首都機能移転の早期実現を要望する

1995年11月8日
経団連・首都問題委員会


東京一極集中の是正、首都防災等の観点から、漸く首都機能移転への国民の関心が高まりつつある。既に立法府ではその意義と必要性、緊急性を認識し90年の国会決議を踏まえて92年に「国会等の移転に関する法律」を成立させ、現在、国会等移転調査会が移転先の選定基準を中心とした最終報告をとりまとめる段階にある。

現在求められている首都機能の移転は、東京を日本の中心におくキャッチアップ型の官主導・中央集権体制を改革し、規制緩和、中央省庁のスリム化、地方分権、更には国土の均衡ある発展へと道を開くものである。国際的には新首都建設を通じ、わが国の変革の姿勢を世界にアピールすることが可能となり、しかも構造改革の一環として内外から期待の大きい内需主導型経済成長の一助ともなりうる。その際重要なことは、首都機能の移転を通じて、人心を一新し、21世紀に向けた国民参加型の新しい国づくりの契機とするという点である。因みに、わが国においては、時代の大きな変革期に首都もしくは首都機能の移転が行われており、 710年の平城京遷都をはじめに、 794年に平安京遷都、1192年に鎌倉幕府、1603年に江戸幕府が成立している。

このような首都機能移転の今日的意義に鑑み、今こそ立法府が中心となって政治的に決断し、具体的な実現プログラムに着手すべき時期にきている。このため、立法府においては、国民のコンセンサスを固めつつ以下の手続きを経ながら首都機能の早期移転に取り組まれることを要望する。

なお東京圏は、首都機能が移転した後も経済面、文化面ともにわが国の中枢として発展を続け、より国際的、先端的、創造的な都市として発展を遂げていくものと確信する。首都機能の移転の推進と同時に、東京圏の再整備に関するグランド・デザインの策定に着手することも重要である。


首都機能移転を実現するためのプログラム

  1. 第一段階(1995年末〜1996年春)
    国会等移転調査会の報告、国会決議並びに移転先選定に係わる法律の制定
    1. 国会等移転調査会の報告(本年12月予定)において、移転先の選定基準は、客観性が高く候補地の選定が円滑に行えるようなものとすべきである。
    2. 首都機能移転を幅広い国民運動として進めていくため、国会自らが首都機能移転の明確な意思を新たな国会決議として示すべきである。
    3. さらに国会は、この決議を踏まえて、首都機能移転を実現するため、新たに移転先選定に関する国会と直結できる専門的な調査機関の設置法を制定する必要がある。移転先の土地投機を防止する観点から、現行の国土利用計画法等を活用し必要に応じて特別立法の制定も検討すべきである。また用地取得を迅速かつ低廉に行う観点から、国公有地や低未利用地等の活用を図るべきである。

  2. 第二段階(1996年夏〜1997年末)
    移転候補地の調査、選定、並びに東京再整備の検討着手
    1. 専門調査機関は移転候補地を選定する作業に加えて、各省庁が来るべき移転に備えて取り組むべき共通の事項(移転準備に関するガイドライン)について検討する。
    2. 同機関は少なくとも1年以上かけて候補地について書面調査や実地調査を行い、97年末までに国会に対し候補地を推薦すべきである。
    3. また同時期に、東京の再整備についても具体的検討に着手する。

  3. 第三段階(1998年春〜2000年以降)
    移転先地の決定、新首都建設関係法の整備、新首都建設開始
    1. 国会は専門調査機関の推薦を踏まえて98年春までには最終的に移転先地を決定する。
    2. 移転先地の決定後、実際に移転を進めるため新首都建設に関する諸法律(「首都移転庁」(仮称)の設置を含む)を整備する必要がある。具体的には、移転先の実情に合わせて取り組み手法や税・財政上の必要な措置を2年程度を目途に制定するとともに、国会、行政機関等の移転に関する基本方針を定める。
    3. そのうえで、2010年までに新首都での国会開催を目指して、2000年までには新首都の建設に着手する。なおその際、行政改革等の進捗状況に合わせて新首都における省庁体制を含む政府組織のあり方を見直す必要がある。

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