企業人政治フォーラム速報 No.18

1997年6月26日発行

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倉田前自治大臣、地方分権・地方行革のあり方を語る
−政経懇談会−

5月20日の政経懇談会で、倉田寛之参院議員・前自治大臣は、地方分権・地方行革のあり方などについて語った。

■地方自治体は、合併の自主的努力を
現在3,000以上ある自治体を、合併により少なくとも1,000ぐらいまでにするよう地方自治体は自主的努力をすべきだ。また、地方分権の議論では、必ず地方の受け皿としての行政能力が問題になるが、まずは1度任せてやらせてみた方がいい。

■地方分権の進んだ姿を住民に示すことが重要
地方の住民は、自分たちの生活が、地方分権の促進によりどう変わるのかが具体的によくわかっていない。
例えば、現在、縦割り行政の弊害で役所の窓口でたらいまわしにされることがあるが、そうした窓口の一本化が可能なことや、文部省と厚生省で管轄が違う幼稚園と保育所の行政管轄を一元化できること、さらに、文部省のカリキュラムに沿った全国一律の教育に地域の歴史や文化教育をとりいれることができることなど、地方分権によって可能となる具体例をもっと国民に示さなければならない。

■住民基本台帳ネットワークシステムの構築
ICカードに姓名、性別、住所、生年月日の基本的な4項目を登録する住民基本台帳ネットワークシステムは、すでに法案を提出できる直前まで準備はできている。このシステムの導入により、転出入手続きや住民票写し交付業務などが削減でき、年間約5,000万時間(約3万人分の労働時間に相当)の節約につながる。また、将来的には、このICカードで健康保険、年金などの管理も可能となるし、国内どこでも投票ができ、在外邦人の投票も可能となるなど、選挙制度にも変革をもたらす可能性を秘めたものである。
現在、自治省が省庁間調整を行っているようだが、なかなか実現しない。自治省でできないようであれば、参議院の議員立法で提案していきたい。

森山眞弓衆院議員、教育改革のあり方を語る
−政経懇談会−

6月4日の政経懇談会で、自民党文教制度調査会長で元文部大臣の森山眞弓衆院議員は、橋本総理が進める6大改革の1つである教育改革に関し、自民党の取組状況や改革のあり方などについて語った。

■教育の振興に力を尽くした先輩方の先見性に敬意を表する意を表する
明治維新後、日本が近代国家の仲間入りができたのも、ひとえにその基礎に義務教育の普及があったからだ。当時、ややもすれば産業振興や軍備増強にのみ重点が置かれがちななかで、教育だけは譲れないと力を尽くした関係諸先輩方の先見性には心から敬意を表したい。

■教育の量的拡大は限界
戦後、義務教育が6年から9年に延び、10年ぐらい前に高等学校への進学率が90%、大学への進学率も40%と上昇し、教育の量的拡大の限界が見えてきた。この量的拡大の弊害として、いわゆる画一的な偏差値教育になじめない子供たちがいじめや不登校をおこすという問題がもち上がってきた。

■教育基本法と学校教育法の見直しが必要
従来の教育改革では、教育基本法はいじらないのが前提であったが、今の教育基本法は占領軍の指導でできたものであり、世界平和への貢献ということはでてくるが、自国に誇りを持つ国民の育成だとか、国の発展に寄与する教育の推進ということはまったくでてこない。
また、学校教育法も中学校に関する事項は非常に少なく、中学校を卒業した時点でどういう国民になってほしいかが具体的には何も示されていない。

■自民党ならではの改革案をまとめたい
以上にのことは、文部大臣が諮問する中央教育審議会が扱うには必ずしもふさわしいとは思われないので、自民党ならではの改革案をできれば8月中にまとめたい。

大島理森衆院議員、国会の現状と問題点を語る
−政経懇談会−

6月16日の政経懇談会で、大島理森衆院議員・自民党国会対策副委員長は、国会の現状と問題点、さらにその改革の方向性について語った。

■日本の国会の特徴
日本の国会の特徴は、第一に会期主義、第二に委員会中心主義、第三に事前調整型政治ということができる。
法案は自民党、次に与党3党で調整した後に閣議決定され、国会に提出される。そのため、国会の舞台に上がったときは、与党は既に議論する必要がなく、野党しか質問しない。それが、国会が面白くないといわれている原因の一つとなっている。

■国会の問題点と改革の方向性
まず第一に、事前調整を中心とする国会の今の審議プロセスを見直す必要がある。委員会を実質的なディベートの場とすべきだ。ただ、これには、自民党の政務調査会の部会長や族議員は絶対反対するだろう。そこで、英国のように100人近くの大臣・副大臣等が入閣し、自分たちで国会運営もすれば、答弁もするという形に変えれば、少しは面白くなるのではないか。
第二に、議員内閣制のもとで、立法機関である国会と執行機関である行政の関係がどうあるべきかという問題がある。行政と国会の間にいい意味での緊張関係をつくるための監視機能、評価機能というものが必要なのではないか。
第三に国会が情報化への対応、あるいは情報公開の促進という問題をどう考えるのかという問題がある。まずは、手始めに各委員会にテレビを入れて、国民に常時、委員会の様子を流し続けることを実現したい。そうすれば、国民に見られているということで居眠りもなくなるであろうし、ディベートも活発になるのではないか。

■今後の政局
今国会では、男女雇用機会均等法やNPO法案など、法文中に「市民」とか「人権」という言葉が出てくる法案が増えたが、これは国民のニーズを反映したものだ。また、議員立法が増加しているが、いい傾向だ。国民のニーズが多様化し、政治の場で問題解決を求められる事柄が増えている中で、先の政治改革で志向された二大政党制が果たして日本の政治になじむのかという疑問が生じている。政党乱立、多党化という傾向は当分続くのではないか。ただ、一部を除いて、各政党とも極端に違う対立軸を持っているわけではなく、日本が直面する問題に対して、共通した問題意識は持っている。自民党は、これら共通した問題意識を持ってはいるが、価値観が少しずつ違う政党やグループの意見をどう整理統合していくかという課題に取り組まなければならない。
今後の日程としては、9月3日か9日頃が総裁選の告示、同じく9月9日頃、臨時国会の召集になるのではないか。総裁選は橋本総理一人の立候補で自動的に決まると思われる。臨時国会開会までの間に内閣改造と党役員人事に手を付けるではないか。
秋の臨時国会を現在の与党3党の体制で乗り切れるのかという声があるが、臨時国会では、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の法律化の問題は出てこないと思う。中心は財政再建法である。むしろ、ガイドラインに伴う諸法、財政再建法に伴う諸法などが上がってくるのが、来年の通常国会であり、しかも来年の夏には参議院選挙ということから、その時に、今の「自社さ」の体制でやれるかどうか難しい局面を迎えるのではないか。


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