国民各界層が厳に遵守すべき鉄則であって、これが効果的に行われる場合に、始めて企業の合理化も進められ、国際経済への同調も促され、物価と賃金の悪循環を根本的に断ち切ることによりインレーションも終息し、かくてわが国経済の安定が真に招来されるのである。もとより、これに対し最善の施策が講ぜられるとしてもその結果、経済界にあるいは若干の混乱を派生するであろうことは充分想定されるところであるがこれもわが国に課せられた至上の命題として、大きな必要の前にはある程度やむを得まい。

しかしながら、右の鉄則をして真に効果あらしめ、所期のごとき成果を習得せしめるには、これが前提として、綜合的かつ合理的な物価体系の確立が不可欠の要件なることを強く銘記しなければならない。

顧みるに、本年六月以降数次にわたって発表された改訂新物価は、政府みずからも認めている如く、本格的物価体系を確立するまでの過渡的な補正であった。従ってそれに一時をしのぐ応急的措置たるにとどまり、価格形成ならびに運用上の根本的な不合理、矛盾は、殆んど未解決のまま持越され、賃金安定その他の対策に関しても、根本的な施策は講ぜられず、総じて企業経理は、今日にいたるも不安定な状態に放置されている。

しかるに、最近懸案の主食増配等による食糧事情の好転、復興援助資材の輸入増大等が相俟って生産水準は戦前の六割前後まで回復し、物価上昇歩調は、著しく緩慢化するとともに、労働運動も終戦後の無秩序状態から脱却して漸次健全化の方向にむかいつつあり、一方、単一為替レートの設定ならびに国際経済への同調という喫緊の要請にせまられている。かくていまや、日本経済の自立を目ざし、連合国の適切なる援助に応えて、戦時以来の変態経済を正常経済化することを建前とせる物価体系の全面的建直しを断行しなければならない時に逢着したのである。しかも右の如き体系の再建は、その性格上当然、企業の自主性確立に重きをおき、賃金の効果的安定対策、統制と自由と範囲の調整、補給金の根本的再検討、国際物価への連繋等を含む、総合的見地より採り上げられねばならぬのであって、そのためには、汎く衆智を動員し、万遺憾なきを期し得る如き、民主的にして強力な、物価体系樹立上の新措置が発案されなければならない。

すなわちわれわれは、右の要請に応えるため、ここに官民合同の物価審議会(仮称)を設置し、政府の立案にさいして民間の知識が充分尊重せられるよう、これを忠実かつ的確に運営し、もって今次の経済安定九原則の実効をおさめ得るがごとき、真に権威ある組織の確立を提唱するものである。

以上