わが国企業は、激しい環境変化と世界的な大競争時代の中で、競争上の優位を確保するため、コスト削減と付加価値創造を目指して俊敏で、活力ある企業づくりに取り組んでいる。とくに、企業と市場、顧客や取引先との間の距離の短縮、ならびに管理間接部門等の革新(業務の簡素化、効率化、迅速化)などが急務となっている。その鍵を握るのは、研究開発、製造工程から販売、アフターサービスまでの一連の事業プロセスの迅速化、ならびに、管理間接部門、営業部門、ソフトウェア開発部門等の生産性向上である。これまで競争の矢面に立ってきた生産部門では、懸命の合理化努力によりコスト削減や効率化が進んでいるが、それを取引先を含めた効率化・迅速化や顧客へのサービス向上、販売拡大等につなげていくことが求められている。管理間接部門、営業部門等においても、業務の抜本改革と能力向上等により、業務の効率化と付加価値の拡大、すなわち生産性向上を図らなければならない。
そのためには、人事・報酬制度の見直しも必要であるが、同時に、
わが国を代表する企業の多くは、実質的に一人一台端末時代を迎え、パソコン操作研修、電子メールやインターネットの操作研修、紙情報の電子情報への切り替え等に取り組み、情報機器利用意識の高揚、電子メ−ル文化の浸透、部内での情報共有化、単純業務の効率化など一定の成果をあげてきた。今後は、効率的で付加価値の高い企業づくりを目指して、
情報ネットワークを活用して効率化や付加価値の向上を図るためには、情報リテラシーが不可欠である。情報リテラシーとは、情報機器を操作する能力(コンピュータ・リテラシー)にとどまらず、情報ネットワークを活用して必要な情報を収集・整理・加工・分析し、本質をつかんで発信できる能力、業務に精通し、業務に必要な情報を管理・更新・活用して新たな価値の創造を行う能力である。
言い換えれば仕事の能力そのものであり、ワープロソフト、表計算ソフト、電子メール等を使えるコンピュータ・リテラシーにとどまらず、パソコン、インターネット等の情報ネットワークを活用して、状況分析、問題の把握と課題の設定、問題の解決、業務改革、経営管理、論理的な説明・報告等を行えるビジネス・リテラシーの両方が備わった能力である。俊敏で活力ある企業に向けて経営を革新していくためには、情報リテラシーの向上が不可欠である。
情報化文化の醸成、風土の改革
技術、ネットワーク環境等の基盤整備の段階から、情報化の展開・定着、情報活用へ移行する段階を迎えている。企業内においては、社員にネットワークで結んだパソコンを配布し、基本的な操作教育を施すなど、情報活用のための下地は充実しつつある。今後は、情報ネットワークの可能性を十分に発揮させるため、情報を電子化して経営や事業活動、あるいは意思決定に活用することが重要である。あらゆる業務を徹底的に情報ネットワークを活用して行うという企業文化の醸成、風土の改革を進めることが求められている。そのため、経営層のリーダーシップのもとに、経営戦略の一環として、取引先との関係を含めて情報ネットワークで仕事ができるよう、管理間接部門、営業部門等の業務内容や手続き、勤務形態等を改革することが不可欠となっている。
ビジネス・リテラシーの強化
わが国を代表する企業は、次のような問題意識で情報リテラシーの向上に取り組んでおり、こうした取り組みは、経済社会全体の情報リテラシー向上にとって大いに役立つものと期待される。なお、中小企業の中には、大企業以上に情報ネットワークを有効に活用しているところも多いが、情報ネットワークは参加者が多いほどメリットが大きくなるので、大企業においては、グループ企業や取引先などにおける情報リテラシーの向上を支援していくことも望まれる。
経営トップにおいては、情報化の重要性を理解し、情報化の環境づくりに積極的に取り組むとともに、自らが範を示すことが、重要な責務である。すでに、役員会議での報告、説明用資料等を紙からパソコンに移行したり、役員からの指示や役員への報告等を電子メールに変えたりする取り組みが行われている。
また、管理職についても、情報機器の扱いに慣れるだけでなく、情報ならびに情報ネットワークを事業活動、経営管理等に活用していく必要がある。情報活用の有効性と重要性を良く理解し、自部門が企業経営のために責任をもつべき情報の整備・発信に努め、経営に役立てるとともに、自ら関係部門に対しても必要とする情報を要求することが重要である。さらに、業務に精通した中高年層の知識やノウハウを活用できる環境を整備すると同時に、情報ネットワークを有効に活用できる若い人達の提案を受け入れる姿勢が求められる。こうした観点から管理職向けの教育メニューを整備するとともに、管理職の意識改革を促すことが望まれる。
情報ネットワークを使わないと仕事ができない仕組みを作ることも重要である。その際、情報システム部門だけに任せず、役員層が率先して推進することが肝要である。また、既存業務の単なるOA化にとどめるのではなく、当該部門の業務をよく理解している人が業務分析を行った上で、業務内容、仕事の進め方等を改革することが求められている。権限の見直し、明確化、標準化、さらには管理・間接業務の削減、重複の排除を進めるとともに、対話型・並行型の共同作業、他人の作業結果を活かした作業等が容易にできるようにすることも重要となっている。
必要な人が必要な時に欲しい情報を活用できる環境、業務に必要な情報、資料、ノウハウ等をデータベース化し、時間・距離、組織の壁を越えて、効果的(迅速化、効率化、的確化)に共有できるようにすることが求められている。とくに、陳腐化した情報の価値は極めて低いので、情報発信の重要性を認識し、積極的に情報を発信するような意識を醸成することが大切である。情報の鮮度の維持を図るため、日々データが更新され、必要な情報が適時適切に共有されるような環境を整備する必要がある。そのためのインセンティブとして、提供される情報に価格をつけて人事評価へ組み込んだり、情報提供の質を社員の業績評価の項目に追加して給与に反映する、などの取り組みが既に始まっている。
グローバル化の進展や世界大競争の到来等にともない、情報の収集や発信において常に英語等外国語を意識せざるを得ない環境にあり、グローバルなコミュニケーション能力の育成が急務である。また、情報交換、議論、意思疎通等を効果的に行えるようにするため、論理的思考と説明能力、ディベート能力の育成に配慮する必要がある。
社内や取引に関する情報等の電子化ならびにデータベース化を推進する一方、イントラネット、エクストラネットなどのネットワークの上に、個別分野のサブシステムを意識することなく情報が流れ、あるいは情報を引き出し活用できるシステムを整備することが求められている。例えば、顧客情報や顧客への提案事例などを蓄積した営業情報データベース、社員の技能・資格・業務経歴などを蓄積した人材情報データベース、人事総務情報や業務マニュアルなどを蓄積した全社情報データベースなどの各サブシステムに蓄積された情報を引き出せ、活用できるシステム、また、設計・製品開発、生産、受注、販売等の情報がシームレスに流れるシステムの構築が望まれる。情報の流通性を高めるため、データに関する意味・定義の明確化等を図ることも重要である。
また、効率的な営業やゆとりある勤務等のためにワーク・スタイルを変革する観点から、セキュリティに十分配慮しつつ、場所にとらわれず情報の発信、共有、活用ができるよう、モバイル環境を整備する必要がある。
情報の創造と利活用能力の育成
情報技術を活用し、組織や業務の改革、生産性の向上に寄与できる人材を育成するため、
情報マインドの育成
社内教育環境の整備
社員が業務に密着した情報リテラシーを主体的に身につけるようにするため、必要なことを、必要な時に、自分の時間が空いた時に、自分の学習進度に合わせて、自分の席で、自主的に学習できる環境を整備することが求められている。