[ 日本経団連 ] [ 企業倫理 ]

第2回企業行動委員会企画部会概要

(未定稿)
日時2004年3月15日(月) 13:30〜15:00
場所経団連会館 10階 1002号室

I.伊藤 アコム ビジネス倫理室長発言要旨

1.アコムについて

アコムは、1936年、神戸で呉服商として創業を開始した。ここから、「モノと人に対する目利きが重要である」という商い上の心構えが生まれ、「信頼の輪」を創業の精神とした。この創業の精神は、業態が呉服商から、質屋業、木材業、そして金融と不動産へと転換し、1978年に不動産事業を分離して現在の形態に至る以降も継承されている。
なお、アコムの社名は、Affection(愛情), Confidence(信頼), Moderation(節度)に由来する。現在の事業内容は、消費者向けローン、クレジットカード、信販、銀行との提携、債権回収とレンタル・広告代理・保険など関連事業からなっており、グループは、子会社16社、関連会社3社等で構成されている。消費者向ローンの利用者数は300万人を超え、グループ全体の従業員は6,000人を超える規模となっている。
ローン事業の店舗数(平成15年9月時点)は、有人468店舗、無人1,248店舗、現金自動設備76,836台(提携含む)等であり、無人店舗は、業界初の取り組みだった。愛称は「むじんくん」で、現在1,705ブース設置している。なお、当社では、業界の発展に貢献するため、この無人店舗のノウハウを、ひろく業界に開放した経緯がある。
店頭公開は1993年、94年に東証二部上場、95年に一部に指定変えとなった。97年には、「上場会社ディスクロージャー表彰」を受賞(2004年に2回目の受賞)、2001年には東京三菱銀行等との提携業務をはじめ、2002年に日本経団連に入会した。

2.ビジネス倫理

創業時より、「信頼の輪」を説き、近江商人の「三方よし」とする商いの心を大切にしてきた。これを受けて、1989年にCIの導入により「企業理念」を制定し、1997年には経営トップが基本方針「これからの企業は、社会的信頼の維持と向上を図り、一般社会やステークホルダーから支持されなければ永続的発展はない」を表明、1998年に「アコムビジネス倫理綱領」を制定し、ビジネス倫理担当役員の任命、社長を委員長とするビジネス倫理委員会とビジネス倫理室を設置、フリーダイヤルやメール等で受け付けるホットラインを設置した。
ビジネス倫理の位置付けは、倫理性と利益性のバランスを取ること、コンプライアンスを包含した概念、規範性を有する最上位概念としている。「創業の精神」や「企業理念」を含む「経営理念」との同質性であると位置づけている。
また、アコムの全役職員、準社員、臨時社員が、企業の社会的責任を全うするために実践するものと定義されており、ビジネス倫理の実践が、ブランド形成の源泉になるとしている。さらに、経営トップと役員の確固たる信念と率先垂範を明確にしている。

3.社内通報制度

社内での相談窓口は「社員相談室(セクハラホットライン)」や「健康相談室(健康保険組合)」も併置されており、ビジネス倫理室が受付けているホットラインには、夫婦仲の相談なども寄せられることがあるが、安心して働くことのできる職場環境を構築することがビジネス倫理の実践の大前提であると理解しており、相談を積極的に受け付けている。
受け付けた内容は、その性格によってビジネス倫理委員会、事故・災害に対応する緊急処理委員会、社内処分を検討する懲戒審査委員会へ付議される。
なお、懲戒審査委員会は、原則各部門の調査により、事務局である人事部が事実確認を行った結果を受けて、処分の程度内容を決める裁判所としての機能を果たしている。
今年度ホットラインに通報された内容を分析すると、パワーハラスメントが45%、服務規律関係が8%、営業の方針や体制についてが10%、その他が37%となっている。また、実名申告が43%、匿名が57%である。男女別では、男性28%、女性45%、不明27%。連絡方法は、フリーダイヤル43%とメールが30%、その他が27%であった。
通報者は、比較的弱い立場に置かれている社員や、パート、アルバイト、派遣社員、そして子会社の取引先などからのものが、増加している。
なお、社員に対するホットラインに関する意識調査では、告発者のプライバシーが守られるか不安である、あるいは公正に審査されるか不安であるという多数の指摘があった。(60%弱)また、認知度について調べたところ、知らないという回答が11%強あり、さらに「非常に利用しにくい」と「利用しにくい」という回答者の合計が20%を超える等、まだ改善の余地があると思っている。

