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1%クラブニュース (No.58 2001 夏)

APA 芸術振興協会
事務局長 堤 康彦

 いま、小学校は大きな変化の波の中にいます。来年度から完全週5日制、そして新学習指導要領が本格スタートするからです。新しい指導要領では子どもたちが「生きる力」を身につけるよう、「総合的な学習の時間」という、これまでにない新しいタイプの授業が導入され、その多くが各学校の主体性に基づいて組み立てられていく予定です。その「総合的な学習の時間」を始めとする小学校の「授業」で、プロフェッショナルの芸術家が教員と協力しながら子どもたちのためにワークショップを実施する、これが、APA(芸術振興協会)が昨年からスタートさせたASIAS(エイジアス:Artist's Studio In A School)プロジェクトです。このASIASに協力してくれる芸術家は、音楽・美術・ダンスなどの分野で先端のアートをいま現在創りつづけている気鋭のアーティストたちばかりです。彼らは、専門技術を持っているばかりでなく、子どもたちに新しいものの見方を気づかせたり、子どもたちの豊かな発想を引き出したり、他者の表現や価値観を認め合うことを教えたりすることが得意です。教員と子どもたちとの関係では生まれない「特別な」授業がASIASで実現するのです。

 個人的な話になりますが、私はもともと教育の世界の人間ではありません。と言って、生粋のアート界の人間でもありません。大学も経済学を専攻してごく普通に企業に勤め、たまたまその企業が「新宿パークタワー」という52階建ての超高層ビルを建設することになり、そこのホールやギャラリーを運営する仕事に就いたのです。そこで自主企画のアートプログラムシリーズを立ち上げ、数々の舞台公演、コンサート、展覧会などを企画しました。でも1つの壁にあたりました。いくら素晴らしい芸術企画を実施しても(特に新しい現代アートの場合)その観客の中心は、限られたアート好きの人たちなのです。つまり、日本の普通の大人たちにとってアートは身近でもなく、ましてやその人の人生でアートが必須不可欠だと思っている人など、ごく僅かなのです。

 高度成長期ならともかく、平成不況を経験して「経済大国ニッポン」とばかり喜んでいられなくなった現在、これで良いのか…。これからの国際社会において文化芸術に無関心なビジネスマンが本当に良い仕事ができるのか。いろいろ考えるうちに私は、感性の豊かな子ども時代に、アートと幸せに出会うことが大切だと思うようになりました。ちょうどアート界でも社会の人々と関わることを重視する芸術家が増えてきた時期で、思いきって私は10年間勤めたその企業を辞め、ASIASを立ち上げました。

 小学生にとって「家庭」の次に日常的な場所は「学校」ではないでしょうか。日常的な空間と時間において、本物のアートやアーティスティックな考え方に出会うことが大切です。一方、子どもたちの教育を学校の教員まかせにしておく時代は終わりました。学校外の人間がもっと積極的に学校教育に関わっていかなければなりません。

 ASIASはまだスタートしたばかりで2000年度は7校で25時間の授業を実施し受講生徒数も約350人に過ぎませんが、今年来年と実施校を増やし、近いうちに年間50校、受講生徒数も3000人ぐらいの規模を計画しています。ただ、学校側の教育予算が確保できない現在、その運営資金は複数の企業協賛などにより賄っていますが、厳しい状況が続いています。多くの方々のご支援をお願いいたします。

〒150-0036 東京都渋谷区南平台町4−13南平台ハイツ3階
TEL:03-5456-8280 FAX:03-5456-8281

*APAではASIASを中心とする事業を独立させ、「特定非営利活動法人芸術家と子どもたち」を設立し活動を更に充実させていきます。


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