今後の情報通信市場のあり方に関する見解

III.グローバル競争の現状と課題


  1. 現状と問題点
    1. 情報通信の大口ユーザーである企業の活動がグローバル化していることに伴い、各国通信事業者は世界を一つの市場として捉える傾向がますます強まっており、その市場を国際、長距離、地域まで含めてシームレスにカバーする(いわゆるワン・ストップ・ショッピングの実現)ために、一社でエンド・ツー・エンドのサービスを指向するとともに、事業者間の連携も活発化し、それらの間の競争が激化している。このような動きにわが国通信事業者もそれなりに対応の努力を払っているものの、そのグループを主導するには至っていない。

    2. また、先進主要国における民営化・規制緩和に伴い国内競争が激化し、各国通信事業者は新たな市場を求めて積極的に海外市場展開を図っている。このような中で外国通信事業者がわが国国内通信市場に従来以上に積極的に進出を図る可能性がある。一方、わが国通信事業者の海外市場展開は徐々に進みつつあるものの、欧米の事業者と比べて大幅に立ち遅れている。

    3. 従来、通信分野の国際標準化は、ITU等の国際標準化機関を中心に進められ、わが国はNTT、KDDが中心となって対応してきた。一方、近年、急速な技術革新にこれら国際機関による標準化が追いつかず、コンピュータ・メーカー主導でいわゆるデファクト標準の採用が拡大している。また、標準化の動向如何が情報通信産業の競争を大きく左右するようになっている。このような中で、わが国通信事業者・通信機器メーカー等は国際標準化にあたって、ITU等における公的標準化には一定の貢献をしているものの、デファクト標準については主導性を発揮するに至っていない。

  2. 課 題
    1. IIで指摘した課題に取り組み、国内市場において競争を促進することは、わが国通信事業者の国際競争力の強化に寄与すると考えられる。そうすることは、国際通信コストの一部である国内通信コストの低減をもたらし、結果的に国際通信のユーザーの利益にも寄与する。

    2. また、そもそも通信は国境のないグローバルな性格を有するものであることを踏まえ、わが国通信事業者による欧米並みの国際通信事業ならびに海外市場展開、さらには外国通信事業者のわが国市場におけるより自由な事業展開のための環境を整備することが重要である。

    3. 上記1)、2)を通じて、わが国通信事業者が国際競争力のある低廉かつ良質なサービスを提供することにより、わが国の産業立地環境を改善するとともに、アジア地域における通信のハブを目指すことがわが国経済の発展にとって重要である。

    4. さらに、通信事業者のみならず、通信機器メーカー等の国際競争基盤を拡充するとともに、デファクト標準を含む国際標準化においてわが国が主導性を発揮する上で提携を含めた研究開発に関する国際的な戦略が必要である。そうすることにより、通信事業者ならびに通信機器メーカー双方のグローバル市場における地位が向上し、市場の拡大を通じてユーザーに対して低廉かつ良質なサービスを提供することができると考えられる。


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