企業人政治フォーラム速報 No.19

1997年7月10日発行

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今後の商法改正について
太田誠一衆院議員 −政経懇談会−

6月23日の政経懇談会で、太田誠一衆院議員(自民党法務部会商法小委員長)は、商法改正問題ならびに今後の政局について語った。
以下は、その概要である。

■先の通常国会における商法改正
今回の議員立法による商法改正(ストックオプション導入、自社株取得の規制緩和)は、議員が一貫して法務省をリードしてきたと自負している。また、橋本総理を説得し、総理から法務大臣と大蔵大臣に対して議員提案に協力するよう指示が出て、両省の事務方に細かい作業をすべて任せることができたのがスムーズにできた要因である。

■株主代表訴訟の見直しは企業風土の改革とセットで解決すべきで解決すべき
株主代表訴訟制度の改正については、理屈でいったら簡単なことだが、企業不祥事が相次ぐ中、マスコミはこれに手をつけることは断固反対という立場である。やはり、コーポレート・ガバナンスの問題も含め、日本の企業風土の改革との組み合わせの中で解決していかなければ難しい。

■コーポレート・ガバナンス
コーポレート・ガバナンスとは、ボトムに株主がいて、トップに経営執行部がいるという企業組織の中で権力が偏在し、組織としての自己統治能力がなくなるのをどのように防ぎ、バランスをとっていくかという問題である。
取締役会の定義は、日本と米国ではまったく違うが、これは法律できちんと整理する必要がある。米国にまったく合わせてしまうのも1つの方法だが、日本には監査役制度があるので、それをうまく活かし、たとえば、取締役会を定義するときに、取締役と監査役を含むものと定義し、その取締役会の下部機関として、社外監査役が過半数を占めるような訴訟委員会とか、監査委員会などをつくれば、十分米国の制度に合わせたものができると思う。
また、株式会社の組織としては、他のほとんどの組織と同様に、意思決定機関と執行機関は分けるべきだ。取締役会は、意思決定機関であり、執行機関ではないと考える。したがって、メンバー構成はダブルことがあっても、意思決定機関と執行機関は泰然と分け、独立した機関とすべきだと思う。
ただ、ここまで考えると、今の商法の前提を根本から覆すもので、来年の通常国会に出せる話ではなくなる。そこで、当面の株主代表訴訟を含む暫定的な改正と、株式会社全体の制度の見直しに関する議論をわけて考えるべきで、後者は2〜3年かけて相当議論する必要がある。

■今後の政局
橋本総理の自民党総裁再選はほぼ決定されたようにマスコミなどではいわれているが、まだこれから何が起こるかわからない。ただ、私自身は橋本さんに続けてもらうことが一番いいと思っている。
また、マスコミでは、「保保連合」対「自社さ」の闘いなどと囃し立てているが、客観的にいえば、そのようなものはない。自民党議員の90%以上は「保保連合」などに何の興味もない。
現在、衆議院の自民党は246人だが、年内には過半数を突破し、252人に達する見込みである。

■コーポレート・ガバナンスの問題は慎重に対応を
(出席者側からの意見)
米国のコーポレート・ガバナンスは少し行き過ぎており、必ずしもうまくいっているとは思われない。この問題は、慎重に方向を誤らないようにやってほしい。株主代表訴訟は、なるべく早く、悪いところは直してもらいたい。


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