日本産業の中期展望と今後の課題

〔第二部〕
個別業界の中期展望と課題

14.情報家電


  1. 現状
  2. 家電のうち、テレビ、ビデオ等の民生用電子機器とファックス、コピー等、家庭にも入り込んでいる産業用機器がボーダーレス化してきた分野を「情報家電」と言うことができる。また、情報産業と通信産業の融合、さらには映像を加えたマルチメディア機器を先端情報家電ととらえることもできる。情報家電は、当初、産業用機器の分野から分化してきており、現状では家庭用より業務用が中心となっているが、これまでパソコン、ワープロ、複写機などが育ってきており、今後、カーナビゲーション、PHSなどの分野が期待できる。
    いわゆる情報家電と称する分野は、1980年には4,460億円の市場だったが、91年には1兆4,930億円に急成長し、その後やや低迷し、93年は1兆2,782億円となっている。また、輸出については、減少を続けており、93年には家電が2兆8,638億円、情報家電が6,088億円となっている。

  3. 対策
  4. 国内空洞化回避としての国際分業として、基本的に新商品開発は日本の役割とし、製品の成熟度によって、順次、海外生産との並行、海外生産生産中心への移行に変化する。情報家電のような新需要創造商品については、次世代のもの作り、超精密加工技術や部品の高集積化が必要とされ、基本的には日本で開発、部品生産、製品生産を行うこととなる。

  5. 中期的展望
  6. 本格的なマルチメディアとして情報家電が家庭に入り込むのは、インフラの状況、消費者の情報機器に対する慣れ・ニーズ等を考慮すると、2010年以降になると思われ、当面は、主にオフィスで利用されている情報通信機器がパーソナルな形態で使われるのではないかと思われる。従って、情報家電というものも、電話、ファックス、ゲーム機、電子手帳などが小型複合化し、また、通信機能をつけて進展していくと考えられる。
    情報家電の発展系が、いわばマルチメディアと言え、映像、音響と情報通信を融合化、統合化させた情報環境であるとも考えられる。マルチメディア時代への流れは、生活、産業、公共の3方面から進むと考えられる。また、従来、個別に進化してきたAVCCが90年代後半までの統合の時代を経て、21世紀の融合化したAVCCのサービスへと向かっていくと考えられる。

  7. 政策への提言・要望
  8. 各省庁で整合性を持った規制緩和が必要である。例えば、CATVの回線を1本引くのに、現在は郵政省、建設省、自治省、警察、NTT、電力会社など、関係する省庁や諸機関に書類を提出する必要があり、また、申請から認可まで、かなりの時間を要している。さらには、マルチメディア時代で考えられるサービスの一つに遠隔医療があるが、現行の制度では医者が遠隔医療で診察しても診察と認められない。郵政行政や厚生行政が、目的を達成すために整合性をもっていかに規制緩和するかが重要である。


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