企業人政治フォーラム速報 No.20

1997年7月30日発行

PDFファイル版はこちら

今後の政局と重要政策課題について/
山崎拓自民党政調会長 −政経懇談会

7月15日の政経懇談会で、山崎拓自民党政調会長は、今後の政局並びに重要政策課題について語った。

■「自社さ」体制は効率的に機能
第140回通常国会では、戦後最高の質および量の法案を処理した。これは、現在の「自社さ」の体制が極めて効率的に機能した結果である。沖縄の特措法の問題で社民党が反対したのが目立ち過ぎたため、社民党がいろいろ反対したような印象を与えているが、反対したのはこれだけで、これ以外はすべて賛成した。とりわけ野党がすべて反対に回った予算に賛成してくれた意義は大きかった。

■年内は現体制で乗り切れる
6月17日に財政構造改革の骨子を閣議了承したが、これは通常国会期間中ずっと与党3党で協議してまとめたものだ。したがって、「社さ」は秋の臨時国会での財政再建法案及び来年の通常国会での予算の成立に責任を負っている。したがって、国政運営は少なくとも年内はうまくいくことは間違いない。

■ガイドラインは波乱要因
ただし、年内というわけは、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し問題があるからだ。ガイドラインの見直しは、臨時国会で議論はするが、国会承認は必要ない。しかし、来年の通常国会では、それを実効あらしめるための立法措置が必要となり、そこで社民党がどうでるかが懸念される。先の特措法の時のような事態になる可能性も相当程度あると覚悟している。ただ、特措法のときは時間がなかったが、今回は今から時間をかけて協議していく。

■重要政策課題

  1. 財政構造改革
    来年度予算は、財政構造改革の基本方針におけるキャップの範囲内で編成する。例外は、社会保障、科学技術、沖縄の3つであるが、社会保障は当然増8,500億円を3,000億円に押え込む。そのため、医療費を大幅に削らなければならず、具体的には、薬価基準、診療報酬制度、老人医療保険制度の3本柱の見直しを行う。これは、ある意味でガイドラインよりも厳しい問題だ。
    科学技術は唯一予算を伸ばす分野で、これは経済構造改革のインセンティブとして位置づけている。財政再建はそれ自体が目的ではなく、活力ある経済社会を取り戻すための一便法にすぎない。

  2. 経済構造改革
    経済構造改革は規制緩和が中心となるが、なかでも情報通信、物流、医療福祉の分野はスケールの大きいものであり、これらに活力がでるよう5,500億円の調整枠を設けて、予算上の配慮をしていく。

  3. 金融システム改革
    金融システム改革は広い意味で経済構造改革の一環であり、一体で進めていく。外為法改正により、1,200兆円の国内金融資産の海外流出が懸念されるが、海外送金に関する資料情報制度を秋の臨時国会で措置する。

  4. 行政改革
    行革会議は、旧盆明けに省庁再編のプランを提出するが、これは議長である橋本総理がみずから出すもので、当然強い拘束力を持つ。一方、党では特殊法人改革を進めているが、政府系金融機関の整理・統合は財投問題の入口となってくる。その際、現在の金融不安が続けば、ますます郵貯への傾斜が起こるが、少なくとも、これをどうコントロールするか検討しておく必要がある。

  5. 税制改革
    金融ビッグバンを進めるにあたって、有取税や株式譲渡益課税等の税制が問題となる。なかでも、法人税は最大の問題である。昨年は見送りとなったが、先般の経団連との会合で、課税ベースの拡大について検討の余地があるとの感触を持った。税率は、37.5%を35%くらいにし、1兆円程度下げないと意味がない。財政再建中で厳しい状況だが、国際化のなかで、税制も当然国際水準にまで引き下げる努力をしなければならない。これは、政治の責任で対処していきたい。

議員立法推進シンポジウム/7月17日

先の通常国会では、議員立法の提出件数が大幅に増えたことが大きな特徴の1つとしてあげられるが、7月17日、政治のリーダーシップの発揮による議員立法の一層の促進を目的として、「議員立法推進シンポジウム」を開催した。以下はその概要である。

●パネリスト(順不同・敬称略)

・自民党(与党商法改正プロジェクトチーム座長)保岡興治
・ 〃 (与党NPOプロジェクトチーム座長)   熊代昭彦
・東京大学教授                佐々木毅
・衆議院法制局第一部第二課長         郡山芳一
・[司会]21世紀政策研究所理事長        田中直毅

