おわりに


冒頭に述べたように、わが国の経済は当面の不況から脱出する糸口を掴みつつあり、 これを本格的な回復に繋げていくための処方箋は、既に経済改革研究会報告などに明 確に示されている。世界に例を見ない急速な高齢化が進展する21世紀においても、 充実した福祉社会と活力ある経済社会の両立を図る鍵は、政治・行政・企業・国民が それぞれのレベルにおいて、規制依存から自己責任へと意識を180度転換し、規制 緩和を断行することにある。

この提言では、規制緩和がもたらす経済的効果について、マクロ的な試算を示すとと もに、雇用面での摩擦的な問題に焦点を絞ったが、行政、企業、国民が、期待される 経済効果や雇用増を最大限に引出し、懸念される雇用のミスマッチなどマイナス面を 極力抑えるための努力を、等しく分かち合わねばならない。とりわけ、われわれ企業 には、独創的な企業経営を通じ、新たなビジネス・フロンティアを切り開くという真 の企業家精神の発揮が強く求められ、従業員の個性と創造性を活かす新たな経営シス テムの構築が急務になっている。

経団連が提唱するヒューマンキャピタリズムは、人間重視を基本理念とするものであ り、この命題を単に負担の増加と受け止めるのではなく、前向きに捉え、現在進めら れているリストラを創造的なものに高める必要がある。円高、産業空洞化の懸念、雇 用不安への懸念など解決すべき課題は多いが、現在を変革への出発点として位置づけ 、新しい時代に向けて直面する課題の解決に着実に取り組んでいくならば、次の飛躍 への新たな展望が開けるものと確信する。


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