今後の情報通信市場のあり方に関する見解

I.問題意識と基本的考え方


  1. 現在、わが国は厳しい経済環境下にある。こうした中で、従来、有効に機能してきた経済社会システムが逆に環境変化への対応の足かせとなっており、将来に向けて、産業の国際競争力の強化等による経済の活力の維持・発展、ならびに国民生活の質の向上を図っていくことが重要な課題となっている。また、企業においては、組織・業務改革による生産性の向上ならびに企業間取引の効率化が喫緊の課題となっている。

  2. これらの課題を解決するための有効な方策の一つは、国民生活ならびに産業活動の基盤を成し、日進月歩の勢いで技術革新が進む情報通信を最大限に活用することである。また、産業分野のみならず公共分野も含めたあらゆる分野における情報通信の利用の積み重ねこそが新たなアプリケーションの開発を促し、ひいては一般ユーザーが主導する高度情報通信ネットワーク社会の基礎を築くと考えられる。さらに、情報通信の高度な利用は高齢化および環境問題への対応、東京一極集中の是正等の課題の解決にも資するものと期待される。

  3. 情報通信の利用にあたって、特に大口ユーザーである産業界の立場からは、産業全体の競争力の強化につながるような料金ならびにサービス両面での一層の利便の向上が求められる。このようなニーズは高度情報通信ネットワーク社会においては、より鮮明になると予想される。それに応えるためには、市場原理に基づく競争を一層促進し、国の内外を問わず高度で多様なサービスが低廉かつタイムリーに提供され、市場の活性化・拡大につながるような環境を整備することが重要である。また、そうすることがわが国産業の高度化につながるばかりでなく、将来の中核的な産業の一つとして期待されている情報通信産業の発展をも促すことになると考えられる。

  4. このような問題意識に立って、以下、今後の情報通信市場のあり方について、われわれの見解を明らかにしたい。なお、経団連では、5年前のNTTのあり方の見直しに際し、「NTTおよび電気通信諸制度のあり方に関する意見」(89年12月)を取りまとめたが、以下に示す見解は、同意見で指摘した諸措置の実施状況に加え、その後の技術革新や企業活動のグローバル化等を背景とする環境変化を踏まえたものである。

  5. 今後の情報通信市場のあり方については、情報通信ネットワーク(ディストリビューション)、情報処理機器(プラットフォーム)、情報内容(コンテンツ)より成る情報通信基盤全体を視野に入れ、その調和ある発展を図る観点から検討する必要があるが、ここでは、特に情報通信ネットワーク、なかんずく電気通信ネットワークをめぐる課題に焦点を当てることとした。
    その際の基本的な考え方として、まず第1に、あらゆる事業者により、あらゆるサービスが、安い価格で提供されるようにすることが重要であり、現時点ではサービス提供に不可欠な地域通信ネットワークがほぼ独占状態にあるという市場構造に鑑み、国内通信市場において公正かつ有効な競争が実質的に確保される枠組みを構築することが不可欠である。
    第2に、わが国産業の国際競争力の強化を図る観点から、国際的に競争力のある電気通信ネットワークを構築することが重要である。
    第3に、高度情報通信ネットワーク社会の実現に向けて、情報通信の利用を一層促進するようなネットワークを構築することが重要である。


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