わが国のエネルギーをめぐる情勢と課題
−省エネルギー型社会の実現に向けて−

用語解説


IEA(国際エネルギー機関)

International Energy Agencyの略。第一次石油危機を契機に、エネルギー節約、エネルギー資源の開発促進、緊急時石油融通、研究開発、産油国との対話と協力などを目的に、1974年11月にOECD(経済協力開発機構)の下部組織として設置された機関。現在、OECD加盟国29ヶ国のうち24ヶ国が加盟。

IPP(独立発電事業者)

発電設備のみを所有・運営し、送配電設備を持たない事業会社のこと。従来型の地域独占・発送配電一貫の電力会社と区別するために米国でこの呼称が生まれた。日本では、競争入札により電力会社がIPPと卸売契約を結び、1999年から買電を開始する。

一次エネルギー

原油など、エネルギー転換、加工を行なう前の天然のエネルギー資源。電力のうち、原子力、水力、地熱並びに太陽光・風力等、自然力発電によるものは一次エネルギーに含む。

卸発電

電力を直接需要家に小売するのではなく、電気事業者に販売することを目的とした発電のこと。日本でこれを行なうには、卸発電事業者としての許可が必要であったが、1995年の電気事業法改正で、200万kW以下の発電設備しか持たない事業者の許可取得は不要となった。

温室効果ガス

大気中に含まれる気体のうち、地球上から宇宙に放射される赤外線(熱)を吸収し、地上を温暖な気候に保つ効果を持ったガスであるが、大気中の濃度が高くなりすぎると、地球レベルでの気温上昇をもたらし、気候変動を引き起こすといわれている。COP3では、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄が削減対象ガスとして決定された。

核燃料サイクル

天然に存在するウラン鉱石が採掘、精練、転換、濃縮、成形加工されて、原子炉燃料として使用され、さらに原子炉から取り出された後、再処理、再加工され再び原子炉で使用され、残りが廃棄物として処理処分されるまでの一連のサイクルのこと。

核融合

水素やヘリウムのような比較的軽い元素の原子核が結合し、より重い原子核になる反応のこと。炉の中で核融合反応が起こる条件をつくりだし、反応に伴って放出される膨大なエネルギーを熱エネルギーとして取り出す装置が、核融合炉である。現在、核融合炉のひとつとして、ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor: 国際熱核融合実験炉)の国際的な共同研究が、日本、アメリカ、EU、ロシアで進められている。

規制緩和アクションプログラム

1987年、平常時の石油供給については石油産業の自立的活動に委ねることを基本に示された規制緩和プログラム。プログラムに沿って、設備許可制の弾力化、個別油種生産計画指導の廃止、灯油在庫指導の廃止、原油処理指導の廃止等が実施された。

共同実施

先進国などが、他国での温室効果ガス削減プロジェクトに投資し、その結果削減できた分を自国の削減分としてカウントするもの。温室効果ガスの削減目標を課されていない途上国が相手国の場合には、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)と呼ばれる。

クリーン・コール・テクノロジー

地球温暖間問題、酸性雨問題等への影響を軽減するため、高効率燃焼や石炭を液化・ガス化してクリーンなエネルギーとして利用する技術。

軽水炉

原子炉容器の中に普通の水(軽水)を満たしている原子炉であり、軽水が核分裂反応に伴って放出される中性子の減速材と反応熱を外部に取り出す冷却材の役目を兼ねている。現在、世界の80%以上の原子力発電炉が軽水炉である。

高引火点危険物

消防法で定められている危険物のうち、引火点が130℃以上の引火性液体。引火点の上限は定められておらず、引火性を有する液体(規定された試験方法による)は全て該当し、消防法の適用を受けているが、海外先進国では、上限が定められており、引火性が低く危険度の小さいものについては、取扱者の自主管理に委ねられている。

高速増殖炉

従来の軽水炉が燃料に濃縮ウラン、冷却材に軽水(普通の水)を使用しているのに対し、原子炉の中でウラン238が中性子を吸収してできるプルトニウムを燃料とし、冷却材としてナトリウムを使用する原子炉。発電に消費する以上のプルトニウムを同時に生成でき、これらをさらに燃料として使用することで、天然ウランの利用効率を飛躍的に高めることができる。

コジェネレーションシステム

燃料を燃焼して発電を行なうと同時に熱を供給するシステムで、投入された燃料に対する総合効率が高いのが特徴。電気・熱を別々に発生させた場合の総合効率が40〜50%であるのに対し、70〜80%の総合効率が達成可能といわれる。

自主開発原油

わが国の資本により海外で開発された原油で、1997年度実績では、原油総輸入量の14.9%が自主開発原油である。

需給調整的規制

国内の需要に応じて供給力を調整するための規制で、市場価格の安定化、国内産業の健全な育成、エネルギーセキュリティの確保等を目的としたものであったが、国内市場が海外市場との結びつきを強める中で、その弊害が大きくなり、行政改革委員会においても、廃止の方向で検討するよう指摘がなされている。石油業法においては、事業許可、設備許可等が該当する。