4.定着・浸透のための活動

金融庁の金融検査マニュアルは、各業務部内・営業店毎にコンプライアンス担当者の配置を要請しており、当社では2月末時点で473名を配置している。また、改正貸金業規制法は、貸金業務取扱主任者が法令を遵守させ、業務を適切に実施させるよう、貸金業者を監督させることを求めている。こちらは、1月1日時点で425名を登録している。さらにこれらとは別に、金融財政事情研究会の通信教育で「消費者金融コンプライアンス実践講座」を累計で約1000名、「コンプライアンスオフィサー検定(消費者金融コース)」を805名が合格しており、来年度からはクレジットカード業務についても受講させることとしている。なお、貸金業務取扱主任者とコンプライアンス担当者は、来年度以降、統合していく予定である。
また、職場での教育研修は、「風通しのよい職場風土」の実現を目指し、新入社員研修、担当者研修、管理職研修、役員研修、そして自社事例を中心としたケース事例の提供を行っている。

5.今後の課題

倫理プログラムでは、コンプライアンス担当者の組織化と活動領域の明確化、ビジネス倫理委員会への社外委員の招聘と機能の明確化、ビジネス倫理綱領のCSRの観点からの見直し(ステークホルダーとの関係性の明記)、通報者保護の徹底と社外通報先の導入、通報発生時の社内処理体制の明確化、通報事例の社内開示、ビジネス倫理活動の人事評価への反映などがある。
また、組織的に関連部室との連携強化、リスクマネージメントとの関連性整備、コーポレートガバナンスとの関連強化、さらに、グループ企業への展開などがあげられている。
日本経団連にお願いしたいことは、憲章の第9条と第10条で要請していることを、より具体的に、かつ強調してもらいたい。さらに、手引きで、実務担当者レベルが行動しやすくなるような、具体的な指針として引き続き拡充してもらえれば幸いである。

II.水野全日空法務部主席部員発言要旨

1.ANAグループの行動基準と社内体制

ANAグループは、外部からコンプライアンス体制を導入する特段の要請があったわけでもなく、内部で自発的に検討して行ってきた。
グループの基本理念は、「価値ある時間と空間を創造する」「いつも身近な存在であり続ける」「世界の人々に夢と感動を届ける」というものであり、これに基づき、グループ行動指針6か条を策定し、その冒頭3条部分の具体化のために、2003年、ANAグループ行動基準を策定した。
そのために、当初からグループ全社に適用してきており、内部監査、リスクマネージメント、コンプライアンスの3つをあわせ持ったものにしており、グループ各社の役職員が、全日空法務部を窓口として利用している。モニタリングは、アンケートと個別監査で行っており、監査は、3年で全ての会社、部署を回ることにしている。

2.コンプライアンス・プログラム

全日空のコンプライアンス・プログラムは、年間事業計画の中に組み入れられており、年度課題の設定、教育研修、モニタリング、年度評価のPDCAを回すことを前提としている。また、社員の繁閑に合わせてプログラムを受講できるよう、eラーニングを導入している。ヘルプラインについては、基本的に何でも受けることにしている。

3.グループ会社への展開

ANAの場合、はじめからグループ全体を対象として展開してきたので、共通の行動基準に従い、共同でグループコンプライアンスを推進することを目指している。また法務的解決能力の向上のために、グループ共同で顧問弁護士制度を導入した。海外への展開は、現在法令適合チェックを実施中である。取引先への浸透も、現在検討中である。

4.コンプライアンス体制

社長の下に副社長が委員長を兼務するコンプライアンス委員会があり、その下に法務担当役員が務めるチーフコンプライアンスオフィサー、さらに各社の代表者または常勤取締役が務めるコンプライアンスオフィサーがおり、現場には部課長クラスのコンプライアンスリーダーがいる。事務局は全日空法務部が務めている。
業務上の管理部課長クラスが任命されているコンプライアンスリーダーの役割は、職場におけるコンプライアンスの推進、教育・研修、啓蒙活動、相談受付、不具合点の摘出と改善である。リーダーには、ビジネス実務法務検定3級合格を義務付けている。

5.教育研修

教育研修の中心は、コンプライアンスリーダーとオフィサーに対する研修であるが、他にも階層別研修、職場研修会、分野別・対象別セミナーなどを定例化して開催している。
さらに、イントラネット上のホームページを利用した周知やeラーニング、アンケート、事例紹介、モニタリングなどを行っている。

6.ヘルプライン

ヘルプラインは、グループ全体の窓口として、全日空法務部が事務局を務めており、派遣社員にも対応し、匿名通報も受けている。ただし、秘密厳守や不利益取扱などが起こらぬよう務めている。万一不利益が及んだ場合には、回復措置をとることと、窓口担当者を処分することが定められている。

7.今後の課題

はじめからグループ全体に展開しているが、なかなか全員には行き渡らない。意識を高めることは難しいが、徹底して繰り返す必要がある。よく、トップの率先垂範と言われるが、本当のトップはやっている。むしろ、その下の部門長が重要であるが、なかなか正確に理解してもらえない。
風化対策としては、各社の問題の事例をシェアすることで、認知するケースの数を増やすことが考えられる。

以上

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