[ 日本経団連 | 企業人政治フォーラム ]

「政治」を良くするために何をなすべきか


今回のテーマを見て、奇妙に思ったことがある。それは意図的であるか否かは別として、誰のために「『政治』を良くする」のか、対象者が明確にされていないことだ。

そもそも政治の良し悪しは、個々の人々のRaison d'etreに照らして問われるべきものである。都市部のサラリーマンからは目の敵にされる「55年体制」ですら、族議員や地方の土木工事業者にとっては調和と安寧のある優れた政治システムであったろうし、あのおぞましい北朝鮮の政治体制ですら、当地の「上流階級」にとってはきっと地上の楽園に違いない。

対象者が明確でないテーマに答えるのは至難の技だが、現下の政治や政局について語り合う「企業人政治フォーラム」で、孔子の説く古代聖王の道を讃えても何ら意味はない。そこで今、新聞を賑わしている高速道路の民営化問題や、成田の上場をはじめとする空港問題を念頭に、筆者とその周辺の人々に焦点を絞って考えてみたい。

道路や空港のような国民共通のインフラを、何故に政府が税金で作ってきちんと管理しないのか ―― 国民は単なるユーザーではなく、タックスペイヤーでもあるというそのレゾン・デートルを政府は完全に忘れ去ったのではないかとさえ思われるが、それはさて置き、最近のこうした問題に関する議論の進捗状況を聞いていると、いかに「政治」が地域毎の利権争いに矮小化され、私物化されているかがよくわかる。

しかし、政治が私物でなく公物であることは、いつの時代にも不変の原則だ。我々は、現下の変革のダイナミズムの中で自らを厳しく律し、単なる陣取りゲームに埋没してはならない。市場の規律の中に投げ込まれることによってパブリックな意思決定が貫徹する仕組みが取り戻せるかもしれない、と期待するのは本末転倒で嘆かわしいことではあるが、こうした動きを寛容に前向きに取り込んでいくことこそ、たぶん「『政治』を良くするためになすべき」第一歩なのだろう。

以 上

この小論文は、企業人政治フォーラム主催の政治集中セミナー出席者からご提出いただいた参加者個人のご意見です。

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