深地層研究

高レベル放射性廃棄物を、極めて長期間にわたって人間の生活環境から安全に隔離する方法として、地下の深い地層(深地層)に閉じ込める方法(地層処分)が研究されているが、そのうち深地層の地下水の挙動や放射性物質の拡散の状況等の調査・研究をさす。

託送制度

送配電設備を所有・運営する電気事業者が、非電気事業者や他の電気事業者の求めに応じて、それらの電力供給先である他の電気事業者や最終需要家に送電する制度。送り先が電気事業者の場合は卸託送、最終需要家の場合は小売託送、送る側と受け取る側が同じ会社の場合(工場から他工場等)は自己託送という。

電源ベストミックス

わが国では、石油、石炭、天然ガス(液化天然ガス)、原子力、水力など様々なエネルギーを発電に使用している。これらの電源は、供給安定性、コスト、さらには環境特性や電力需要の変動に対応した運転のしやすさなどの面で異なった特徴を持っている。このため、これらの特徴を十分に勘案して、最適な電源構成を構築することを電源のベストミックスという。

特石法

特定石油製品輸入暫定措置法の略。特定製品(揮発油、灯油、軽油)の輸入品の需給事情の変動に対して、国内の安定供給確保を目的に、1986年1月に施行された。この法律により、石油精製業者に限って、特定製品の輸入が認められることになったが、1996年に同法は廃止された。

特定供給

自家発電設備を所有するものが、資本関係や同一建物内にある等の密接な関係がある他の者に電力を供給する制度。これは、自家発電の余剰分とみなされ電気事業と認定されない。通産大臣の許可制となっている。

特定電気事業者

1995年の電気事業法改正によって導入された概念で、特定の供給地点における需要に応じ電力を供給する事業をいう。これによって電力会社以外の会社でも最終需要家に電力を供給できるようになった。なお、広く一般の需要に応じて電力を供給する従来型の電力会社は、一般電気事業者と呼ばれる。

燃料電池

電池と呼ばれているが、電気を貯えているものではなく発電装置である。水の電気分解(水+電気→水素と酸素に分解)の逆の反応により、電気を発生させるもので、水素源としては天然ガスやメタノール等が用いられる。

排出権取引き

COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)で採択された温室効果ガス削減のための国際的柔軟性措置のひとつ。気候変動枠組み条約の締約国は、京都議定書の批准により一定の排出権(枠)を持つことになるが、自国の温室効果ガスの排出量が排出枠を超過する場合、他国から排出枠を一定の条件の下で買い取ることができる制度。制度の具体的な内容はCOP4以降に検討されることになっている。

バックエンド対策

原子力の使用済み燃料の冷却・再処理、回収ウラン及びプルトニウムの再加工工程、さらにはそれらの工程から発生する廃棄物の処理処分に係る諸対策。

発電密度

発電設備の特性を表す指標の一つで、発電設備が占有する敷地面積を、同一面積と仮定した場合に、そこで得ることができる電力量。太陽光発電や風力発電といった自然力発電は、原子力や火力発電に比較し発電密度が小さい。

非化石エネルギー

石炭、石油、天然ガスといった樹木や微生物を起源とするエネルギー資源(化石エネルギー)に対して、原子力、水力、地熱、太陽光、風力などを非化石エネルギーと呼ぶ。

プルサーマル

使用済原子燃料から回収されたプルトニウムを軽水炉で利用すること。この場合、プルトニウムはウランと混合した燃料(MOX燃料)という形で使用される。余剰のプルトニウムを持たないようにし、また資源の有効活用を図るという観点から、日本の電力会社が原子力発電所立地地域の理解を得つつ、推進しようとしている。

分散型補完電源

需要地に近接して分散配置される電源の総称。コジェネレーション、風力・太陽光発電、燃料電池などを利用するものが多い。スケールメリットは小さいものの、遠隔地の大規模発電所からの電力に比べて送配電設備の建設をしなくて済むなどの特性もある。

メタンハイドレート

メタンガスが水分子のつくる結晶格子の中に閉じ込められたシャーベット状の物質で、北極圏や南極圏の凍土地帯や大陸沿岸の海底に広く分布しており、近年、日本周辺の海底でも存在が予測され、新たな天然資源としての可能性が期待されている。

モーダルシフト

利用交通機関をシフトすること。小人数、少量単位で行なっている人あるいは貨物の移動を、バス、列車、船等の大量輸送手段にシフトすることで、輸送の効率化を図り、省エネルギー、環境保全を達成しようとするもの。

ユニバーサルサービス

電気・ガス等の公益事業において、国民生活に不可欠なエネルギーを山間部や離島のような地理的な条件や、人口密集地、過疎地等の条件の差に拘わらず、一様に同等のサービスを提供するという考え方。


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