日本産業の中期展望と今後の課題

〔第一部〕
日本産業の中期展望と今後の課題(総論)

──経済の構造改革による雇用の確保と国民生活の向上を目指して──

おわりに


  1. 日本企業は地球規模で市場を捉え、最適な内外の資源配分・組合せ実現に向けて企業活動の改革や連携を模索している。これは、メガ・コンペティション、経済の高コスト構造、円高の進展等の厳しい経営環境下にあって、正に生き残りをかけた事業展開である。わが国において、規制緩和、新社会資本の整備など、21世紀を目前に控え新しい産業基盤の整備が進まなければ、健全な形での企業の国際展開ではなく、歪んだ形での海外シフトが進むことになろう。

  2. 中長期的かつ自律的な経済成長の原動力は、産業部門の生産性向上をおいて他にない。特に、21世紀に急速な高齢化社会を迎える日本経済にとって、労働人口の減少という制約要因を乗り越える上でも、この生産性の持続的な上昇が死活問題であることは論を待たない。
    政府はこれまで産業保護・育成政策を通じて日本経済の発展に一定の役割を果たしてきたが、今求められているのはこれまでのような秩序と安定を重視した裁量型・規制型の行政ではない。空洞化を回避し、内外調和のとれた経済の実現に向け、企業が自己責任原則の下に内外の環境変化に創意工夫を凝らして自由に挑戦し、その結果として生産性の向上がもたらされるような基盤整備を図ることである。
    要すれば、思い切った経済構造の改革、すなわち規制緩和、税制改革等を通じて、外国企業も魅力を感じるような自由で活力のある経済環境を整備することが、企業努力による産業構造の高度化の進展と雇用の確保、ならびに国民生活の向上につながる道である。


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