[経団連] [意見書]
現行の電気通信事業法の問題点、新電気通信法の骨子に関する
意見募集結果概要の公表について

現行の電気通信事業法の問題点、新電気通信法の骨子に関する意見募集結果

(主な意見の概要・未定稿)
2000年11月17日
経団連 産業本部

  1. 調査の目的
  2. 経団連では、本年9月に、「電気通信分野における競争促進法の早期実現に向けて」をとりまとめ、次期通常国会中に、電気通信分野の競争促進のための立法措置を行なうことを政府・与党などへ働きかける一方、現行の電気通信事業法に代わる新たな電気通信法制のあり方について掘り下げた検討を進めている。その一環として、今般、現行法の問題点や改革の方向性をたたき台として提示し、産業界・専門家など広く意見を伺った(回答45件)。

  3. 意見募集結果のポイント
    1. 法の目的の見直し、行政への競争促進の義務付け
      1. 現行の電気通信事業法の問題点

        1. 競争促進の観点の欠如、技術革新などに対応できない体系
        2. 通信を国家管理する色彩が濃く、時代の潮流に合っていない
        3. 現行法を前提とした改正では対応不可。現行法に拠らない抜本見直しが必要 等

      2. 改革の方向

        1. 競争の維持・促進と利用者利益の保護を目的とし、事後チェックを中心とした新電気通信法へと一新。規制は簡素化すべき
        2. グローバルな動向と整合性のとれた制度整備
        3. 行政は、次のような責務を負うべき−競争の促進・維持に関する義務、法令の運用について透明な手続きで行なう義務・説明責任、紛争について迅速な裁定を透明な手続きで行なう義務、法令の運用状況について毎年公表する義務 等

    2. 事業区分の廃止、市場支配力に着目した規制体系への転換
      1. 現行の電気通信事業法の問題点

        1. 一種・二種事業区分により事業者の回線調達方法を規制。経済的・合理的なネットワークを構築する上で障害。わが国特有の仕組み

      2. 新電気通信法での改革の方向

        1. 事業者の回線調達規制を廃止。市場支配力に着目した規制体系へと転換。事業者に対する事前規制を大幅に緩和。なお、一種・二種事業区分は廃止すべきとの意見が大多数
        2. 市場支配力の有無の基準は、ボトルネック設備の保有、市場シェア、代替サービスの可能性、市場への影響力など、競争の実現状況や阻害性などを踏まえ総合的に判断すべき。なお、「長距離・移動体市場は競争が進展しており、支配的事業者として非対称規制する必要はなく、むしろ全体的な規制緩和が必要」と、「長距離・移動体市場でも市場シェアや参入障壁などを考慮した支配的事業者規制が必要」との両論
        3. 市場支配力を有する事業者への規制は、市場の競争状態に応じて規制レベルに差異を設けるが、競争の進展に応じて規制を緩和すべき
        4. 反競争的行為の禁止、違反した場合の罰則規定。ガイドラインの作成 等

    3. 事前規制の抜本的見直しと事後チェックの充実
      1. 現行の電気通信事業法の問題点

        1. 新サービス提供や業務区域拡大・縮小などに際し、事前に業務区域変更、電気通信設備変更などの許認可を取得する必要。5年間の事業収支見積もりの作成・提出義務。柔軟な事業展開、機動的サービス提供の足かせ
        2. 技術革新が進む中で電気通信役務を3種(音声、データ、専用)に分類。変更する場合、事前許可が必要 等

      2. 新電気通信法での改革の方向

        1. 事前規制の抜本的見直し(事業許可は出来る限り廃止又は届出。役務種類の廃止、契約約款認可の廃止・公表義務、接続協定届出制化)
        2. 事業参入・退出の届出制、公益事業特権を受ける場合は登録制とし相互接続義務、提供義務を賦課
        3. 利用者利益の保護は事後チェックで確保。利用者利益・公正競争を阻害している場合、行政の業務改善命令により是正 等

    4. 行政の透明性向上
      1. 現行の電気通信事業法の問題点

        1. ペティション制度(利用者や事業者が制度・運用の見直しや廃止を申し立て行政が一定期間に回答義務)の未整備
        2. 審議会等の非公開。委員選出や議論の過程が不明確
        3. パブリックコメント聴取の有無の基準が不明確。実施期間が短い 等

      2. 新電気通信法での改革の方向

        1. 国民・企業からの制度・運用の見直しに関する請願に対し行政が一定期間に透明な手続きで判断する義務
        2. 審議会運営の透明性・公正性向上(審議会の公開、詳細な議事録の公開、委員選定基準の明確化)
        3. パブリックコメントの充実(答申案段階での意見聴取、1ヶ月程度の意見聴取期間を設けること、全ての法令・運用マニュアルの改正等に適用、制度評価に関するパブリックコメントを毎年実施) 等

    5. その他、新電気通信法に盛り込むべき項目 等
      1. 定期的見直し条項の整備(法律や法に基づくルールを2年毎に見直し)
      2. 卸事業者という新たな事業者区分を設定することは規制強化であり、問題。むしろ、第一種・第二種事業区分の廃止、回線調達規制の撤廃により、電気通信事業者が公益事業者・自治体等の回線設備を利用できるようにすべき
      3. NTT法の見直しは、「市場の変化に対応した必要な見直しを順次実施すべき」と、「競争促進ルール整備、NTTグループの経営形態の見直し、ユニバーサル・サービスルールの整備とセットで議論すべき」との意見
      4. ユニバーサル・サービスの確保にあたっては、「競争下でユニバーサル・サービスを確保する仕組みを早急に導入すべき」、「ファンド創設先にありき、ではなく、競争政策の導入やNTTの経営のあり方の議論と同時にすべき。どのようなサービスが該当するのか、コストがどの程度かかるのかという議論、情報開示が先決」などの意見
      5. 自由で公正な競争条件の確保に向けて、政治や行政、事業者から独立した規制機関を設置し、市場の競争の監視や紛争の迅速な処理等の機能を担うべき
      6. 光ファイバーについては、「競争下で構築されているのでボトルネック性がなく、指定電気通信設備から除外すべき」と、「ボトルネック性があれば指定電気通信設備に含めるべき」との両論。これに関連して、「光インフラは各事業者の競争により構築されるもの。各事業者の投資インセンティブが働くルールが望ましい。そのためには光インフラの価格などが市場競争などにより決定されるべき」、「伝送媒体・技術、構築時期によって差別する性質のものではない」との意見
以 上

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