はじめに


3年余にわたる不況にも、ようやく明るさが見え、不況脱出の糸口を掴みはじめた今 日、これを本格的な回復に繋げ、21世紀の高齢化社会においても活力ある日本経済を 構築していかなければならない。そのためには、経済社会全般にわたって抜本的な構 造改革を図る必要があり、経団連では、規制緩和の推進を最重要課題の一つに掲げ、 その実現に向けた取り組みを強力に進めている。

土光臨調以来、行財政改革の一環として、経団連は規制緩和を推進してきたが、わが 国に求められる経済構造改革に向け、制度・政策全般にわたる規制緩和を具体的に実 行していくためには、今一度、官民が一体となって規制緩和の意義と効果を明確にし 、国民の理解を深めていくことが肝要である。すなわち、規制緩和を推進することに よって、企業の自由度が高まり、生産性の向上と経済波及効果の大きい新規産業の開 拓を通じ、適正な経済成長の下で、豊かな国民生活を実現していくことが可能になる 。

規制緩和を進めるにあたっては、経団連が提唱した人間重視というヒューマン・キャ ピタリズムの基本理念に立って、われわれ企業自らが、従業員の個性や創造性の発揮 を図り、高齢化や環境問題など国民生活上の課題をビジネス・チャンスとして積極的 に捉えて行動していくことが強く求められる。同時に、政府においても、こうした取 り組みを支える基盤の整備に努める必要がある。

そこで、この提言では、規制緩和の理念と意義、ならびに規制緩和によって期待され る経済効果、とりわけ内外価格差の縮小、新しいビジネスの開拓や育成のあり方とと もに、規制緩和を円滑に進めるための雇用対策のあり方を中心に取り上げた。

以下、第1部では、規制緩和の基本的な考え方について、また、第2部では、規制緩 和の経済効果に関するマクロ分析を行うとともに、雇用対策のあり方についてわれわ れの見解をとりまとめた。


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