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日本経団連 CSRインフォメーション(第13号)

発行:(社)日本経済団体連合会 社会第二本部
2007年12月5日

ISO SRに関するワーキンググループ第5回総会の概要

1.ISO SRに関するワーキンググループ第5回総会の成果

(1)第5回WG総会の開催目的

去る11月5日(月)〜11月9日(金)まで、オーストリアのウィーンでISO(国際標準化機構)のSR(社会的責任)に関するワーキンググループ(WG)の第5回総会が開催され、78カ国、37機関から約390名(含 オブザーバー)が参加しました。
今回の総会は、第3次作業文書(WD3)に対して各国エキスパートから寄せられた7,225のコメントに基づく重要課題を議論し、今後の作業の道筋を明らかにすることを目指しました。特に、総会開催前から懸案事項となっていた(1)起草プロセスの改善、(2)国際的行動規範/権威ある政府間文書/民間イニシアティブの取扱い、(3)専門用語およびその定義について集中的に討議しました。

(2)第5回WG総会における主要な議論

従来のWD3の起草プロセスには、15の起草チームで100名を超えるエキスパートが携わったため、ドラフトの一貫性と整合性を確保することが課題でした。そこで、総会の全体会議の討議の結果、ドラフトの成熟度を効率的に高めるために、ドラフト全体を統合的に起草する少人数の起草チーム(IDTF、Integrated Drafting Task Force)が新設されました。IDTFの構成員は、規格策定グループの座長・共同座長6名、ステークホルダー代表12名、編集委員会1名、覚書締結先のILOと国連グローバルコンパクトから各1名、ISO中央事務局1名の合計22名で、ステークホルダー・バランスに配慮して編成されました。また、IDTFの透明性と既存の規格策定グループとの審議継続性を確保するための仕組みも導入され、今後、規格の質が効率的に向上する道筋が開けました。
権威ある政府間文書/民間イニシアティブの取扱いに関しては引き続き検討を重ねることになりましたが、国際的行動規範の定義に関しては3つの規格策定グループの合同会議の検討結果を踏まえて暫定合意に至りました。
規格全体に渡って共通の理解が必要な用語に関しては、(1)社会的責任に加えて、(2)ステークホルダー、(3)ステークホルダー・エンゲージメント等、合意形成が難航していた多くの用語の定義について暫定合意に至り、大きく進展しました。
また、それぞれの規格策定グループにおいても、事前に絞り込んだ優先的な課題等を中心に討議を重ね、今後の作業の道筋やIDTFに引き継ぐための議論が進展しました。
そこで、総会最終日には、前回のWG総会で暫定合意した規格策定計画通り、今回の総会以降に委員会段階に移行するか否かを審議しました。(委員会段階では、エキスパートが個人の資格でコメントするプロセスから、国単位でコンセンサスを形成してコメントを提出し、各国1票で投票を行うプロセスに移行します。)全体会議の討議では、ISO26000の早期発行を求める市場のニーズを背景に、委員会原案(CD)推進派が出席者の過半数を超えましたが、WD3改訂版の質に照らし合わせて現段階でCDに移行することに反対する意見も継続的にありました。このため、CDに移行するためのコンセンサスを形成するには至らず、ISOのルールに従って第4次作業文書(WD4)を起草して、首尾一貫した成熟度の高いドラフトを迅速に完成させることで決着しました。

(3)日本産業界の貢献

総会において、日本産業界エキスパートは、SRに関する規格が非関税障壁や政府調達要件に変容することを懸念する中小組織に対する配慮を求めました。また、適合性評価を目的としないガイダンス文書を策定するための用語の使用法や、コミュニケーションとステークホルダー・エンゲージメントの概念整理に基づく修正案を提示しました。組織のガバナンスに関しては、環境や労働慣行といった他の6つの課題とは異なり、横断的な性質を有する旨を主張し、受け入れられました。消費者課題に関しては、消費者の権利保護に偏重したトーンを修正するために各国の産業界エキスパートとも連携する等、建設的な提案を行ってWGの議論に貢献しました。
こうした実績の積み重ねを受けて、日本産業界エキスパートの深田静雄氏がIDTFの産業界グループ代表の控え(Alternate)に選出されました。
日本経団連としては、社会的責任経営部会を中心に、ISO26000の質が向上するように今後とも積極的に関与していきたいと存じます。引き続き、会員企業の皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。

2.今後のスケジュール

ウィーン総会の議論に基づいて既存の規格策定グループがWD3改訂版を修正し、12月10日に引継書とともにIDTFに起草作業をバトンタッチすることになっています。その後、IDTFがWD4を作成する過程で、各国のエキスパートに対してコメントを2回求め、第6回WG総会に向けて準備を進めていきます。
なお、ISO26000の規格発行は、当初予定の2009年11月から、2010年9月となる予定です。

<次回WG総会までの作業計画>
12月10日まで既存の規格策定グループが修正
3月7日までIDTFがWD4第1次案作成
4月4日まで第1回コメント期間
5月30日までコメントに基づきIDTFがWD4第2次案作成
7月11日まで第2回コメント期間
8月11日第6回WG総会で議論する優先課題の事前回付
9月1日〜5日第6回WG総会(開催地:チリ・サンティアゴ)
<規格策定計画(想定)>
2008年9月第6回サンティアゴ総会〔WD4からCDへの格上げ決定〕
2008年12月CD回付〔3カ月の各国コメント期間〕
2009年6月第7回コペンハーゲン総会〔CDからDIS(国際規格案)への格上げ決定〕
2009年10月DIS回付〔5カ月の投票期間〕
2010年4月第8回WG総会〔FDIS(最終国際規格案)の準備〕
2010年6月FDIS提示〔2カ月の投票期間〕
2010年9月ISO26000発行

なお、総会の模様につきましては、11月26日に開催した社会的責任経営部会において、エキスパートからご報告いたしました。日本経団連会員企業の方で、当日配付資料をご希望される場合は、事務局までご連絡ください。

※ 資料送付の申込方法(日本経団連企業会員のみ)
電子メールに(1)郵便番号 (2)住所 (3)会社名 (4)部署名 (5)氏名を記入し、主題を「CSRインフォメーション13資料希望」として事務局へお申し込みください。

【本件ご連絡先】
(社)日本経済団体連合会 社会第二本部 長沢、武藤、漆間(うるま)
  電話: 03−5204−1750
  FAX: 03−5255−6255
  電子メール: t-csr@keidanren.or.jp (2007年12月28日まで)
以上

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