●概要

■第140回通常国会は大変画期的
田中氏:
基本法である商法の改正が議員立法で行われたことは大変画期的であった。法制審議会を通していたら何年もかかったであろう。また、これに関して商法学者から批判がでたときも、マスコミが議員サイドの味方をしたのも戦後初めてのことではないか。

■政治のあり方と議員立法の意義
佐々木教授:
議員立法の積極的な活用は、以下の点で意義がある。
  1. 従来の法律を見直し、新しい法律をどんどん作っていくことが求められている状況において、法律をつくるキャパシティが全体として大きくなること
  2. 大きな意見の相違がある問題についても国民の代表者として、それを乗り越えてやること
  3. 行政の立法は、過去のしがらみに縛られて、新しい取り組みや前進が非常に難しくなっている点を打破できること
  4. 現在の改革の1つの焦点は行政機構そのものであり、その立法を行政に任せるのは自己矛盾であること
また、議員立法全体を考える上で、今まで立法にはほとんど関わってこなかった日本のリーガルプロフェッションとどのように連携していけるかということが大事だ。今後、議員立法を考えるにあたっては、作成から、実施、裁判という全過程を通じて、その透明性を高めていくことに尽力してもらいたい。

■議員立法への取り組みの現状と問題点
保岡議員:
今回のストックオプション制度導入と自社株消却の規制緩和の商法改正は、政府に頼めば法制審議会の答申がいつになるかわからないので、議員立法でやろうと決意した。
これからは、基本的な問題についても3年ぐらいで抜本的な改正の方向をつめるよう党でも努力し、審議会にもそれにあわせてもらうようお願いしていく。現在のように制度改正が急がれる時代にあっては、行政にあまり頼らず国民の創意工夫を政治のリーダーシップで活かしていくことが重要だ。

熊代議員:
NPO法案についても、18省庁が調整会議を作って検討していたが、なかなか調整がつかず、一向に進まないので、議員立法でやることにした。ドラスティックな案をまとめていくのは行政よりも議員立法に向いている。
議員立法で困難なのは、やはり議員間の調整だ。NPO法案の場合、自民党の17の部会のうち15の部会に関係するということで、15の部会の全てに行って説明をした。また、議会の運営の仕方として、結論を決めた上で議論するのではなく、法案がきたらすぐに議論をし、それからいろいろな折衝に入るべきだ。

郡山氏:
内閣法制局の役割は各省が作成した法案の審査であるのに対し、議院法制局は、議員が法律が必要だと判断した際に、議員が考えている政策の大筋を法律制度にのせるために、他の制度、政策との整合性・合理性などを検討し、法案化するのがその役割である。議院法制局の現状の問題点として、第1に予算と人員が足りないこと、第2に情報収集力が弱いことがあげられる。今後、大学や民間シンクタンクなどと連携していければ、より充実した立法の手伝いができると思う。

■議員立法の推進方策などについて
佐々木教授:
議員立法の議論の過程をいかに公開していくかということも重要だ。そのためには、国会の会期をもう少し長くして、議論の時間をもっと十分にとってもらうことも必要ではないか。

保岡議員:
議員の日常は非常に忙しい。今の議員には、情報収集、立法技術、他の法令との調整などということを考えると、議員立法が十分できるだけの体制が質量ともに用意されていない。本当に国民の創意工夫を活かすためには、議員が法案をつめきる体制が必要だ。

熊代議員:
現在の国会の会期150日は決して短いとは思わない。議員のやる気の問題であり、今の日数をもっと有効に使える手段を考えるべきだ。議論の公開方法としては、国会テレビの導入などを実現すべきだ。

郡山氏:
現在、法案が継続審議となった場合、法案は次の国会へつながるが、意思決定の過程は白紙にもどってしまい効率的ではない。選挙から選挙までを一会期とするのが合理的だ。

フロア発言(ヤマト運輸金谷相談役):
議員立法が出されるまでの過程、特に党内でコンセンサスを得る前の議論がききたい。

保岡議員:
今回の商法改正は時間の制約もあったが、これからはできるだけ議論をオープンにするよう努力する。議事録のインターネットによる公開なども考えていきたい。

熊代議員:
党内で意見がまとまるまでは、議論を外にだしてはいけないという決まりはない。
あらゆることを国会で議論する方向での改革をすべきだ。

佐々木教授:
国会の議論によって結論が変わるという緊張感も必要だ。

保岡議員:
議員立法のネタはいろいろころがっている。それらを国民からどんどん議員にぶつけてほしい。


企業人政治フォーラムのホームページへ