日本産業の中期展望と今後の課題

〔第二部〕
個別業界の中期展望と課題

9.工作機械・ロボット


  1. 現状
  2. (工作機械)

    95年現在、工作機械産業の会員数は106社、従業員数は約28,500人である。工作機械は専業メーカーが多い。
    日本の工作機械生産高は、94年で5,541億円、そのうちNC工作機械は4,388億円であり、NC化率は約79%である。輸出については、94年では3,288億円、NC工作機械については2,583億円である。
    また、89年と94年の地域別の輸出構成率を比較すると、アジアが27.3%から44.8%、欧州が30.3%から12.9%、北米が37.9%から37.0%と変化しており、アジアが伸びていることが分かる。なお、現地生産については、増加の傾向にあるものの、工作機械は非常に高精度であるため、主要部品のほとんどは日本から輸出されている場合が多い。
    過去の需給動向については、86、87年は円高不況で受注高が大幅に減少したが、88年頃から急速に回復し、90年には過去最高の1兆4,121億円となった。その後、急速に下降し、ピーク時の40%の5,731億円まで落ち込み、経営状況についても、92、93年にかけて非常に苦しくなった。過去の経験の蓄積やバブル期につけた体力があるものの、これ以上、設備投資が回復しない場合は、依然として苦しい状況が続くと思われる。

    (ロボット)

    産業用ロボットの生産が始まった68年頃のメーカー数は10社に満たない状態であったが、70年には50社、80年には約140社、93年には258社となっている。また、ロボット工業会が76年より開始した企業実態調査によると、76年には産業用ロボットの総メーカー数に占める資本金30億円超の大企業の割合は約17%(約20社)に過ぎなかったが、94年には32%(82社)となり高級ロボットの開発とともに、産業用ロボット業界における大企業の割合が増大した。
    産業用ロボットの生産金額については、86年から87年にかけて円高不況の影響で需要が停滞したが、88年から回復した。91年にはピークの約6,000億円となったが、93年にはピーク時の67%の約4,000億円になった。
    また、85年から94年までの用途別累計出荷台数でみると、組立用、樹脂成形加工用、溶接用、切削加工用、プレス加工用、ダイカスト用の順となっている。需要部門別出荷割合については、輸出、電気機械器具製造業、自動車製造業、合成樹脂成形加工業、金属製品製造業の順となっている。

  3. 課題
  4. (工作機械)

    円高の影響により、国内ユーザー産業の輸出が減り、また、その空洞化が進んだため、国内での設備投資が抑制され、内需が鈍化した。円高下でも競争力のある商品、すなわち高信頼性で低価格の商品が要求されている。
    景気が悪化した際に、標準的なNC旋盤、マシニングセンタなどが過当競争になる傾向があり、今後の対策として、製品の差別化が必要になる。

    (ロボット)

    ロボットは、用途が多岐にわたり、省力効果があるため、不況でも導入される傾向にある。しかし、輸出割合は94年に45%になり、国際市場での競争力も課題になっており、コストダウンが求められている。
    商品としてのロボットについては、高信頼性の他、AIなどによる知能化も求められている。また、知能ロボットの重要性は、今後ますます増大すると考えられており、この分野の研究開発への取り組みは課題である。なお、米国では、大学や研究機関におけるロボットの研究規模は日本の約10倍と言われている。
    また、現在、ロボットの97%が製造分野で使用されているが、今後は、原子力や医療福祉サービス等、製造以外の広い分野で活用することも課題となっている。

  5. 中期展望
  6. (工作機械)

    工作機械の受注高は、95年に7,710億円、96年に9,740億円、97年では9,351億円との予想もある。
    地域別の見通しとしては、欧州については今年(95年)から順調に回復する見通しである。米国については経済が92年から順調な回復過程に入っており、工作機械市場は活発化し、今後も安定した動きとなると思われる。また、アジアでは、韓国、台湾の両国で自動車産業の発展に伴い高性能機械やシステム機など高度な機械の需要増が期待され、中国も92年から急速な増加傾向を示しており、さらに96年から新5ヵ年計画によりさらに浮上してくるものと思われる。その他のアジア諸国でも比較的高い経済成長が見込まれるので、安定的に需要も推移すると思われる。

    (ロボット)

    技能労働者の不足、3K対策等の経済的・社会的環境変化、さらには労働災害防止等の観点から、ロボット化、FA化へのニーズは高く、95年には5,150億円、2000年には9,500億円の生産が見込まれている。
    感覚・認識技術および人工知能の開発と進歩により、今後、ロボットの知能化がますます進展するものと思われ、知能ロボットの占める生産の割合は2000年には24%、2005年には30%と増加することが予測されている。
    また、現在、産業用ロボットの97%が製造業で利用されているが、今後、建設業、鉱業、農林水産業、海洋開発産業、原子力産業、医療福祉サービス業等の非製造分野にも利用が拡大することが予測される。

  7. 政策への提言・要望
  8. (工作機械)

    1. 中小企業新技術体化投資促進税制の適用期限の延長及び拡充

    2. 総合エネルギー政策推進投資促進税制(仮称)の創設

    3. 機械装置の耐用年数の短縮及び残存価格の引下げ

    4. 小額減価償却資産の損金算入限度額の30万円までの引上げ

    5. ソフトウェア開発費用の損金算入

    6. 地価税の廃止

    (ロボット)

    1. 省力化、安全化関連等の民間設備投資を促進するための、金融上の諸制度の拡充及び税制の創設

    2. 法定耐用年数の短縮(現行8〜12年を欧米並みの7年に短縮)

    3. 新社会資本整備の一環として、大学及び国公立研究機関等における教育用及び研究用施設整備の整備充実

    4. 産官学共同研究の推進

    5. 次世代高度生産システム(IMS)及びマイクロマシン技術等先端ロボット技術開発の促進、並びに自然大規模災害防止・軽減のための防災ロボット技術研究開発制度の創設

    6. 高齢者、身体障害者の介護・介助等生活支援及び作業支援等、社会福祉向上のためのロボットの研究開発助成の拡充、普及促進のための金融制度の充実、取得助成制度、税制の創設

    7. 先端ロボット技術、福祉ロボット等に関わる新規事業化(ベンチャービビネス)に対する低利融資、減税等金融税制上の諸制度の創設

    8. ロボット等先端的生産合理化技術に関する国際産業協力のための海外投資促進のための低利融資、減税等金融税制上の諸制度の創設


日本語のホームページへ