わが国のエネルギーをめぐる情勢と課題
−省エネルギー型社会の実現に向けて−

4.提言 −結びに代えて−


以上のように、我々は、エネルギーをめぐって、解決すべき多くの課題を抱えている。特に、地球温暖化問題については、その対応如何によっては、経済・社会に及ぶ影響も大きく、また、目標と現実に大きな乖離が生じるような事態になれば、新たな規制の強化やエネルギー割り当てのような計画経済的施策が導入されるのではないかとの懸念すらある。政府・国民・産業それぞれが、問題の重要性と深刻さを冷静に受け止め、主体的かつ一体となって取り組んでいく必要がある。そうした観点から、報告書を結ぶにあたって、特に以下の3点を提言したい。

提言1:エネルギー問題を経営の中心的課題のひとつに

地球温暖化問題等からくる環境制約が、今後一層強まると予想される中で、エネルギー問題は、ますます多くの企業の事業基盤そのものを左右しかねない問題になると考えられる。企業経営のトップにある産業人は、エネルギー問題の重要性を認識し、これを経営の中心的課題のひとつとして明確に位置づけ、長期的な視野に立って計画的に対策を講じていくことが求められる。当面、各業界、企業においては、既に策定している自主行動計画を産業界が果たすべき社会的責務と認識して、着実に実施し、成果を上げていくことが必要である。

提言2:原子力の強力な推進

仮に、原子力立地が計画通り進まなかった場合には、相当量(*)の二酸化炭素をエネルギー利用を断念する等何らかの方法で削減する必要が出てくるが、そうした事態になれば、国民経済と生活に大きな影響が及ぶものと考えられる。当面の目標もさる事ながら、今後、一層強化されるであろう環境制約の下でエネルギー需要を満たすためには、原子力利用の推進は必要不可欠である。しかも、原子力建設のリードタイムの長さを考えれば、時間的猶予は許されていない。国及び事業者の一層強力な取り組みが期待される。また、産業界、国民各層並びに自治体等においても、バックエンド対策を含め原子力の推進を自らの問題として認識し、これを支援・支持していく必要がある。

(*) 原子力発電1基による二酸化炭素削減効果は年間150万炭素換算トン(火力発電対比)であり、
  これは現在、政府見通しにおいて産業部門に期待されている削減量の約1割に相当する量である。

提言3:民生・運輸部門の省エネルギーの徹底

省エネルギーを徹底して推進していくためには、産業部門の取り組みに加えて、エネルギー消費の一貫した上昇を続けている民生・運輸部門の効果的な需要抑制が急務である。これらの部門では、これまでも多くの対策が講じられてきたが、その成果は比較的小さなものに止まっている。国においては、国民の省エネ意識の高揚や交通渋滞の緩和、ビルや住宅の省エネ化など、民生・運輸部門に対する実効ある施策を早急に講じるべきである。

以 上

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