海洋開発プロジェクトの実現について

1998年10月6日
(社)経済団体連合会
海洋開発推進委員会

エル・ニーニョ現象の発生に端を発した地球規模の異常気象が世界各地にもたらした干魃・洪水、また、海底地震の問題等を背景に、海洋に対する国際的関心が高まりを見せている。一方、海洋は、多くの食料・鉱物・石油等の天然資源に富み、21世紀に人類が地球規模での持続的な安定成長を実現していく上で、その開発は全世界的課題となっている。海洋国家であるわが国は、深海域を含めた全地球的な海洋の調査研究を、国際的な協力の下に率先して推進していく必要がある。 特に、下記の海洋開発案件は、21世紀におけるわが国経済の発展基盤の整備に資するとともに、未来に対する明るい夢を育むものである。また、わが国の国際社会への貢献の観点からも重要な意義を有するものであり、その実現が強く望まれる。


  1. 地球深部探査船の開発
  2. 多国間共同研究事業である「統合国際深海掘削計画(IODP)」の下で、わが国の海洋科学技術が果たす役割には、国際的に多大な期待が寄せられている。なかでも、科学技術庁及び海洋科学技術センターが文部省と計画している地球深部探査船は、海底堆積物から過去の気候変動を解読し、また、巨大地震の発生源の直接観測を可能とするだけではなく、メタンハイドレートや地殻内の有用微生物等、広大な200海里水域内の豊富な資源の利用可能性を拓くものである。従って、地球深部探査船の開発に来年度より着手することを強く要望する。

  3. 地球シミュレーターの開発
  4. 近年懸念されている地球温暖化、異常気象等の地球変動を的確に予測するためには、大気、海洋、極域の雪氷、大地、生物圏等の地球構成要素及びその間の相互作用についての知見を、全地球的に統合することが必要である。現在、宇宙開発事業団、日本原子力研究所等が連携して推進している地球シミュレーターの開発は、地球変動予測の実現に極めて有効な手段として期待されている。これらの問題の重要性に鑑み、2001年度以降の運用開始に向けて、来年度政府予算において必要な措置を講じるべきである。

  5. 海洋調査研究体制の拡充
  6. 海洋科学技術センターは現在、海洋調査研究船として5隻を保有しているが、わが国の海洋科学技術水準の維持、国際研究交流の効率的・積極的推進という観点からみて、必ずしも十分ではなく、わが国周辺海域をも含む地球規模の国際的な共同研究活動の強い要請に応えるためには、要員面を含めてこれを増強する必要がある。従って、早急に、海洋研究者の育成並びに海洋調査研究船の一層の整備拡充を推進するよう要望する。

以 上

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