科学技術基本法の早期制定を要望する

1995年3月28日
社団法人 経済団体連合会


科学技術基本法の制定は、わが国の変革への第一歩である。

わが国は、いま大きな変革期を迎えている。経済力・産業競争力の強化、質の高い国民生活の実現、災害に強い国土の建設、深刻化する人類共通課題(地球環境、食糧、エネルギー問題)の克服に果敢に取り組んでいかねばならない。そのためには、わが国の科学技術基盤を強固なものにし、真理の探究とともに、知的資産の充実とその有効活用を十二分に図ることが不可欠である。

かかる観点から見ると、わが国の研究開発体制は、今ようやく整備が始まったところである。いまこそ科学技術基本法を制定して、科学技術の振興をわが国の最重要課題と位置づけ、国民の合意の下に内外の期待に応えられる研究開発体制を構築すべきである。

科学技術基本法を制定するに当たっては、以下の3点を強く要望する。

第1に、資金の裏付けのある基本計画の策定を義務づけるべきである。基本計画の策定にあたっては、たとえば、5か年で国の研究開発費を欧米並のGNP比1%に倍増することを盛り込むべきである。わが国の科学技術に関しては、基本的な方向を示した科学技術政策大綱はあるものの、それを実行に移すための戦略的な計画が欠けている。そうした計画があってこそ、若者の理工系離れ、国民の科学技術離れをくい止め、さらには、指導層の科学技術に対する認識を深めることも可能となる。

第2に、大学と国立研究機関の研究・教育環境整備のスピードを加速させるべきである。著しく劣悪化してしまった大学と国立研究機関の整備は、徐々に改善に向かっているが、まだ始まったばかりである。また、大学設置基準の大綱化を契機に各大学においても戦後最大の大学改革が進行し始め、その成果が期待されるところである。

第3に、縦割り体制を早急に見直すべきである。わが国の研究開発は、大学、国立研究機関、産業界の独自性が強くて相互の接触が少なく、縦割りシステム、縦割り行政の中で個々に研究開発が進められている。産官学の連携、研究者の交流、省庁間の連携において改善の兆しは窺えるものの、大きな動きにはなっていない。

科学技術基本法は、産業界のみならずわが国の科学技術関係者が待ち望んでいたものであり、今国会において制定されることを切に要望する。


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