7月15日の政経懇談会で、山崎拓自民党政調会長は、今後の政局並びに重要政策課題について語った。
■「自社さ」体制は効率的に機能
第140回通常国会では、戦後最高の質および量の法案を処理した。これは、現在の「自社さ」の体制が極めて効率的に機能した結果である。沖縄の特措法の問題で社民党が反対したのが目立ち過ぎたため、社民党がいろいろ反対したような印象を与えているが、反対したのはこれだけで、これ以外はすべて賛成した。とりわけ野党がすべて反対に回った予算に賛成してくれた意義は大きかった。
■年内は現体制で乗り切れる
6月17日に財政構造改革の骨子を閣議了承したが、これは通常国会期間中ずっと与党3党で協議してまとめたものだ。したがって、「社さ」は秋の臨時国会での財政再建法案及び来年の通常国会での予算の成立に責任を負っている。したがって、国政運営は少なくとも年内はうまくいくことは間違いない。
■ガイドラインは波乱要因
ただし、年内というわけは、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し問題があるからだ。ガイドラインの見直しは、臨時国会で議論はするが、国会承認は必要ない。しかし、来年の通常国会では、それを実効あらしめるための立法措置が必要となり、そこで社民党がどうでるかが懸念される。先の特措法の時のような事態になる可能性も相当程度あると覚悟している。ただ、特措法のときは時間がなかったが、今回は今から時間をかけて協議していく。
■重要政策課題
- 財政構造改革
来年度予算は、財政構造改革の基本方針におけるキャップの範囲内で編成する。例外は、社会保障、科学技術、沖縄の3つであるが、社会保障は当然増8,500億円を3,000億円に押え込む。そのため、医療費を大幅に削らなければならず、具体的には、薬価基準、診療報酬制度、老人医療保険制度の3本柱の見直しを行う。これは、ある意味でガイドラインよりも厳しい問題だ。
科学技術は唯一予算を伸ばす分野で、これは経済構造改革のインセンティブとして位置づけている。財政再建はそれ自体が目的ではなく、活力ある経済社会を取り戻すための一便法にすぎない。
- 経済構造改革
経済構造改革は規制緩和が中心となるが、なかでも情報通信、物流、医療福祉の分野はスケールの大きいものであり、これらに活力がでるよう5,500億円の調整枠を設けて、予算上の配慮をしていく。
- 金融システム改革
金融システム改革は広い意味で経済構造改革の一環であり、一体で進めていく。外為法改正により、1,200兆円の国内金融資産の海外流出が懸念されるが、海外送金に関する資料情報制度を秋の臨時国会で措置する。
- 行政改革
行革会議は、旧盆明けに省庁再編のプランを提出するが、これは議長である橋本総理がみずから出すもので、当然強い拘束力を持つ。一方、党では特殊法人改革を進めているが、政府系金融機関の整理・統合は財投問題の入口となってくる。その際、現在の金融不安が続けば、ますます郵貯への傾斜が起こるが、少なくとも、これをどうコントロールするか検討しておく必要がある。
- 税制改革
金融ビッグバンを進めるにあたって、有取税や株式譲渡益課税等の税制が問題となる。なかでも、法人税は最大の問題である。昨年は見送りとなったが、先般の経団連との会合で、課税ベースの拡大について検討の余地があるとの感触を持った。税率は、37.5%を35%くらいにし、1兆円程度下げないと意味がない。財政再建中で厳しい状況だが、国際化のなかで、税制も当然国際水準にまで引き下げる努力をしなければならない。これは、政治の責任で対処していきたい。