現在、橋本首相の私的諮問機関「中央銀行研究会」において検討されている日銀法改正問題は、こうした金融制度改革の重要な柱と位置づけられるものである。金融政策に携わり、また金融システムの安定にも一定の役割を果たしている日本銀行の制度改革は、金融界のみならず、産業界全体にとっても非常に大きな関心事である。
70年代の狂乱物価や80年代後半のバブル経済の経験からも明らかなように、ひとたび過度のインフレやバブルが起きれば、適正な資源配分が妨げられ、産業活動や実体経済に深刻な影響が及ぶ。また、金融システムの安定性が揺らげば、企業の円滑な資金調達が阻害される。
現在、日本経済は、バブルの後遺症からようやく立ち直りつつある。こうした時にこそ、過去の反省を踏まえ、インフレなき持続的な成長の実現、金融システムの安定という課題に取り組むうえで、望ましい中央銀行制度のあり方について、産業界の意向と国際的潮流も踏まえて検討していくことが重要と考え、以下の通り、日銀法改正問題に関する考え方を取りまとめた。
なお、金融制度改革は、日銀法改正問題のみによって完結するものでは決してない。とりわけ金融行政については、保護的規制行政から市場重視型行政への転換、裁量を排した透明性の高い行政の実現、行政によるアカウンタビリティー(説明責任)の確立が強く求められており、その実現に向けて、行政組織のあり方を含めた検討を行う必要がある。経団連では、日銀法改正問題に引き続き、金融行政改革のあり方についても、さらに議論を深めていく予定である。